架空請求書 2005年4月20日（水）
友人から「こんな請求書が来たので見てくれ」と言われ、葉書をもらいました。
写真が、その現物です。
「未納料金請求通知書」という字が冒頭に大書きされています。
しかし、請求内容には、請求の事由が発生した日時、アクセスしたサイト名、その時に発生した契約内容、請求金額が一切書かれていません。普通請求書という場合は、金額を明示し、また請求内容も明らかするのが普通です。
サイトのログアウト（退会手続き）が済んでおりません。と書いています。ログインで契約が発生し、ログアウトしないと退会にならないというのは、むちゃくちゃな話です。この書き方だと、ログインするたびに契約が発生し、ログアウトするたびに退会することになります。うさんくさいのは、請求金額も明らかにしないで、至急連絡を求めていることです。
その後、文章はこう続きます。
「個人情報保護の観点からも、必ず本人様からご連絡いただけますようお願い致します」
笑ってしまいました。本人が連絡すれば、なぜ個人情報保護になり、本人以外が連絡すれば、なぜ個人情報保護にならないのかさっぱりわかりません。同時に、個人情報を云々するのであれば、こんな葉書でしかも冒頭に赤い字で「未納料金請求通知書」なんて書かないでしょう。封書で送ってくるか、それとも葉書にシールを貼って請求内容が第3者に見られないように配慮するのが当たり前です。
「勤務先に給与差し押さえの内容証明を送付させて頂く」というのは、正確ではないと思います。差し押さえなどによる私権の制限は、単に内容証明というものではなく、裁判所による判定が必要であり、裁判所からの通知と手続きということになると思われます。また、取り立てのみを代行する会社というものも、法務大臣の許可が必要です。インターネット検索でみると、法務大臣の許可を受けた業者は、全国で94社しかありません。もちろん、今回の「株式会社 エムズグランド」は、許可を受けた債権回収業者ではありません。架空請求で検索してみると、この会社は、架空請求業者としてリストに載っていました。
ちなみに、このリストアップをしていたサイトでは、各請求の被害にあわないよう、「架空請求対策7か条」を掲載し、注意を呼びかけていました。
7か条は次のとおりです。紹介します。
１ 身に覚えのないものは支払う必要はありません。請求には応じないようにしましょう。
2 悪質な業者には一切連絡しないようにしましょう。
3 法務大臣が許可した債権回収会社でなければ，債権管理回収業（※）を営むことができません。
4 架空の債権の請求は，犯罪にあたる可能性がありますので，悪質な場合には，最寄りの警察署に相談しましょう。
5 法務大臣の許可した債権回収会社が，出会い系サイト，アダルトサイト，ツーショットダイヤルの利用料を請求することはありません。
6 法務大臣が許可した債権回収会社が，請求書面で，担当者の連絡先として携帯電話を指定したり，個人名義の口座を回収金の振込先とすることはありません。また，携帯メールでいきなり請求を行うこともありません。
7 法務省が，債権回収を業者に依頼することはありません。
一番下の青い字の部分も笑ってしまいます。
「弊社は悪質な架空請求の業者ではありません」
───でも、インターネットに載っているんですが。架空業者として。
「正規の回収代行業者です」
───嘘に嘘を重ねてはなりません。
「心当たりが無くても一度でもサイトにアクセスすると登録が自動的にされ、料金が加算（うーん課金じゃないのか？）されるシステムが多発していますので十分ご注意下さい」
───〝一度でもサイトにアクセスすると登録が自動的にされ〟というのは、すごいシステムですね。アクセスしただけで、本人氏名、本人住所が登録され、本人の知らないところで契約が成立するというのですから。
パソコンのシステムでいえば、アクセスしただけで、住所氏名が登録されるというのは、まず考えにくいと思います。しかも、本人の知らないところで契約が成立するというのは、どう考えてもありえません。契約というのは、本人の同意が必要です。同意なしに契約が成立するのであれば、世の中ムチャクチャになります。
正規の債権回収代行業者なら、本人同意のない契約は成り立たないというはずです。
どうやって個人情報をこの会社は取得したのか。それが一番恐ろしい話なのかも知れません。個人情報保護法との関係で言えば、個人情報を含む名簿を売買することは、法律で許されているらしいです。どこかの企業ないしは個人が、この偽債権回収代行業者に名簿を売った可能性があります。
みなさん。くれぐれも騙されないように。
