大森彌東大名誉教授の講演

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「これからの町村と議会」と題する講演が吉備ドームであった。主催は和歌山県町村議会議長会で県内21町村の議員研修として行われたものだ。講師は大森彌東大名誉教授。
1時間半の講演には感銘を受けた。
少し内容を紹介しておこう。以下は自分なりの要約。
2005年、小泉郵政選挙の時の自民党の得票は2589万票、民主党の得票は2104万票。
2009年、政権交代が起こったときの衆議院選挙の自民党の得票は1881万票、民主党の得票は2984万票。
2010年、参議院選挙の自民党の得票は1407万票、民主党の得票は1845万票だった。だれが、自民党と民主党の得票を奪ったのか。それはみんなの党だった。みんなの党の得票は794万票あった。
大都市部の浮動票は、800万票あるといわれておりこの票がみんなの党に行った。
「政権を取ろうとする政党は、この浮動票を獲得できるかどうかにかかっている。つまり町村は無視されている」
政権党から無視されている町村の数は1割しかない。しかし、この町村が森林を保有し、農地をもち、豊かな水脈をもって日本を支えている。
「この地方が崩壊したら日本は崩壊する。都市と農村は対立しているのではなく、農村が都市を支えている。農村の崩壊すれば都市も崩壊する」
地域主権ということに危機感を感じている。
地域主権という用語は、法律用語にはならない憲法違反の用語であり、日本国憲法が保障しているのは、国民主権だ。地域主権という考え方は道州制と結びつかざるをえない。
市町村合併が、何かいいことを残したか。合併によって地域の財政自主権が奪われた。村があったら雇えた若者を雇えなくなった。村にとどまれなくなった。
いいことは何もない。
小沢さんは、基礎自治体を300にするという構想をもっていた。これはとんでもない。こんなことをしたら日本は滅ぶ。300になると自治体の人口は30万人規模になる。そんな規模で自治体は成り立たない。しかし、小沢さんが自分の失敗ではずれたことによって、民主党のマニフェストからこういう部分はみんな消えて、穏やかなものになった。しかし、地域主権というものが残り道州制については、当面求めないが将来的にはめざすとなった。
日本共産党と社民党以外の自民党も民主党も公明党も、その他の少数政党もすべて道州制を掲げているので、道州制で一致すれば一気に道州制実現の方向に動いてしまう。これは危険だ。
住民自治は、議会がなければ成り立たない。首長だけで住民自治は成り立たない。議会が住民自治のカギを握っている。議員は楽な家業だ。4年間何も発言しな意義員がいる。期数の長い議員は、若い議員に質疑の仕方の範を示すべきだ。質疑は、わからないことを聞くのではない。よく調べてわかっていることを聞くのが質疑だ。
議会が、行政と同じように考えて自治体の進むべき方向を指し示すべきだ。
いま、地方自治法が改正されようとしている。この改正は、重大な内容をもつ。
基本構想が地方自治法の規定からはずされ、議会の議決を必要としなくなる自治法の改正が行われようとしている。また、人口規模によって定められていた議員定数の規定がはずされようとしている。
そうなると基本構想も議員定数も法的な根拠を持たなくなる。
議会がよほどがんばらないと議員定数を削減せよという動きが出てくる。
議員が住民にとって必要な存在になれば、議員定数を削減せよということにはならない。
議会が、自分たちの手で基本構想を作るようになって欲しい。
本格的に議会が問われている。
もうこれ以上の市町村合併は反対。道州制には反対。市町村合併は日本が望んだものではない。道州制も日本が望んだものではない。みんなアメリカが望んだものだ。アメリカは日本について、アメリカを脅かすものにはならないと言っている。脅威にならない国にするというのがアメリカのねらいだ。
アメリカには言うべきことを言って、国をつくるべきだ。
講演後、主催者が質問を求めたので、ぼくは質問を行った。
「講演を聞いていると、日本国憲法を守り、都道府県を守り、今の町村を守ることが21世紀の日本の進むべき道だと聞こえた。そういうことですか」
「日本国憲法を当面守るべきだと考えている。将来的には変えるべき規定もあると考える。私は、守旧派だ」
大森さんはそう答えて会場をわかせた。ぼくはこの回答に拍手した。
真面目に考えている人々は、日本国憲法にもとづく戦後の枠組みを歴史的に形成された重要な枠組みだと考えているのかも知れない。
大江健三郎さんは、「日本国憲法の規定に基づく国づくり」を提唱している。大森教授の話は、この大江健三郎さんの話とも深く重なっているのではないかと感じた。
憲法は、法の下の平等をうたい、25条で健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を規定し、この精神に基づいて、国─都道府県─市町村という体制をとった。中央集権的な国の体制をとりながら教育も社会保障も国の責任でおこなうことになっている。国民主権とその主権を代表する国会議員による国会で、国民の生活や権利に関わる問題を法律という形で制定し、国民主権を貫くという体制をとっている。
この基本を崩してしまうのが地域主権だろう。道州制をつくり、州に主権を与えることによって、日本をいくつかの州に分けてしまう。国の役割を非常に限定的なものし、社会保障なども州の権限に移行していく。これは、日本国憲法が規定した国のあり方を変えてしまう。
地方議員は、こういう流れに反対し日本国憲法をよりどころに地方と国を守っていかなければならない。
議員には、深い認識と決意が問われている。
流行に身をまかせてはいけない。真実を見抜き貫く精神が必要だ。
胸が熱くなる講演を聞くのは久しぶりだった。農山村を守れという大森教授の姿勢は嬉しかった。


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Posted by 東芝 弘明