本から得られるヒント
本を読むことによって、生き方のヒントがにじみ出てくることがある。オープンダイアローグの本を読んでいると、意見がまとまらないことの「良さ」を感じ始めた。多様性の共有とでもいうのだろうか。互いの違いを確認しながら、一致しない状況を抱え込んで考えることの意味の深さ。
ぼくは長期総合計画調査検討特別委員会の委員長報告に、次のような文章を書いた。これは、議員間協議で実際に出されたものだった。
「議員が求めた提言の中には、意見が反映していないものも残されました。それらの中には、町当局との考え方の違いも横たわっています。同時に議員の目から見て、不十分だと思える点もあり、それが「基本的には大筋案はこれで結構です」というような意見となったということです。」
公約数的な合意で全員一致。これが実現した。一致する点と一致しない点を確認しながら、前に進む。
こういう発想をオープンダイアローグの本は与えてくれた。AでもなければBでもない状態をそのままにする。これが物事を深く考えさせてくれる契機になる。
若い頃は、正しいことを証明すれば、みんなそれに従うというように考えていた。これは、かなり了見が狭い。ぼくの中で論争によって勝つことの意味が薄らいだのはいつのことだったろうか。
そこからさらに進んで、相手の考えを積極的に受け入れるようになったのは、会議の研究を始めてからだろう。
不一致点を長く保持することができるようになる。これはかなり高度な変化だと思われる。
今はそのことを頭の中で分かっている状態。不一致点の共有。これができるようになるためには、乗りこえなければならない山がありそうだ。同時に面白いのは、不一致点の共有が一致点を生み出すことだ。これは、弁証法的な転換でもある。対立物は相互に転化する。不一致点の確認が一致点を生み出す。面白い。
トピックを拝読した後、色々とググりました。全くの見当違いかもしれませんが、それを書いてみます。ウィキペディアです。パーソンズ、ルーマン、社会システム理論。パーソンズの社会システムは、大は世界システムから、小は個人に至るまでの入れ子構造から成り立つ。対して、ルーマンは多次元的、相互補完的、相互浸透的なシステムを考えており、システム間に階層性がない。パーソンズはウェーバーの方法論的個人主義(社会構造やその変化を、個人の意思決定の集積として説明し、理解する考え方)を理論構成の根幹に据えているが、ルーマンは後期、個人を出発点に据える理論構成を拒否している。ルーマンは社会システム理論に、オートポイエーシス概念を導入。それは、生命の有機構成とは何か、という本質的問いを見定めるものとして提唱された。包摂、排除という用語からググって、こういうところに行き着きました。トピックとは無関係でしょうか。どうも日曜日暇なもので、こんなこと等を考えていました。
オープンダイアローグは、相手が話しきるまで聴く。その次にリフティングと言って、その人の前でその人の話を3人ぐらいの集団で行う。リフティングは、目の前にその人がいる中、車座になって主観的な感想を述べる(できれば共感を示す)ことを行うと、相手が心を開き、信頼を寄せるというものです。違いを踏まえて共感を示すのがいいらしいです。
人間は他人の評価がどうしても気になります。目の前で自分話したことを考えてくれて、○○さんのような状態はしんどいと思いましたとか、私にも同じ経験があるとか、ここが気になりましたとかいう話をされると、自分のことが客観視できるようです。噂話を本人の前で行うと、ひどいことは言わないですよね。相手にどこかで気を遣いながら、本当のことを言うことがいいみたいです。これは認知症の人や統合失調症で妄想にとりつかれている人、引きこもっている人にもかなり有効なようです。
もちろん、一回だけで深い対話にはなりませんし、途中は、こんなやり取りをしていても、うまくいくだろうかという膠着的な状態が続くケースも多いといいます。対話の中で結論を出すようなことはしないといいます。
専門家は、今までは、本人がいないところで診察や診断の方針を決めて、患者に向き合ってきました。オープンダイアローグは、こういうやり方は辞めようということです。打ち合わせもしないということです。本人のいないところで話はしないのが原則だと言います。こういう話を成り立たせるためには、話をしている人々の対等性が大切になると言います。フラットな人間関係が必要なので、専門家が一段高いところから診断することを徹底的に排除するのがいいと言います。
ルーマンの考え方と少し親和性がありそうですね。1対1のカウンセリングは、どうしても相手がカウンセラーに依存しはじめる傾向がでてくるといいます。信頼するが故に、カウンセラーに寄りかかるようです。こうなると主体的に、自分の課題を克服するようにはならないみたいです。集団で行われるオープンダイアローグは、様々な視点をもった人が関わるので、異なる視点による見方が出てきて、共依存が起こりません。これがいいのだそうです。