議会最終日。480号地域振興交流施設
兄貴は脳梗塞だった。昨日、和医大に到着したのは午前12時30分を回るところだった。夜中の玄関は北側にある。南玄関に行っても入ることができなかった。北側の玄関は、高度救急救命センターの入口でもある。緊急搬送された患者の家族の方々が、押し黙ってソファーに座っていた。ぼくも妹と合流して、待機する家族の一員になった。
呼吸と心拍は安定していたので、HCUに移されて24時間管理のもとに移行した。
諸手続を済ませ、兄に対する質問に答えると「今日の所はお帰りください」という話になり、妹をアパートに送ってから家に帰り着いたのは午前3時だった。
議会最終日の議案の準備が残っていたので、朝の5時30分まで質疑の準備をして、8時まで仮眠(睡眠)をとった。
今日の議会の最大の議案は、480号沿地域振興交流施設の指定管理だった。この議案の審査は1時30分から5時半頃までかかっただろうか。説明しきれない町当局の自信のない答弁が繰り返された。本体の物産販売店はずっと赤字の計画となっており、この赤字を埋めるのは、パン工房とレストランからの収入、加工体験施設の収入だった。
水道光熱費は720万円は、物産販売所が払うことになっているが、このお金と町への家賃収入とが瓜二つで同じ額だというのが面白かった。レストランは、180万円の家賃と180万円の水道光熱費を払い、パン工房も180万円の家賃と180万円の水道光熱費を払う。このようにデタラメな事業計画を真面目に審議させる町当局の感覚は、次元を超えていた。
パン工房も赤字経営から出発、レストランも赤字経営から出発する。この2つの施設は数年間で700万円以上の赤字を抱え込む。一番規模の大きい物産販売の累積赤字は3130万円を超える。物産販売の赤字は、レストランとパン工房からの家賃収入と水道光熱費収入及びイベント広場と加工体験施設の黒字で補てんされる。物産販売の職員体制は、正社員2人(うち1人が月給、1人が時給)、5人の時給職員によって運営される。この体制で365日運営するのは不可能だが、審査ではそこにメスを入れていない。委託しようとしている会社は、本体事業でも赤字を生み出している小さな会社だった。この会社の平成26年決算は、本体事業では800万円の赤字を生み出したものを雑収入1000万円でようやく黒字70万円程度を生み出していた。本体事業で黒字を生み出せないでいる会社が、規模の大きい地域振興交流施設を管理するときに、本体事業では赤字を生み出しながら、事業外収益で辛うじて黒字を生み出すという計画を出してきた。会社本体の体質をよく表した事業計画だといわなければならない。事業外収益で黒字を生み出すという収支計画は、「人のふんどしで相撲を取る」ものだった。はじめから事業の失敗が約束されているような収支計画を見せられ、問題ではないかと問うと最終は、審査委員会での採点が60点をクリアしたので候補者に選定したと答弁した。この答弁のどこに事業を何としても成功させたいという情熱があるだろうか。
「ことここに至っては離陸しかない」という賛成討論があった。賛成討論2本、反対討論3本。このような質疑だったにもかかわらず、賛成8人、反対5人で議案は可決した。議会で活動していると、このようなことは非常に多い。町民の感覚からすれば、異次元の世界の出来事ではないだろうか。
賛成多数の議員が多いということは、議場で語られなかったことに本当の姿があり、ぼくたちのように反対する議員は、現実の表層しか見ていない、政治と経済のなんたるかが分からない人々だ、とでもいうような状況だった。
でも、いつもご無理ごもっともで通してきた事業は破たんしてきた。質疑とは関係のないところで賛成をする仕組みというものは、一体何だろうと思う。これが日本的な対応の仕方なんだろうかと思ってしまう。時代はもっと是々非々の時代に移行しているのではないだろうか。かつらぎ町は厳しい時代の中で取り残されているのではないだろうか。
ぼくよりも事業内容にきちんと触れて、反対討論をおこなった若手議員がいた。堂々とした討論だった。原稿があれば紹介したいが、とりあえず(おそらく彼の原稿は手に入らない)原稿が手元にあるぼくの反対討論を載せておこう。
国道480号地域振興交流施設の指定管理に対する議案についての反対討論
国道480号地域振興交流施設の指定管理に対する議案について、反対討論を行います。さまざまな質疑をしてきましたが、事業計画と収支計画に対して、ほとんどまともな答弁ができないことが浮き彫りになりました。
私は、26年間、かつらぎ町の産業関係の事業と向きあって来ました。かつらぎ町の事業で成功したのは、国道24号の道の駅しかありません。当初計画が破たんした例は、椎茸菌床栽培施設、あんぽ柿加工生産施設、柿の茶屋、志賀ふれあい会館、野半の里によるグリーンパークの指定管理などたくさんあります。いずれも全て共通しているのは、当初計画がずさんだったということです。
それらずさんな計画の中でも、今回の国道480号地域振興交流施設の計画は、群を抜いてずさんです。そもそも平成33年度で1億6800万円の売り上げを予定している物産販売所は、ずっと赤字の計画になっています。最も重要で肝心要の事業である物産販売所が赤字のままの計画では、破たんが約束されているといわなければなりません。
収支計画を裏付けるはずの事業計画は、混乱と矛盾の極地のようなものでした。唯一の黒字の加工体験施設については、具体的中身が何もありませんでした。もしかしたらセイコーグループは、物産販売でさえ委託するのかと思わせる記述さえありました。さらに質疑では、従業員の労働の体制でさえまともに説明できませんでした。
破たんが目に見える事業計画と収支計画になっている今回の指定管理については、承認を与えることはできません。指定管理の議案を否定し、業者の選定からやり直さないと、問題は解決しません。
今回の議会に提出された指定管理の資料は、議会でまともな審議ができるような水準に到達していません。このような議案を議会に上程する町当局の見識が問われます。
井本町長の最大公約が成功するかどうかは、町長としての政治生命に関わる問題です。それだけ重い事業を、こんな風に軽く扱う町長の姿勢が問われています。
議案を否決し、経営のことが十分理解できる経営コンサルタントや会社経営の専門家を入れて、振り出しに戻って計画を立て直すことを求めて、私の反対討論といたします。
夜、うたた寝をしていたら妻に叱られた。兄貴は一般病棟に移された。