治安維持法国賠同盟 県大会 2005年5月28日(土)

出来事

和歌山駅の近くの市営地下駐車場から表通りに出て、腕時計を見ると12時55分だった。会場のビルの3階に上ると受付にMさんがいて、資料を手渡してくれた。
会場の椅子と机は隙間がないほどぎっちり詰めて並べられていた。机と椅子の間に体を滑り込ませるように座ったとき、時計はちょうど1時を指していた。
「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟和歌山県大会」が始まった。
今年は、治安維持法が制定されてから80年、1945年に廃止されてから60年、戦後60年という節目の年である。

治安維持法。


この名前を知らない人も多いだろう。


戦争反対。
国民主権。
日本は中国から撤退せよ。
植民地を朝鮮に返せ。台湾を中国に返せ。
日本は戦争に負ける。


今から60年前、これらの主張はすべて犯罪であった。治安維持法に違反した犯罪者には、「国賊・非国民」というレッテルが貼られ、中には逮捕され、拷問によって虐殺された人もいた。
かつてエンゲルスは、「他民族を抑圧する民族は自由ではあり得ない」と書いた。戦争をおこなう国のなかでも、侵略戦争をおこなう国には、基本的人権を完全に保障しないということだ。ヒットラー・ドイツしかり、戦前の日本しかり。
和歌山県で、治安維持法によって不当に逮捕・投獄された方々は、200人を超えている。弾圧を受けた方は90歳を超えているという。
治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は、全国に組織があり、毎年国会に対して請願署名に取り組んでいる。日本は、民主主義を唱えたために逮捕され投獄された人々の名誉回復も、一切の賠償もおこなっていない珍しい国である。
───こういう事実を学校は教えない。
若者も大人も日本という国の現代史をあまり知らない。第2次世界大戦中は、戦場に向かう教え子に「生きて帰ってこい」と教師が言うことさえ許されなかった。密告されると、憲兵が国賊・非国民の疑いをもって調査に来る時代だった。
自由は、戦争の前にひれ伏していた。戦争に協力しなければ、日の当たる場所で自由に空気を吸うことさえ許されなかった。
多くの国民は戦争に協力した。積極的に協力した国民の方が圧倒的に多かった。
戦争の加害責任は、国民自身の根深い深刻な問題だという側面をもっている。
「あの戦争は正しかった」という認識のもとで、自民党は今年の11月に憲法改正案をまとめるという情報がある。民主党は来年5月をめどに同じく改正案を作るという情報がある。
「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟」。こういう組織があり、国家賠償を求めている運動があることを知っておいてほしい。
かつらぎ町は、治安維持法の犠牲者に対して国家賠償をおこなうべきだという意見書を採択した自治体の一つである。このことも知っておいてほしいと思う。
「戦争する国になるべきだ」と主張している方々がいる。こういう発言をしている人の中には、政府を手厳しく批判している方もいる。
そういう人々にも訴えたい。戦争する国になったら、表現の自由は制限を受けるのだということを。
国民の言論が何らかの形で政府の怒りに触れるとき、政府はその言論を封じ込める。強権と暴力をもって。国民保護法制には、協力という名の強制が盛り込まれる。協力を拒否したら法律によって裁かれる国になるまであと数歩。
戦前への先祖返り。まさに「世にも奇妙な物語」だ。
閑話休題。
夕方、事務所に戻ってから日曜版の配達に行こうとした。ヤマハメイトの前のかごに日曜版をのせ、単車にまたがろうとして、右腕の手首より少し上を見た。鳥のうんちが着いていた。空から落ちてきた感じだった。
そのうんちを見た瞬間、信仰心の深い友人と以前、激しく論じ合ったことが鮮明によみがえってきた。
「人間の未来は運命づけられている。必然が支配している」
友人はそのような意味のことを熱っぽく語った。
「偶然はある」
私はそう反論した。
今日の出来事で言えば、友人の論理はこうだ。
「2005年5月28日、午後7時、東芝弘明の右腕に鳥のうんちが落ちた。しかし、それは東芝弘明が生まれる以前から決まっていたことだ」
この論理を極端な理論だという方もいるだろう。
しかし、鳥のうんちを運命だというと否定する方が、命を失う事故に巻き込まれると運命だったのかと思ったりする。
友人が、鳥のうんちが右腕に落ちたことも運命として決まっていたという方が運命論を信じるという点では首尾一貫している。
こう考える。
必然性は、偶然の積み重ねの中で貫かれていくもの。当然、偶然が必然と結びつかない場合もある。
事務所の手洗いで、腕に着いたうんちを洗い流した。鳥の体の中で食物の消化という必然的な摂理によって生成され、排泄され、偶然にも東芝弘明の右腕に落ちた、うんちは、公共下水の配管のなかに流れていった。


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出来事

Posted by 東芝 弘明