消費税増税中止の請願が不採択になった

かつらぎ町議会

委員会で『10月に消費税増税10%の中止を求める意見書提出を求める請願書』と『日米地位協定の改正を求める意見書提出を求める陳情書』について、2つともに不採択となった。結果は賛成2、反対3だった。
国民の立場に寄り添うという視点が、議員の中に培われるのには、なかなか道が遠い。
意見を聞きながらマルクスの言葉を思い出していた。

「支配階級の思想は、いつの時代にも支配的思想である。すなわち社会の支配的な物質力である階級は、同時にその社会の支配的な精神力でもある。……支配的な思想は、支配的な物質的諸関係の観念的表現、すなわち、諸思想として把握された、支配的な物質的諸関係以外のなにものでもない。」(マルクス・エンゲルス『ドイツ・イデオロギー』)

消費税の増税はどうして必要なのか。多くの人が消費税の増税はやむを得ないと考えているだろう。値上げは嫌だけどやむを得ないのではないか。社会保障に使われるというのだから仕方がないのではないか。
保守系の議員の方々が、こういう考え方をするのはムリもないことだ。それは、政府から聞こえてくる話や出てくる情報が、一貫してこういうことになっているからだし、マスメディアによる情報も基本的には同じだからだ。しかし、いったいどこに真実があるのかという目で物事を見抜く努力をすれば、別の視点が見えてくる。残念ながらこういう視点で物事を見る目をもつ人はまだまだ少ない。

消費税は社会保障の財源として充てられることになった。これは間違いない。しかし、現実の社会保障は、制度がどんどん切り捨てられ、負担が次第に増えている。社会保障の一つである年金も年々削減されている。なぜこのようなことになっているのか。悪化する社会保障制度と消費税の関係はいったいどうなっているのか。政府は、社会保障の財源に消費税が充てられたら社会保障が充実するかのように宣伝しているのではないか。この矛盾をどう解き明かせばいいのか。このことに疑問をもち問題点を追及すれば事実が見えてくる。

今日委員会に出てきた政府資料「消費税の使途に関する資料」(財務省)にその答えがあった。この資料は簡単にアクセスできる。「消費税 社会保障財源」というワードで検索すれば、最初にヒットする。この資料の冒頭には、消費税法が引用されていた。

○ 消費税収の使途の明確化
(消費税法第1 条第2 項)
消費税の収入については、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。

「充てるものとする」──ほらみろ、よかったやんか。そう思うのは早計だ。この「充てるものとする」というのが曲者で、「施策に要する経費に加算される」とか「上乗せされる」とか書いていない。「加算される」と書いてあれば、消費税を社会保障に充てると財源が増える。そうなれば今まで以上に社会保障は充実する(今回は消費税を社会保障財源に充てることの是非は問わないでおく。この問題の是非は別の角度からの検討を必要とする)。
「消費税の使途に関する資料」には、親切にも社会保障に消費税を充てた場合、社会保障財源に不足が生まれ、この不足をスキマだと表現するグラフがあった。

国のいうスキマは非常に大きい。消費税分13.6兆円、スキマ15.5兆円。つまりこのグラフは、消費税だけで社会保障財源は全く賄えないことを鮮明にするものだった。消費税の社会保障財源化とは何か。答えは簡単だ。今までの社会保障財源をどこかにもっていき、その代わりに消費税を社会保障財源にするという話だ。しかも、この考え方を徹底すると恐ろしいことが起こる。社会保障財源を消費税で完璧に賄うためには、消費税を20%ほどに引き上げる必要がある(ここまで引き上げたら非課税業者はゼロになるだろう。税収としての消費税取り立てが徹底されるので、20%にすれば、スキマは埋まる)。ただし、これは理論上の話。こんなことをしたら日本経済は完全に破壊されて、法人税収も所得税収も壊滅的打撃を受けて国税収入そのものが減って、実際のスキマは埋まらない可能性が濃厚だ。
国民の多くの誤解は、「社会保障財源に消費税収が活用されたら社会保障財源が増えて、社会保障がよくなる」と思っているところにある。こういう理解が生まれてくるのは、消費税を社会保障に充てることによって、保育料無料化が実現するかのように宣伝しているからだろう。

