中学校卒業まで医療費を無料に、議案を保守系議員が否決

かつらぎ町議会

3人の議員で提出した子どもの医療費給付条例の一部を改正する条例案は、賛成3人、反対10人で否決された。保守系議員は反対討論を7本行った。7本の反対討論は、1本を除いてほとんど同じ論拠によって成り立っていた。
住民の切実な願いに対し、これでもか、これでもか、というほど反対討論を行う議員の姿は異常だった。天野小学校の廃止を求めるときもそうだったが、住民の要求に反対するときに異常なほどがんばる姿は、これで2回目。こんな光景は、住民の代表である議員という姿を、議員自らが否定するようなものだろう。傍聴者がいない議会で、繰り広げられた反対討論は異様だった。

賛成討論は、ぼくと女性議員の2人だった。結局、反対した議員の多くは、中学校を卒業するまで医療費を無料にすることには賛成だといいつつ、町長が決断していないときにこのような条例案を提出するのは、長の予算の提案権を侵すものだと主張した。反対の理由の根拠に上げたものの1つは、地方自治法第222条の1だった。

(予算を伴う条例、規則等についての制限)
第222条  普通地方公共団体の長は、条例その他議会の議決を要すべき案件があらたに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならない。は、これを議会に提出してはならない。

この規定の主語は、議員ではなくて地方公共団体の長であるので、議員の議案提出権をしばるものではない。これを論拠にするのは筋違いだろう。この規定は、長の手をしばるものではあるが、条例案を提出するときには、必ず予算案を伴うことを求めるものではない。
例えば、9月議会に町長が提出した子育て新システムに基づく条例案は、施行期日を消費税10%増税がなされた年の年度とするとなっており、予定どおり10%増税がなされていたら、来年の4月1日施行ということになっていた。この場合、予算措置は3月会議に提出される新年度予算によっておこなわれることになる。「必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならない」という規定は、見込みが得られていれば、その時点で予算措置していなくても、条例案を提出できることになる。こんな事例は、ものすごくたくさんある。
新制度には、準備期間が必要になる。その際は、その年度の早い時期に条例案を可決し、予算措置は年が明けてから新年度予算で行うことになる。議員が上げた反対の論拠は、長の手をしばる規定を議員に置きかえ、さらに条例案と予算案を同時に提出しなければならないという2重の誤った解釈にもとづくものだった。

もう一つ、保守系議員の方々が反対討論で根拠に上げた地方自治法は、第112条だった。

第112条  普通地方公共団体の議会の議員は、議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出することができる。但し、予算については、この限りでない。

この規定は、長の予算提出権を侵してはならないというものだが、今回、3人の議員が提出した議案は、条例案であって予算案ではない。予算の提出権は長にあるので、議員は予算を提出できない。ただし、提出された予算を組み替えることはできる。ゆくゆくは、予算措置が必要になる条例であっても、新制度実施の準備期間を十分取って施行期日を定めれば、予算措置を行う時間は十分に確保できる。今回の議案提出と予算との関係でいえば、たとえば6月補正において予算措置しても十分に間に合う。こういう基本的な点を理解しないで、反対討論を繰り広げたのは、悲しい出来事でもあった。
議会のルールの基本を全く理解しないという点では、住民の代表としての責任を果たしていないと言わなければならない。
反対討論の中には、こんなことをしたら「自治体が崩壊する」というものや、われわれ議員は町に財源があるのかどうかまでは分からない、というような発言もあった。こんなことをいうのは、住民の代表である議員の役割を自分たちで否定する行為に等しい。

過去、かつらぎ町議会では、何度か乳幼児医療費や子どもの医療費の年齢枠を引き上げる議案を日本共産党は提出したことがある。そのときにも、条例改正案を提出し、この条例案が可決すれば、町当局が新条例に基づいて予算措置を講ずればいい、議員としては、町当局が新制度を準備する十分な期間を設ければ、条例案の提出だけで事は足りるということを確認して、条例案を提出してきた。
以前提出したときには、この問題についての質疑が行われ、条例案に対する疑義が質され、正しい理解のもとで賛否が問われた。しかし、今回は質疑を全く行わずに、反対討論を繰り返すという異常な方法が取られた。その結果、基本的な不理解のもとで討論を繰り返すという変な形になった。
本町議会では、議員による議案提出権をめぐる課題については、過去のやり取りにおいて十分にクリアしているはずだったのに、今回の反対討論は、全くの「不理解」を前提にしたものだった。
あたかも、議員が長の意向に反して提出するのはもってのほかだといわんばかりの態度は、議員による議案提出権を自らせばめるものだった。ある議員は、こういう議案の提出は議会改革ではないと主張したが、議員のもつ議案提出権を正当に理解しない態度は、まさに議会改革の基礎を理解しない発言だったといわなければならない。

なぜ、質疑を行わずにいきなり反対討論ばかりを繰り返したのだろうか。反対討論者の指摘した論拠は、質疑の中で12分に解消できる性質のものだった。保守系議員の方々が、きちんと質疑で疑義を質していれば、提出者である宮井議員がきちんと受け答えしたはずだ。質疑が行われていれば、今回のような誤った論拠による反対討論というものは、成立しなかっただろうと思われる。

