読んだことを忘れていた本
宮部みゆきさんの「今夜は眠れない」を読んでいると、「あれ、この本、以前読んだことがあるかも」という意識がムクムク育ってきた。しかし、話の先が全く見えないので、「いや、記憶違いか」という思いが入り交じっていた。
中程まで読み進めると、一度読んだことがあるという意識が次第に強まってきた。
そして、それは確信になって来た。話の先のシーンが見えてきたからだ。
おそらく、この小説を読んだのは4年前のことだった。
本の間に栞代わりの名刺があった。この名刺の主に会ったのは4年前の橋本市議会議員選挙のときだった。
一度読んだ本のことを忘れてしまうのは、悲しくもある。
久しぶりに読んだ宮部みゆきさんだったが、なんだか残念な気がする。
この本と並行して石垣りんさんが解説した詩集を読んでいる。石垣さんの解説は、紹介している詩と並んで、詩に引けを取らないエッセイになっている。こういう文章を書ける人に魅力を感じる。
人の心のしみいってくる文章を読みたい。
人の心にしみいる文章を書きたい。
そのためには、自分の感受性を豊かにしなければならない。物事から感じる力、それを豊かにしないと、心にしみいる文章は書けない。テクニックではない。問われているのは、感じる力そのものだ。感じる力がないと、人に思いは伝わらない。
年齢を重ねていくと認識力は高まる。記憶力は衰えているかも知れない。しかし、昔読んでもくみ取れなかったものが、今読むとさらに深くくみ取れるものがある。自分の中にあるいろいろなものを受けとめるバケツが大きく深くなっているのかも知れない。
本の読み方というものがあると思っている。自分の人生に引き寄せて、自分と深く対話する。そうすれば、本は深いものを与えてくれる。本を読んで出会うのは、たった1行であってもいい。その1行が、新しい一歩につながる。
論文から離れて、小説や散文を読んでいる。こういう本を読んでいると論文が読みたくなってくる。不思議なものだ。欠けているものを求めるのは、人間の性なのかも知れない。
今夜は眠れない (中公文庫)/宮部 みゆき
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