CHANGE、最終回その2
約22分30秒。「CHANGE」で朝倉総理(木村拓哉)が国民に語りかけた演説(トーク?)は、こんなに長かった。テレビドラマ史上歴史に残る長さだろう。まったくカットなし。台本があったのかと思うような自然な語り口だった。
内閣総理大臣が、国民に対し語りかけたいという話をすれば、記者がわんさか集まってくる。辞任が伝えられている総理が、国民の前で本音を語るとなると、マスコミは放っておかない。また、政治家の一方的な話を延々と流すという態度もテレビ局は取らない。ふつう、記者による質問という形で、追及されることがなければ、政治家の本音は明らかにならない。質問によって、分かりにくい話をひんめくって、真実を吐露させる方法を取ることなしに、国民の知りたいことに本物の総理は答えない。
それなのにドラマでは、テレビカメラが入り、記者関係の人間は一切なしという状況をつくりだして、22分間も放映するということになった。この状況は、現実感覚をはるかに超えている。
しかし、このドラマのように、内閣総理大臣が原稿を読まずに、本音ですべてをしゃべるというのは魅力的だろう。こういうことが実現できる総理大臣というのは、国民に対して、国民と同じ目線で政治を見ている人間でなければできないに違いない。
現実の、内閣総理大臣がこのような態度を取ることはないし、国民に直接語りかけることもまずない。
たえず発言は、ある種の計算、もしくは計画の上にある。
このドラマは、政治に関心がなかった方々にもよく見られ、政治とは何かを考えてもらえる契機になったようだ。政治にとって、何よりも大事なのは政治の中身であって、策を弄して勢力争いを繰り広げることではない。
「お茶を出すのを廃止しましょう、むだをなくしましょう」──こういう具体的なことを実行すること、もしくは、政策を確立し、制度をつくり現状を改善すること、ここに政治が一番心血を注がなければならない力点がある。
朝倉総理は、政治とは、具体的な事柄を国民の立場に立って改善することなんだということを、ドラマを通じて視聴者に伝えた。
ドラマには、いろいろ指摘しなければならない点、描き切れていない点はあった。しかし、政治とは具体的なことなんだということを伝えた意義は大きい。
現実の政治の中で、朝倉総理のように具体的な事柄を変える努力をしている政治家は存在する。その人数は決して少なくない。ドラマから現実に目を移したときに、政治に関心をもった人の中から、そういう政治家や政党を発見してもらえることを期待したい。
少し年を重ねたなとは思ったが、深津絵里さんはやはりかわいい。ラストシーン近くで首相官邸の中庭で官邸を見ながら、つまりカメラに背を向けて2人が手をつなぐシーンがあった。しばらくして朝倉総理が引き寄せると、美山主席秘書官は少しコミカルな動きを見せ寄り添った。深いえんじ色のスーツが鮮やかに見えた。印象深いシーンだった。
このシーンの前の会話。
「ぼくの側にいてほしい」
「いるじゃないですか」
「いや、‥‥。‥‥ずーっとです」
「‥‥はい!」
「私の夢は今叶いました」
彼女は笑顔を向けてそう答えた。
いいセリフだった。