H議員が亡くなった
H議員が亡くなった。昨年N議員が亡くなったので2年連続で現職議員が亡くなったことになる。
午後6時過ぎにお通夜の会場に着いた。玄関を入ると受付用の記帳テーブルがあった。カードに住所氏名を記入して受付に持っていくとF議員が受付をおこなっていた。
お通夜の始まる1時間前。まだ席に座っている人はまばらだった。6時半になるとかなりの人が着席していた。賢い人々は、早い目に会場に到着する。H議員のお通夜ということになると、多くの人が殺到するので早い目に会場に着かないと車を停める場所さえなくなってしまう。このことを世間の人はよく知っている。
普通の会議の場合では、15分前になると半数以上の人が席に着いている。時間になると会議が始まる。
今日のお通夜も定刻に始まった。
祭壇の正面に飾られた写真は、穏やかに笑った顔だった。椅子からロビーを見ると人が溢れていた。
「1回焼香でお願いします」
アナウンスが繰り返されていた。参列者の多い通夜では、焼香は1回になる。
H議員は、ぼくの隣に座っている。よく通る甲高い声の持ち主だった。話しかけるといろいろなことを知っているので、長い話が返ってくる。
焼香をすませて、立礼する人々の前で何度か頭を下げて、人が流れて出ていくのに合わせて建物の外に出た。
参列客が駐車場に一列になって伸びていた。
車に乗ると、次々に入ってくるタクシーがあったので少しまたされた。ガードマンは下に降りるのを認めず、左に曲がるように指示していた。
斎場は、ふもとから坂道を登ってきたところにある。里山の中腹を切り拓いて造られている。こちらの道は、「坂道を登って斎場の北上にある広域農道を通ってください」という意味だった。「下から登ってくる車がまだまだあるので、下に降りることはできないよ」ということだった。
車を走らせていくと、道の右側には参列客の車が一列に並んでいた。車の列は延々と続き、広域農道に出る50メートルぐらい手前まで途切れることがなかった。最後尾から歩いて行くと会場まで500メートルぐらいの距離がある。
「H議員は付き合いが広かったからなあ」
同僚の議員は会場でこう語っていた。
ご冥福をお祈りしたい。