自民党の憲法改正草案をぜひお読みください

政治,雑感

自民党の「憲法改正草案」をぜひ読んでほしいと思っています。
安倍総理は、昨年作成されたこの「憲法改正草案」こそが21世紀にふさわしい憲法だと語っています。

読売新聞は、4月17日付けで安倍晋三首相への単独インタビューを掲載しています。少し引用してみましょう。

「細野幹事長は、96条改正論のことを『メニューはないが、とりあえずレストランに入って下さいと言っているようなものだ』と批判しますが、これもおかしい。自民党は憲法改正草案というメニューを示しているんですね。批判はまったく当たらないし、民主党はブーメラン現象で、自分の言ったことが自分に突き刺さるんじゃないか(笑)。彼らこそメニューがないわけだから」

この部分は、首相が語った言葉として書かれています。
96条改定というのは、憲法改正発議の規定です。
「第九十六条  この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」
この条文にある「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」という規定を2分の1に改定したいというものです。これが実現したら、与党だけでいつでも憲法改正の発議ができるようになります。そうなれば、国政選挙のたびに憲法改正の国民投票が可能になるということです。

一番の狙いは、憲法9条の改正です。国防軍という名前にして、自衛隊を軍隊にします。第2次世界大戦も、当時の日本政府の説明では、自存自衛のための戦争、アジアを開放して大東亜共栄圏をつくるための戦争でした。・当時、日本政府が最後まで主張したのは、「やむにやまれぬ戦争」だったということです。

戦後の歴代政府は、侵略戦争であったことを認めない態度をとっていましたが、村山首相(当時)が「戦後50年の終戦記念日にあたって」という、いわゆる「村山談話」ではじめて、政府見解として侵略という言葉を使いました。

「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。」

これが一つの到達点です。
しかし、安倍総理は、この村山談話の見直しを表明しています。朝日新聞の記事を引用しましょう。

安倍晋三首相は1日の参院本会議で、「しかるべき時期に21世紀にふさわしい未来志向の談話を発表したい」と述べ、日本の植民地支配への反省を述べた1995年の村山談話に代わる安倍談話を発表する考えを表明した。時期や中身については「今後十分に考えていきたい」と述べるにとどめた。(2013年2月1日)

過去の戦争にどうしてこれだけこだわるのでしょうか。
それは、憲法改正と結びついています。第2次世界大戦が自存自衛の戦争であれば、正しい戦争だったことになります。国防軍という名の軍隊が、アメリカの要請を受けて海外に出て、戦闘行為に入るためには、正義の戦争でありあくまでも防衛のための戦争だという見解が必要になります。
第二次世界大戦における戦争が、自存自衛の防衛戦争であったのであれば、あの当時のような戦争を国防軍が行えるようになるということです。

自民党の「憲法改正草案」を読んでほしいと思うのは、天皇の元首化や9条の改正、国防軍の保持、軍事裁判所の新設、緊急事態についての規定とともに、基本的人権に著しく制限をかけるところにあります。その結果、この「憲法改正草案」は、国家が国民を支配する憲法になっています。現代憲法は、国家権力を国民が支配できるように(つまり国民主権が貫けるように)、国民の基本的人権を徹底的に保障する一方で、国家権力の手をしばるものになっています。「憲法改正草案」は、これを180度ひっくり返しています。

人間は、社会の中で生きています。たとえば、個人が全く政治に無関心であっても、政治と社会は、国民に無関心ではありません。消費税は、全ての国民から税金を取るシステムです。日本国憲法は、関心を持たなかった国民がいても、日本国民に成り代わって、国家権力の手をしばって、国民の基本的人権を守ってきました。政治と社会の中で生きているはずの国民に対して、無関心な状況を広範囲に作ってきたのは、日本の教育なのかも知れません。教育には、政治や財界の意向が強く反映して、政治や社会に対して、関心の薄い状況をつくりだしてきたと思います。
学校教育では、具体的な政治について、教えないという傾向をもっています。これだけ憲法が危険な状態に置かれ、国民を支配する憲法への逆戻りが進行しつつあるときに、日本の社会科の教育は、若い世代に危険な事態が進行しつつあることさえ教えない状況にあります。
現行の学校教育でも、日本国憲法が破壊されようとしていることについては、憲法擁護の立場から教えることは可能だと思います。

第十章 最高法規

第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第九十九条  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

「第十章 最高法規」の規定の97、98、99条は、歴史的に形成された日本国憲法の精神を未来に渡って保障し発展させる規定になっています。この精神からいえば、基本的人権に制限をかけたり、国家が国民を支配するような憲法改正は認められないということになります。だからこそ、そうならないように、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」という規定を明記して、権力を行使する位置にある者は(象徴天皇も含めて)、この憲法を守らなければならないのです。

国民を守ってきた憲法が壊されたら、国民は政治と社会に翻弄されるようになります。戦前の日本がそうでした。一人でも多くの人が、この事態を把握して、事態の重大さを感じ取ってほしいと思います。国によって国民の命さえ蹂躙される時代に逆戻りさせないために。

この「憲法改正草案」を無条件に肯定している安倍総理の考え方は、明らかに憲法に反するものであり、憲法が禁止している方向での憲法改悪をおこなおうとするものです。これは、国民の考え方と大きくかけ離れています。
日本共産党中央委員会は、自民党の「憲法改正草案」を資料に載せた『全批判 自民党改憲案』を販売しています(200円)。このパンフレットを読めば、自民党の考え方と日本共産党の考え方が全て分かります。お読みいただければ幸いです。

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Posted by 東芝 弘明