土曜の朝
マーガリンを塗ろうとするたびに思い出すことがある。
「マーガリンって、プラスチックを食べているようなものですよね」
冬の寒い日に、岩出市の岡田という地域を訪問をしたときに、花で玄関を飾っている家の前で聞いた言葉だ。話の主は、大宮診療所に通っている患者の女性だった。
紺色の冷蔵庫の棚にはいつもマーガリンが入っている。ふたを開けると、ほんの少し残っていた。でも、マーガリンは、これで終わりではない。大きい銀色の冷蔵庫には、ストックされたマーガリンが並んでいる。
食パンを焼いて、マーガリンを塗って、その上にサンクゼールのブルーベリージャムを塗った。
マーガリンを手にするたびに、プラスチックという言葉が頭によみがえってくる。あの時の話の衝撃度は、それほど大きかった。
「バターに替えよう。マーガリンって体に悪いんやって」
この言葉を発して、説明に入ろうとしたときだった。
「お父さんは、いつもそんなことばっかり言って、梅肉エキスのときも続かんかったやないの」
妻の反撃はそれで終わった。ぼくは反論しなかった。
冷蔵庫に3つは入っているマーガリン。ときどき、ネットを見るとマーガリンは体に悪いと書いている。気になるので読んでいるが、わが家のマーガリンのストックは減らない。
妻がコーヒーを飲もうとしていたので、ぼくもドリップ式のコーヒーを入れることにした。フィルムをさいてパッケージを取り出し、ミシン目の入った封を開ける。カップの上にパッケージをまたがらせて、お湯が沸くのを待つ。待つのは1分程度。鍋のお湯を口を開けたドリップの中にゆっくりと入れる。コーヒーの匂いが立ち上ってくる。いい匂いだ。ひかれたコーヒー豆は少し泡立ちながら、コーヒーをカップの中に濾過していく。スーパーでコーヒー豆を買ってきて、ドリップ方式で入れるものよりも、一人分ずつ分かれている簡易ドリップ方式の方が美味しい。
コーヒー豆は酸化しやすい。買い置きの豆は、どうしても缶の中で酸化する。1杯19円とかいう一人用の簡易ドリップの方が、いつまでも新鮮なコーヒーが飲める。
1日に2杯程度、自宅で飲むことがある。
カフェインによって眠れなくなる人がいるようだが、ぼくの場合は、夜11時に飲んでも睡眠には何の関係もない。飲みながら居眠りするようなこともある。
コーヒーを片手に柴崎友香さんの『春の庭』を読み始めた。2014年8月10日に芥川賞を受賞した作品だ。赤旗の文化欄に本人へのインタビューが載っていたので、それを読みながらAmazonで買った本だった。最近は、書評を読みながら注文するようなこともある。iPhoneがあれば、いつでも本は簡単に注文できる。
細かい描写は、神経を集中させないと映像を結ばない。テレビを付けて読んでいると、字面だけを追いかけて映像が浮かばないようなことがあった。そういうか所は2回読み返した。でも意識を集中するとリアルな世界が頭の中に立ち現れてくる。
意識が途切れたのは、
「中山美穂に新しい恋人」というフレーズだった。テレビのバラエティー番組の言葉が耳に入ってきて、テレビの画面を見てしまった。
「お父さん、中山美穂という言葉に反応した」
隣に座っていた妻が笑った。
部屋の中は暗い。人間の目もカメラのレンズと同じように、外の天気が明るく鮮明になってくると、部屋の中が暗く見える。一年に何度あるだろうか、と思うような空気感の中で明るい日差しが、観葉植物の緑を半透明に見せている。
土曜日の朝は、こういう感じで始まった。












ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません