治安維持法を知っていますか?

雑感

治安維持法という法律を知っていますか。
この法律は、国民を徹底的に弾圧するものでした。天皇主権だった戦前、「国民主権を実現しよう」という主張や運動、「戦争に反対しよう」という主張や運動は、すべて「危険思想」と呼ばれ、こういう主義主張を掲げると、「国賊・非国民」というレッテルを貼られ、逮捕、拷問、投獄されました。
この法律によって拷問を受け、殴り殺された人は、判明しているだけで92人います。獄中で亡くなった人は300人います(1000人という説もあります)。治安維持法によって送検された人は、75,000人、逮捕された人は10万人を超えています。
和歌山県で逮捕された人は400人を超えています。名前が判明している人は300人程度あります。

治安維持法には、改正の歴史があります。1928年のときの改正によってこの法律は、「国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ五年以上ノ懲役若ハ禁錮」となり、この法律の最高刑は死刑となりました。
国民主権を主張して組織を作った者または役員は死刑になるということです。治安維持法は、社会主義や共産主義を弾圧する法律という側面をもっていましたが、こういう主義主張に対する弾圧よりも、国民主権や戦争反対を唱えることの罪の方が重かったのです。
社会主義を掲げるだけでは、逮捕、投獄とはなりませんでした。カナメは国体の変革にありました。国体とは、天皇を現人神とする天皇主権の国家体制をいいます。主権在民や侵略戦争反対は、この国体を正面から否定する許しがたい犯罪でした。

日本共産党は、侵略戦争反対と主権在民を掲げたので徹底的な弾圧を受けました。
「共産党は昔、イメージが悪かった」年配の方々はそういわれる人が多いですね。イメージが悪かったのは、日本共産党が「国賊・非国民」というレッテルを貼られたからです。主権在民と侵略戦争反対の主張は命がけでした。日本国憲法の原則となったこの考え方を主張したがために、「国賊・非国民」と呼ばれたのです。
戦前の状況について、自民党はかつて、党内研修用の教科書にこう書いていました。
「社会党を含めて他の政党が何らかの形で戦争に協力したのに対し、ひとり共産党は終始一貫戦争に反対してきた。従って共産党は他党にない道徳的権威を持っていた」(『日本の政党』自由民主党研修叢書、一九七九年)

治安維持法によって弾圧された人々の中には、日本共産党以外の人も数多くいました。「日本は戦争に負ける」というと取り調べを受ける世の中になった中、太平洋戦争に突入するときには、予防拘禁制度と言って、何にもしていない人を「危険思想の持ち主」だとして片っ端から逮捕しました。戦争に反対しそうな人を徹底的に弾圧し、反対意見を暴力で抑え込んで、戦争に突入していったということです。ぼくの知っている人は、進歩的だといわれていた人の本を持っていただけで逮捕され、1週間取り調べを受けています。短歌に書いた「赤い花」にお前の思想が表れているといって逮捕された人もいます。

日本共産党中央委員会は、徹底的な弾圧の中で解体し、活動できなくなりました。しかし、多くの共産党員が獄中でたたかいを続けました。
表現の自由や言論の自由、学問の自由、基本的人権、恒久平和が確立したのは戦後です。これらの考え方は、日本国憲法によって実現しました。日本国憲法は、綺麗に明治憲法をひっくり返しました。それはオセロを黒から白にひっくり返すように鮮やかなものでした。新しい憲法によって歴史のページも黒から白へとめくられました。明治憲法の徹底的な否定と治安維持法体制の徹底的な否定によって成り立っているのが日本国憲法です。明治憲法は、天皇主権の下で国民を支配するために制定された憲法でしたが、現行の日本国憲法は、国民の主権を宣言した現代的な憲法であり、国民による国家権力の管理と抑制を目的としています。

治安維持法による犠牲者は、社会発展の礎を築こうとした人々であり、日本国憲法の精神を実現しようとするものでした。これらの人々は、「国賊・非国民」などではなく「歴史を切り拓いた人々」として名誉回復が必要です。日本の民主主義は、まだまだ弱さをもっています。その弱さの根底には、戦争に反対した人々の名誉を回復していないという問題が横たわっています。

日本共産党や社民党以外の政党は、憲法改正を声高に叫ぶようになり、自民党は憲法改正草案を作成するに至りました。
自民党の憲法改正草案は、天皇を元首化し、国政に一定の権能を有するように変えるとともに、自衛隊を国防軍に改め、自衛のためであれば戦争に参加できるように国のかたちを変えようとしています。

戦争をおこなう国家は、国民の自由と民主主義に重大な制限を加えます。自民党の憲法改正案の第21条を見てみましょう。驚くべきことが書かれています。
「第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」
「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」「それを目的として結社をすることは、認められない」──「公益」とは何か、「公の秩序」とは何かが問題です。
例えば、TPP反対運動や消費税増税反対運動、反原発運動などが、「公益」及び「公の秩序」を害する活動や結社にあたるという判断がおこなわれると、活動や結社を禁止できることになります。この憲法規定を徹底するための法律を作れば、国民を逮捕・投獄できるようにもなるでしょう。これは言論を弾圧するための規定ではないでしょうか。
自由民主党は、今までとは性格を異にするぐらい変貌しました。赤頭巾ちゃんを待っているオオカミみたいです。

治安維持法のことを知ってほしいと思います。この法律をめぐる歴史を知ることは、平和について考えることに直結します。民主主義や基本的人権とは何かについても多くのことを学べます。60半ばの人でも戦争を知らない世代になっています。戦争を知らない世代だからこそ、近・現代史をしっかり学び、歴史に対する深い認識を培うことが大事です。深く歴史を学んだ人々の手によって、新しい歴史が拓かれます。
戦争を体験していないから分からないということではありません。学んでいないから分からないだけです。私たち人類は、学ぶことを通じて、肉眼では見えない世界に分け入り、体験していないことに肉薄し新しい事実を豊富に発見して豊かにしてきました。父や母の親の世代、もしくはその親の世代の歴史を学ぶことは、困難なことではありません。近・現代史を学べば、その具体的な歴史から、今を生きる勇気と確信が与えられると思います。

本日は、橋本市で、伊都橋本治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の総会がありました。上記に書いたような内容の学習会もおこなわれました。こういうことを深く学ぶことが、未来に繋がると信じています。

雑感主権在民,治安維持法

Posted by 東芝 弘明