土山希美枝教授の講演は充実したものだった

出来事

午後、かつらぎ町議会の研修会「質問力で高める議員力・議会力について」があった。講師は土山希美枝(龍谷大学政策学部政策学科教授)先生だった。一般質問についての講演を90分受けた後、ポストイットに感想と一般質問についての悩みや工夫について書いて、それで質疑応答するというものだった。1時から4時前まで充実したお話を聞かせていただいた。「地方議会人」に連載されていた同名の連載を本人から聞かせていただくものになった。
一般質問は、往復60分よりも片道30分の方がいいというアドバイスも受けた。これを導入するのもいいかも知れない。論点整理のメモを作るといいというアドバイスは生かしてみたい。

ぼくは、質問テーマが明確になったらとにかく資料を収集しながら考えるということを行っている。資料を読み込んでいきながら、取材を行う。徹底的に資料を読み込み、取材をしていくと質問内容は自然に出来上がる。取材は、とにかく現場に行く努力を行う。行けない場合は、全国各地に電話を入れる。沖縄県庁にでも北海道の自治体にでも電話を掛ける。ありがたいのは、「和歌山県かつらぎ町の議員で東芝といいます」というだけでていねいな対応をしていただけることだ。質問の組み立てについては考えたことがない。それは全部潜在意識下で整理されている。徹底的に資料を読み込むのは、自分の問題意識の変化を驚きを持って追いかけるということに等しい。自分なりの発見と驚きが一般質問の組み立ての柱になるので、質問の流れなどを整理するようなことはしない。もし、発見や驚きのない調査に終わると一般質問も迫力に欠け、面白くないものになるだろう。

こういう方法は、どうも一般化しにくい。他の人にこういう形で準備をしていると言っても、なかなか伝わらない。多くの人の質問の組み立て方とぼくの質問の組み立て方は、随分違うだろうと思われる。実際に前日のぎりぎりまで本を読んで準備している。よし、今から質問原稿を書こうと決意したら、いきなり「発言通告にもとづき一般質問を行います」ということから書き始める。そこからは一気呵成。もちろん、資料を見ながら原稿は書いているが、ほとんど質問の組み立てについては考えていない。自分で調査研究したプロセスと認識の変化、深化が質問に生かされる。

こういう方法に対して、土山先生は、もっと誰もが一般質問をより良く改善できる方法を提起された。ぼくがやっていることよりもはるかに論理的だった。質問の洗い出しを行い、事実と分析、主張に分けて自分の認識を整理するという方法は、役に立つのではないだろうか。
行政との関係で事実とは何かというのは、興味深いものだ。ぼくは、行政が活用している資料や条例、法律、答弁を重視して、これを土台に質問を組み立てる。見解の相違や認識の不一致、観点の違いというものをできる限り排除するためには、「共通言語」に基づいて議論をすることが重要になる。

昨年9月、子どもの貧困を取りあげたときに、相対的貧困とは何かという指標を明らかにしたが、この時は徹底的に国が示している考え方に沿って質問を組み立てた。山形大学の教授の優れた子どもの貧困についての調査研究があり、こうすれば子どもの貧困率を把握できるという成果があったが、あえてこの研究には一切ふれなかった。大学教授の研究は、優れたものであり、この方法を採用すれば各自治体でも子どもの貧困をよりリアルに数値としても把握できるというものだった。しかし、この考え方を提示しても、相対的貧困ということに対する認識がまだ培われていないかつらぎ町の具体的な姿が見えていたので、厚生労働省の数値と相対的貧困についての説明を重視した。
厚生労働省は、子どもの貧困を計算する国際的な基準に基づいて数値を出したし、子どもの貧困を国際的な考え方に合致させる形で把握した。この到達点に沿って質問をすることが、相対的貧困を理解してもらう力になった。
もう一つ活用したのは、沖縄県の調査だった。沖縄県は、国が示した考え方に基づいて、自治体の資料を集計する形で貧困率を明らかにしていた。国の考え方と数値、沖縄県の調査をふまえた上で、かつらぎ町の子どもの貧困にどう接近するかということが、質問で重視したことだった。
沖縄県の調査で疑問に思ったのは、かつらぎ町でも同じような調査ができるかどうかという視点だった。この点については、担当する職員とかなり話し込んだ。この聞き取りに基づく話し合いによって、ぼくなりの見通しをもつことができたが、実際の質問では、かつらぎ町における子どもの貧困率の調査については、一切言及しなかった。重要だったのは、沖縄県の調査を紹介するときに、かつらぎ町でもこの調査はできるという確信だった。このことに具体的には触れなかったが、沖縄県の事例を紹介するときの自信の裏付けになった。活用する情報について、自分なりにそれをどう深く把握しているのか。こういう点も重要だと思われる。
ぼくは、かつらぎ町における子どもの貧困調査がない中で、子どもの貧困にどう接近するのかを提示した。着目したのは、かつらぎ町におけるひとり親家庭の率と要保護・準要保護の率だった。これだけでは、事実の提示としては弱いので、具体的な子どもの姿を把握するために、こども園と小学校に聞き取りに行った。子どもと向きあっている現場に足を運ぶことは、事実を提示するという点で大きな意味を持つ。何をどう提示すれば、共通認識を培えるのか。行政にとっての重い「事実」とはなにかをよく理解して質問に生かす必要があるということだ。

質問は、事実と分析があってはじめて主張(提案)が生きる。どう分析するかは、質問の中では、プレゼンテーションにあたる。かつらぎ町では議員側から資料を配付できるので、この資料をどう読むかということが、分析と不可分一体のものになる。資料を見ていただいて、一緒に分析してもらうという感じになる。

話を聞きながら自分の質問を振り替えることのできるいい時間になった。今度は具体的な質問の分析をお聞きしたい。土山希美枝教授には、また、ぜひ、かつらぎ町にお越しいただきたい。

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Posted by 東芝 弘明