女の方が男の何倍か深い
今週の赤旗日曜版(2018年1月21日号)から抜き書きしてみました。なかなか読みごたえのある記事がありました。
「男と女を比べると、女の方が複雑で、その分だけ、女の方がよけい、生きているという感じがします。だから、男(の作家)よりも女の方が面白い」
「私は生まれ変わったらまた小説家になりたい。それも女の。女の方が男の何倍か深い一生を送れるんじゃないでしょうか」
なかなか、含蓄のある面白い言葉ですね。これは瀬戸内寂聴さんへのインタビュー記事です。インタビューの軸になっているのは『いのち』(講談社、税別1400円)。瀬戸内さんがいうように、なんとなくそう感じますね。男の方が単純だという気がします。
「個と自由の問題は、日本の近代文学では特に重要なテーマでした。お上の強制に対してどこまで個人は権利を行使できるのか。そのせめぎ合いの最前線に文学がありました。権力につぶされず、権力の横暴をどうやりすごすか、その回答が近代文学だったと位置づけられます。文学には時代ごとのみすぎよすぎのすべてが隠されています」
これは、島田雅彦さんへのインタビュー記事にある文章です。『深読み日本文学』(760円)について語ったものです。近代文学は、個人の自我の確立と社会との葛藤にあったと思います。芥川龍之介や太宰治、夏目漱石にもそういうものを強く感じます。小林多喜二もこの問題と格闘した一人だと思います。個人の自我の確立は、どうしても当時の天皇制と関係を結ばざるを得なかったのだと思います。形は違っても、多くの作家はこのテーマから逃れることはできなかったのではないでしょうか。
「カンボジアの労働者の家に行くと、壁もない小屋で家族5人が暮らしている。国内で労働者をこき使うことの延長線上に、海外のひどい労働がある。次々と人件費の安い所に生産現場を移すのが、ユニクロのやり方。だから製品が安いし、会社も儲かるんです」
「ユニクロでも他企業でも、経営者に聞きたいのは『自分の子どもをそうした現場で働かせたいか』ということです。答えはきっとノーですよ。利益を出すのが資本の論理なんだろうけど、それだけでいいはずがない。青臭いかもしれないけど、社会正義がなくていいのか。これが僕の問いであり、軸なんです」
これは、『ユニクロ潜入一年』(文藝春秋、税別1500円)の作者の横田増生さんへのインタビュー記事の言葉だ。
潜入レポートは、強烈なインパクトがある。鎌田慧さんのトヨタに潜入した『自動車絶望工場』は、強烈だった。ユニクロの潜入記は、日本の企業の搾取の実態をむき出して、考えさせてくれる力を持っているだろう。
いろいろな文章は、読むことによって新しい出発になる。出会った文章が、新たな地平線を開いてくれる。紹介した3つの文章は、新しい世界への窓を開く力を持っている。本を買いたくなってきた。