自民党の憲法改正草案は、まさに対米従属の草案

雑感

前衛5月号の「アメリカが求める九条改憲の深層」という末浪靖司氏の論文が興味深かったです。
この論文は、公表されたアメリカの機密文書を活用して書かれたもので、日本国憲法9条の改正の企ては、アメリカの意向によって実施されてきたことが鮮明になっています。
安倍総理は、押しつけ憲法だといい、明治憲法のような欽定憲法でもない憲法、つまり国民自らの手で憲法をつくるという意味で「憲法を国民の手で取り戻そう」と呼びかけています。
しかし、憲法9条の改正が、アメリカの国家戦略に沿ったものであり、日本国民の意思に反するものであるならば、安倍総理は、アメリカによる押しつけ憲法を新たに作ろうとしているということになります。
公表された機密文書は、アメリカが憲法改正を国家戦略として求め、サンフランシスコ講和条約と日米安保条約を締結した経緯が浮き彫りにしています。

1950年の朝鮮戦争勃発時、GHQの指令に基づくポツダム政令によって、総理府の機関である警察予備隊が組織されました。これが陸上自衛隊の始まりです。
日本の自衛隊は、アメリカの冷戦政策という戦略のなかで、アメリカの意向によって作られたものであり、日米安保条約によるアメリカ軍の駐留と抱き合わせで作られた対米従属の組織だったということです。この基本的な性格は、今も変わっていません。

GHQの総司令官であったマッカーサーが、憲法9条に対してどう考えていたのかも、機密文書の公開で明らかになりました。
少し引用します。
「彼〔マッカーサー〕は、日本政府に対する(占領軍の)統制の行使は、アメリカで考えているよりもはるかに弱いものであったとのべた。憲法の諸規定、例えば、戦力とその使用を永久に放棄することなどは、日本人のイニシアチブの成果であって、彼が日本人に強制したのではまったくない。戦争の成り行きが日本人の心理に深刻な影響を与えたのであり、そして日本人が戦争を放棄したのは、SCAP(連合軍最高司令官)の希望に迎合したことの表れではなく、途方もない国民的体験への反作用の表れである、と彼は実際に思っていた」(1948年3月5日 会談覚書、機密、参加者:マッカーサー総司令官、ジョージ・ケナン)。

この会談は、アメリカ政府の意向をうけたジョージ・ケナン(国務省政策企画室長)が1948年2月〜3月に日本に来て、マッカーサーと会談したものです。日本の再軍備を実現する方向で、マッカーサーに打診しても、マッカーサーは、日本国民の意思があるのでむつかしいという態度を取ったということです。
マッカーサーのこの認識は、当時の日本国民の意識を踏まえたものでしょう。9条は日本国民が作ったものだったという証言として読めると思います。
広島・長崎に原子爆弾が投下され、大都市はほとんど焼け野原となり、戦争の傷跡は、日本国民に深く刻まれていました。日本国民の意思が、憲法9条を生み出したというマッカーサーの証言は重いのではないでしょうか。

その後アメリカは、サンフランシスコ講和条約の締結と日米安保条約の締結へと進んでいきます。戦争を終結するためにどうしても講和条約を結ばなければならない、そうなると米軍は日本から撤退しなければならなくなる、アメリカはこの事態をどうしても避ける必要があった、その結果、編みだされたのが講和条約と同時に日米安保条約を締結することでした。日本の再軍備もこの過程の中で不可分一体のものとして推進されたのだということです。

ところで、9条の1項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と書いています。国民が素直な気持ちでこの規定を読めば、これで戦争はしないというように読めます。しかし、このような規定を憲法にもっている国は、日本も含めイタリア(11)、ハンガリー(6)、アゼル バイジャン(9)、エクアドル(4)(括弧の数字は憲法の条数を示す)の5国あります。
これらの国は、軍隊をもち、軍事同盟にも加わっているところもあります。このような条文を持っていても自衛のための戦争は禁止されないというのが、憲法論の共通した解釈です。
自民党の憲法改正草案は、9条の第1項の条文をほぼ踏襲し、2項でわざわざ「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と書いています。さらに九条の二という条文を新たに作っています。
「(国防軍)
第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない」

軍事裁判所を設置することも驚きですが、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる」としているのは、極めて危険です。
軍事同盟を結んで共同作戦を展開できる規定というのは、「自衛」という名の戦争であれば、外国に出て戦争ができるということを意味します。

今日の「赤旗」日刊紙に面白い指摘がありました。
多くの国は、憲法に「開戦規定」をもっているのに、自民党憲法改正草案は、そういう規定を持っていないという指摘でした。この指摘が、面白いのは、自衛のための戦争を行える国でも、「開戦規定」があるのに、自民党の憲法改正草案には、「開戦規定」がないという指摘です。
つまり、自民党は、日本国が自ら開戦宣言をすることは想定しておらず、一貫してアメリカが引き起こす戦争に同盟国として参加することを考えているということです。「開戦規定」は不要だということです。開戦はアメリカがしてくれますから。
自主憲法といいながら、アメリカへの対米従属を最優先して、憲法も対米従属憲法に作りかえようとしている。ここに自民党の憲法改正草案の本質の一つがあるということです。

「さっぱり分からない」
「実に面白い」

月9の新しいドラマ、「ガリレオ」の湯浅学(福山雅治)の決め台詞風に言えばこうなるでしょう。ミステリアスな草案(?)が、自民党の憲法改正草案」なのだと思います。TPPも対米従属、憲法草案も対米従属、ここに自民党の真骨頂がありそうです。

雑感

Posted by 東芝 弘明