ぼくが行った賛成討論も載せておく。

議案第151号 子どもの医療費給付条例の一部を改正する条例制定についての賛成討論

議案第151号 子どもの医療費給付条例の一部を改正する条例制定について賛成討論を行います。中学校を卒業するまで医療費を無料にする制度は、全国的にも過半数を超える自治体に広がっています。和歌山県内で通院・入院ともに無料になった自治体は、30市町村中15自治体になり、入院のみを加えると19自治体になっています。近隣では、橋本市が来年4月から無料化を実施します。こうなると、伊都・橋本地域では、かつらぎ町だけが小学校卒業までになります。この事態は、本町だけが近隣から立ち遅れることを意味します。
なお、私は、子どもの医療費の無料化制度の拡充は、子どもの中に広がっている貧困対策としても、極めて重要な今日的意義をもっていることを強調するものです。中学生における貧困問題は、子どもの生活を蝕み、高校への進学にも大きな影を落とし始めています。子どもをめぐる健康問題も貧困の中で深刻な問題をはらんでいます。子どもからは健康保険証を取りあげない制度が確立しました。この制度とともに医療費を無料にすることが合わさってはじめて子どもの健康を守れるということです。

井本町長は、子どもの医療費の無料化制度が、子育て支援になることを認めています。しかし、実施の時期になると、「予算要求の段階で9億8400万円不足している」「500数十万円の財源が確保できない」と発言し、財源のメドが立たないからと実施を見送っています。
こんなことを理由にして、子どもの医療費無料化制度を拡充しないのは、全くの詭弁であり、町長の説明を鵜呑みすると、議会は住民の信頼を失ってしまいます。

各課からの予算要求を集計すれば、歳入予算を歳出が上回るのは当たり前です。各課は、最初の段階では予算要求を抑制するという態度はとらないでしょう。組み込んでもらえない可能性のあるものも含めて予算要求した上で調整を図るというのが、予算編制ではありませんか。
1990年代はじめ、あのバブルの頂点の時期、つまり会計が潤沢であった時期でさえ、本町では、各課から提出された予算要求は、歳入を上回っていました。予算要求時の歳入不足をもって財源不足が生じているという話は、議会人をなめている話ではありませんか。
こんな話を真顔で信じるのであれば、議会は必要ありません。議員は、住民の代表として本町の会計状況を見極める責任があり、町政を発展させるために新制度が必要だと判断すれば、実現を図る責任があります。

本町の財政状況は、決算審査でも明らかになったように安定しています。この安定的な財政運営は、国の経済対策によるものでした。安定した財政状況は、基金の残高に端的に表れています。財政調整基金の残高は、平成25年度の決算で言えば、13億7668万円あります。災害対策基金として積み立てられている基金は3億1021万円あります。
年度を通じて財政調整基金は、マイナス880万円減少していますが、災害対策基金の方は、1億1021万円増えています。これを合わせて考えると、財政調整基金の減額は、会計の苦しさを表すものではないといえます。
さらに平成25年度決算では、減債基金に4024万円を積み立て、過去に積み立てた分と合わせて1億2000万円の繰上償還を行っています。これも会計の安定性を示すものです。
基金の状況だけを見ても財源は十分にあります。問われているのは、財源の確保問題ではありません。問われているのは、少子高齢化の中で子育て支援を切望する認識の問題です。

議員は、人口減少問題に胸を痛めはじめ、事態の深刻さに驚きつつも、危機感をもって立ち向かい始めています。この12月の一般質問でも、数人の議員が子育て支援策として、子どもの医療費の無料化制度の拡充を求めました。
これらの議員に私は拍手を送るとともに、質問を現実のものにするための決断を求めます。この議案を通して、一緒に新制度を作ろうではありませんか。

今回私が、各議員にこの条例改正案への賛成を求めるのは、この施策実施が、まさに新年度において求められているからに他なりません。
平成27年度は、地方創生元年となります。各自治体がまちづくりの事業や活性化の事業を国に提出し採択されれば、国は交付金を支給するとしています。
全国知事会は、どのような内容で地方創生を推進するかという考え方を示した文書の中で、交付金対象事業例の中に「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」という項目を起こし、トップに「第3子以降の保育料軽減・無償化」を掲げ、次いで「児童の医療費助成」を掲げています。これは、地方創生の中に子どもの医療費助成は組み入れられて当然だ、ということを示すものです。
平成27年度の新年度予算で中学校を卒業するまで医療費を無料にするのは、地方創生元年にふさわしい取り組みではありませんか。
いったい、本町が子どもの医療費の年齢枠を中学校卒業まで広げるのはいつでしょう。それは「今でしょ」。これがこの課題に対する答ではありませんか。

地方創生事業の予算は少なくとも1兆円規模だと報道されています。今年度までは、経済対策として予算が下りてきていましたが、新年度は地方創生という新しい枠組みで新たに予算が組まれます。国の経済対策は、本町の財政を安定させました。今回も本町の事業に地方創生の予算が活用されれば、必然的に一般財源に余裕が生まれます。もし仮に、子ども医療費の助成事業が地方創生の事業から外されたとしても、余裕のできた一般財源で子ども医療費の無料化の年齢を引き上げるのは、十分可能です。

今回の条例案を提出するに当たって、4月1日からの実施は可能なのかどうか、事務的にも調べていただきました。小学校卒業まで医療費を無料にしている現在、これを中学校卒業まで枠を拡大し、4月1日以降実施するのは、十分に可能だという回答を得ました。予算的にも、事務手続き的にも実施には問題がありません。
外濠も内濠も完全に埋まっています。実行力と決断力が問われているときに、そっと背中を押す勇気を議員に求めます。本町の背中をそっと押せば、中学校卒業まで医療費を無料にする制度は実現いたします。今日はクリスマス・イブです。子どもたちに、最良のプレゼントを贈ることを訴えて、私の賛成討論といたします。

かつらぎ町議会

Posted by 東芝 弘明