ぼくは、「消費税の使途に関する資料」を見て、安倍内閣の劣化を見る思いがした。子どもだましのような論の組み立てだ。以前の政府は、もう少し説得力のあるごまかし方をしていたのではないだろうか。今回の資料は、政府が消費税の社会保障財源化の誤りを自分で証明しているものだった。ぼくは、委員会にこの分かりやすい資料が出たので、「良い資料が出された」と発言して、「このスキマにすべてのことが表されている」といい、「消費税の社会保障財源化というのは今までの財源との総入れ替え方式のようなもの。100%消費税収を社会保障財源に充てても社会保障はよくならない」と説明した。

これに対して、議員の1人は「東芝議員の言うとおり、実際にそうなっていると思う」という主旨の発言をした。しかし、社会保障の財源として消費税を増税するのはやむを得ないという態度は変わらなかった。

かつらぎ町の議会議員の意見書を巡る議論には一つの傾向が現れ始めている。国民への負担増はやむを得ない。国の財政が悪化していて、財源がないので負担増も致し方ない。こういう考え方で後期高齢者の医療費の負担増もやむを得ないという見方が出てきている。今回の議論もこういう話とリンクしていた。

もう一人の議員は、国の財源不足の中で消費税増税は致し方ないという考え方を示した。これについては、財務省の資料をぼくの方から提出した。

この資料は、毎年財務省が更新している資料だ。経年的に所得税、法人税、消費税の税収がどのように推移してきたかを示している。法人税収と消費税收が逆転した最大の理由は、消費税を増税しながら法人税を減税して、直接税と間接税の比率を変えようとしたからだ。今回の消費税10%が実行されたら所得税を消費税が上回る可能性がある。所得税が減少してきた主な理由は、賃金のカットにあるが、同時に消費税増税による所得税の減少という問題を無視できない。消費税を増税すれば所得税収が減るのは、国民の購買力が低下することに原因がある。経済は循環によって成り立っているので、国民の購買力を痛めつける施策を講じれば、商品を販売する側の商売人や労働者などの所得が減り、結局所得税收が下がってしまう。

アベノミクスによって、あれだけ金融市場に膨大な資金の提供を行って、株を釣り上げ、その結果として一定の景気回復が生まれたのに(といっても格差と貧困の中で富が偏在しただけだが)、庶民にはほとんど何の恩恵もない。景気が良くなったという実感がないのは、大企業だけが巨大な利益を上げているだけで、国民の側は実質賃金が低下し、購買力が低下しているからに他ならない。しかも景気回復といってもバブル経済時の税収60.1兆円を上回っていない。このグラフだけで成長しなくなった日本経済の姿さえ見える。現在の状況下で消費税を10%に引き上げたら、税収が落ち込む可能性がある。

ぼくは委員会の議論の中で、セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏の言葉を紹介した。

「いまのタイミングで消費税を上げたら、間違いなく消費は冷え込んでしまうことでしょう」、「国内景気がさらに悪化して、消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある。当然、消費税だけではなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」

鈴木敏文氏は、1970年代初めにセブンイレブンを設立した方で、カリスマ経営者と呼ばれた方だ。かつらぎ町は高齢者が多く年金生活者が多い状況にあり、しかも年金が年々削られているので、10月に消費税を増税したら、鈴木氏が言うように「当然、消費税だけではなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」ということを強調した。しかし、増税はやむを得ないという意見は変わらなかった。

記事が長くなったので、日米地位協定の見直しの意見書の提出を求める陳情書がどうして不採択になったのか。これについては、別の機会の書きたいと思う。

かつらぎ町議会

Posted by 東芝 弘明