道ができて便利になったのに

雑感,出来事

雨が降っていた。雨音が部屋の中にも聞こえていた。外に出ると雨は思った以上に細かかった。車に乗って、エンジンをかけワイパーを動かす。
車を駐車場から出して、広い道を左折した。滑るように車は走る。夕暮れが次第に広がっていたので、ヘッドライトを点けた。信号待ちの時点で時計は5時40分を指していた。
「あと20分。間に合うかな」
こんな言葉が浮かんでくる。
アクセルを踏み込む。少し気持ちが焦ってきた。
京奈和に乗って車を東に走らせ、前の車のテールランプを見ていた。橋本のインターチェンジを降りたときに時計は5時50分を指していた。市脇の交差点を右折したときが55分、自動車学校の手前を左折して、教育会館の駐車場に車を止めると時計は5時57分だった。
間に合った。3分前。
「こんばんは」
畳の間に入るとすでにメンバーが座っていた。

笠田から橋本まで。20分足らずで着くようになった。以前はどんなに急いでも30分はかかっていた。京奈和自動車道ができて、移動時間が短縮された。信号でほとんど待たなくてよくなったので、橋本は近い場所になった。
窓の外の灯りを見ると過去の記憶がよみがえった。
高校生の時に、兄貴の友人が橋本駅から電話してきたことがあった。
「電車がなくなった。迎えに来て」
ぼくが乗っていた単車は70CCのミニバイク。真冬の夜の国道は寒かった。国道を走って橋本駅まで行き、もう一度国道を笠田まで帰る。たっぷり30分以上かかった道のりは、非常に遠かった。
「寒い」
「寒い、寒い」
とにかく口から出てくる言葉は「寒い」ということだった。

便利になったのに、地域の力は衰え始めている。道路ができても、衰退傾向は止まらない。
「道ができたら地域は発展する」
自民党の議員の方々はよくこう言ったが、道ができるたびに、便利になるたびに、住んでいる地域は確実に衰退してきた。
リニア新幹線で大阪ー東京間を1時間で結ぶ。地方は30万人を単位に集中をはかるのだという。田舎はより一層衰退する。都市への集中と地方の衰退。まさにリニア新幹線構想が田舎を破壊する。


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雑感,出来事

Posted by 東芝 弘明