現代史の学び直し

雑感

日本の近代と現代の歴史を多くの人はどのようにして学んでいるのだろう。ぼくが近代史にきちんと触れたのは、高校3年生の日本史の選択授業だった。このときは少なくとも戦争が終わるまでは習った。しかし、教科書による学習は、歴史的な物事の意味を深く知るというような感じではなく、教科書を理解して覚えるという感じのものだった。2.26事件と5.15事件の違いとか、満州事変と盧溝橋事件の違いを区別して理解しているとかいうものだった。それぞれの歴史的背景よりもカッコに入れる場合、2.26事件は1936年で大蔵大臣の高橋是清が殺害されたとか、5.15事件は1932年で犬養毅首相が殺害されたとかを入れ間違わないで書けるかどうか、という類いのものだった。
学校での学びは、極めて表面的なものだったといわなければならない。

学校における歴史の学び方は、今もあまり変わっていないかも知れない。
こういう断片的な暗記物の歴史が、繋がって理解され、立体的に把握されるようになるためには、いろいろな本を読んで話を立体的に捉え直すことが必要だった。日本人の中で近代史や現代史をこういう風にして、「学び直した」人はどれだけいるだろうか。
きちんとした歴史認識が、国民の中に培われていたのであれば、韓国に対する言われなき怒り、韓国敵視はないだろうと思われる。中国に対して日本がしてきたことを知っていれば、「何度も謝っているのにもういい加減いいだろう」という言葉は出てこないだろう。

ところで歴史小説の好きな人は、歴史を立体的に学んでいる人々だろうけれど、歴史的な資料で描けない部分を作家の空想で補って、如何にも歴史上の人物が、その場面でそう語ったかのように理解している。このような学び方では、どうしてもフィクションが入り込んでしまう。歴史小説や小説の面白さは、記録では書けない部分を補って書くところにある。それは、歴史の動きを理解し、生きた人間の営みとして理解する上で極めて役に立つものだろう。
人間が呼吸し生きていた時代の感覚を生々しく捉えるという点で小説の描き方は、極めて有効だと思われる。当時の歴史的な状況を想像力豊かに理解する上で小説の力を借りるのは、必要不可欠だと言ってもいいのではないだろうか。
しかし、歴史を学ぶという点で歴史小説の怖さはここにある。歴史小説の良さは、同時に歴史を学ぶ上での障害にさえなる。この相反する矛盾が面白い。

歴史的な文献を読む。当時の経済についての分析を読む。歴史学者の書いたものを読む中で、史実でないものを訂正しながら読み進めていけば、次第に歴史の姿は浮き彫りになっていく。小説で得た想像力の力も借りて、史実に基づく文献を読み解いていけば、歴史を理解する力になる。学ぶ上では柔軟性が問われるということだろう。

ぼくがそういう学びをできるようになったのは、大学を卒業して以降だったのかも知れない。幸いにして、日本共産党に入ったので、ぼくにとっては、日本共産党の綱領を学ぶことと歴史を学ぶことは表裏一体のものだった。
こんなことを書いたら「?」と感じる人もいるだろう。政党は都合のいいように自分の歴史を描いて、政党の目指す方向を記述した「綱領」もそのような観点で作られるのではないかと。
しかし、日本共産党は、真理の探究に忠実であり、働く人々を解放するためには、真理を徹底的に明らかにしながら、それで政策や方針を打ち立てるという態度を取ってきた。謝りにもメスを入れて教訓を明らかにするという点で誠実だった。日本共産党に入ったので戦前の日本と戦後の日本の大きな変化を歴史の中でとらえ直すという点では、恵まれた環境にいたともいえる。
日本共産党の綱領は、戦前から始まる。それは日本共産党が1922年に誕生した政党だったというだけには留まらない。日本の現代を読み解くためには、明治や大正、昭和の時代がどういうものだったのかということを踏まえる必要があるし、同時に戦前の日本の行った政治や戦争が、まだ日本では決着が着いていない生々しい問題となって立ちはだかっているからだ。

明治時代の変革が封建時代から資本主義への大転換だった。明治初期に日本の資本主義がどういう形で形成され、日本の資本主義が、つまり明治の絶対主義的天皇制に基づく大日本帝国が、どうして朝鮮半島を足場に侵略戦争を展開していったのかというのは歴史の大問題だと思う。このことを学び直すことの意義はものすごく大きい。

学んできたことによって得たことは大きかったが、全ての疑問が解けた訳ではない。学ぶ中でさらに深まった謎もたくさんある。どうして明治政府は、執拗に朝鮮半島に対して執念を燃やし日清戦争と日露戦争に至る戦争を通じて韓国併合を成し遂げていったのか。この野望の動機は何処にあったのか。という根本問題さえまだまだ把握が弱い。

学べば問題意識が生じる。そこからさらに新しい探究が始まる。

雑感

Posted by 東芝 弘明