暗い未来と政治の転換

雑感

人口減少についての友寄さんの本を読んでいる。本のタイトルは『人口減少社会とマルクス経済学』(友寄英隆著)。ていねいに論じている本で人口減少を「今ここにある危機」だと表現している。かつらぎ町は、今年度、4月から12月までで子どもの誕生した人数がまだ50人に達していない。あと3か月で5人ずつ誕生しても65人を下回りそうだ。毎年子どもが生まれる人数が減り続けると学校は維持できない。生まれる子どもが年間50人規模になると4校で12人ずつの新入生ということになる。

人間の生き方を問いただしているのではない。子どもを産まない選択肢も、男女が異性を選ばない選択肢も多いにあっていい。しかし、異性を求め結婚をして子どもを産み育てるという選択肢もある。この選択肢の中で、子どもを産み育てられないという意識が、主に経済的な理由によって生じている。日本社会の子育て環境の過酷さが、少子化に拍車をかけているのは間違いない。

雇用の現場では人不足が叫ばれている平成21年1年間の入職者数は、684万人(年初の常用労働者数に対する割合15.5%)、離職者数は、724万人(同16.4%)となっている。明らかに職を離れる人と職に就く人の差が開きつつある。その差は40万人。この現象の中でも増えているのがパートタイム労働者だ。年間6万人パートタイムが増えている。格差と貧困が広がり、パートタイム労働者は増えるが、正規職員を中心に毎年40万人以上の雇用減が続き、少子化によってその差がさらに開いていくと、私たちの目の前に、どういう現象が現れてくるだろうか。

劣悪な雇用環境が一向に改善されず、働く人間の絶対数が減り続ける中で、外国人労働者が雇用の隔たりをほんとに埋める形で事態が改善されるのだろうか。日本は、移民受け入れに極めて消極的な国であり、滞在型の就労形態のなか、滞在しつつ働くという資格を失った外国人は収容して、本国に送り返すという措置をとっている。この仕組みの下で外国人労働者に自由な働き方なんてあるのだろうか。

最近、人口減少の関係を読むにつれ、明るい展望が見えなくなっている。このまま行けば日本は、現在の生活水準さえ確保できず、負のスパイラルの中でらせん的に落ち込んでいく。しかし、まずは、この負の現実を徹底的に把握したいと思っている。具体的な事実の具体的な把握なしに、次の展望は見いだせない。

人口減少による負のスパイラルを生み出した政治の責任は大きい。非正規雇用を大量に増やし、正規職員の絶対数を縮小させ、賃金を引き下げてきた日本をつくった政治の責任の大半は自民党にある。それなのに打ち出されてくる政策は、社会保障分野では国民への負担増と給付減であり、労働や雇用の分野での賃金引き上げには舵を切らないというものだ。しかも、あろうことか、縮小する経済の中で超軍拡へ舵を切って、中国と戦争してもいいよという選択肢を提示している。中国と戦争すれば日本は確実に負ける。これは間違いないだろう。国民の命を平気で失わせる選択肢しか提示できない自民党政治は、もう終わっている。

大事な課題が目白押しになっているなか、自民党が金権腐敗の問題で沈みかけている。しかし、「大事な問題での議論をせずに金権腐敗かよ」ということではない。国民に徹底的に痛みを押しつけながら、自分たちは汚い金を手に入れて、権力をほしいままにしてきた、そういう政治が破綻しようとしているのだ。安倍政権の長期化の中で、一番金にまみれた派閥が安倍さんたちの派閥だったところに、度しがたい病気がある。

国民の目の前で醜さをさらけ出している自民党政治は、「失われた30年」という政治・経済の責任を取って、崩壊した方がいい。国民とはかけ離れたお金まみれの中で沈没した方が、国民の生活を立て直す契機になる。
今求められている政治の転換は、自民党政治の延長線上にはない。自民党はもう、新しい船には乗れない。
賃金の抜本的引き上げと労働時間の短縮、非正規雇用の根本的改善、社会保障の立て直し。これらの課題をにないうるのは、自民党に代わる新しい政治勢力だ。野党がこの役割を担わなければならない。その中に当然のこととして、日本共産党が必要だ。政治の転換は、新しい政権の担い手によって生まれる。新しい船には新しい水夫が必要だ。

10年が1日で過ぎ去るような歴史的な転換期。大きな変化は国民の幸福の条件を広げるために存在する。


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雑感

Posted by 東芝 弘明