谷底からマンションが見える
阪本ひさよさんの事務所は、橋本市の林間田園都市駅の下にある。林間田園都市駅のすぐ南側は、かなり深い谷になっており、その谷底に阪本さんの事務所がある。旧の371号と林間田園都市駅に挿まれるようにして谷は存在している。
選挙の集計を一人で見直して、あと3票集計から漏れていることを発見したので、集計表を作り直して、訂正した日報をFAXで送った。
電気を落とし、カギをかけて車に荷物を載せ、空を見上げると、林間田園都市駅にくっつくようにしてそびえ立っているマンションが見えた。午後10時55分だった。この谷底からはい上がるようにして車で坂道を登っていくと、林間田園都市駅のターミナルに出ることができる。新しいバイパスとなった新371号の信号まで3分。この3分間で別世界にたどり着く。
橋本市という街は、谷間の集落が細く長く伸びている横の山を削って、大きな団地が作られている。旧の在所は、日本建築と日本の屋根瓦でできた家が、美しい自然の景色の中に調和して点在している。たとえば、こののどかな田園風景の町並みの道路を右折して少し行くと巨大な住宅群が見えてきたりする。旧の在所は、谷間の狭い面積の中に細長く点在しているのに、その頭の上の山には、新しい街ができている。過疎と新興団地が何重にも焼いたパイのように折り重なって存在している。都会と田舎が背中合わせに生きている。それらの存在は、混じることのない絵具のようだ。
新興団地と旧の在所は、どちらも買い物のできるお店が極端に少ない。全く違った街に見えるのに共通点はある。橋本市は、綺麗な街なのに、人間の生活を営むという点で、何かが決定的に欠けた街なのかも知れない。
谷底から見えるそびえ立ったマンションは、月の光に照らされていた。半円から少し欠けたような三日月の冷たい月の光が、壁のようにそびえ立つマンションの高さを強調していた。









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