前川喜平さんの講演会
前川喜平さんの講演会が午後1時15分から開かれた。主催は伊都橋本9条連絡会。ぼくの役割は、橋本駅に前川喜平さんを迎えに行くことだった。一緒に食事もさせていただいた。
お聞きしたいことがあった。
それは「前川さんは日本国憲法を哲学のように思われていませんか」という問いだった。
「日本国憲法に基づいて考えると間違いのないものだと思いますよ」
それが答えだった。聞けてよかった。
前川さんの話は、2時間30分を超えた。統一協会問題や維新の会のことについて、しゃべってほしいという注文が主催者の側から出されていたので、テーマにない話が続いて講演が伸びた。話は、ていねいで正確だったので面白かった。ただ1時間を超えて統一協会問題が語られたので、今日の話はどうなるんだろうと心配になった。
統一協会の件では、文科省がおこなっている宗教法人法に基づく質問権というものは、全く捜査権がないものなので、どんなに質問しても、統一協会にとって都合の悪い話は出てこないということだった。7回質問権を行使しているようだが、最後の質問権行使のときは、レターパックのような薄っぺらい資料しか出てこなかったのだという。宗教法人として解散したら、財産処分となり、いろいろなものが出てくるようになると言っていた。これが表に出ると大変なことになる可能性があるので、宗教法人を解散させることに抵抗する自民党の国会議員がいるだろうと話していた。
前川さんは設定されたテーマを何度も振り返りながら、「憲法・教育の今と日本の未来」に関わる話をしてくださった。教育の話がやはり出色だった。教育勅語の復活を求めている勢力が自民党の中にいて、教育基本法を改正して、道徳や愛国心を教えることになれば、教育勅語も復活できると彼らは考えているが、前川さんは、現行の教育基本法でも教育勅語は復活できないと思うと明確だった。
国体思想には3つの側面があるという話も面白かった。1つは神話国家観、2つは道徳国家観、3つは家族国家観。1つ目の神話国家観というのは、天照大神から始まる国家観のこと。日本の出発は神話にあるというのは、日本の民族は特別な民族と言うことにつながる。2つ目の道徳国家観というのは、国の始まりは道徳でできているんだということ。天皇に忠節を尽くす、家では家長に対して忠誠を尽くすというもので、国民は忠と公に従えというもの。3つ目の家族国家観というのは、国家というのは一つの大きな家族、日本は天皇を中心とした一つの家族、つまり同じ一つの血統の中にある、みんな兄弟であるというもの。
これは、国家があって国民があると言う考え方になる。日本国憲法の個人の尊厳があって国民が代表者を選挙で選んで国をつくるというものとは真逆の考え方になってしまう。
道徳教育の具体的な話は面白かった。さすが、教育のことをしゃべってもらうと話が面白い。
講演が終わったのが3時50分だったので、急いで前川さんを駅に送った。なかなか楽しい1日だった。
ここからはぼくの勝手な感想になる。
日本国憲法の精神を身につけて、世の中を見ていくと多くのことが見えてくる。それほど日本国憲法の規定というのは、普遍的な原則を規定している。そう感じた。
同時に、前川さんの話を聞きながら「不易と流行」という言葉を思い出していた。道徳というものは、時代とともに変化し発展していく。道徳は、時代が変わっても変わらない「不易」ではない。人間が生きる規範というものは、時代の変化の中にあって大きく変わる。紆余曲折を経ながらも、人権を守る考え方は、世界人権宣言が第2時世界大戦後、ただちに世界に向けて発せられたように、個人の人権が尊重される方向へと変化を遂げてきた。この個人の尊厳の尊重を中心に人間の道徳観も変化してきた。道徳は、自然科学や社会科学の発展、社会の発展の中にあって大きく変化する。ただ大きな流れがあるとしても、道徳観は人それぞれというところがある。
面白いのは、個人の尊厳の尊重には、未来に残すべき「不易」があるということだ。変化の中からたどり着いた「不易」、これが個人の尊厳の尊重だろう。
明治以降の天皇制、明治以降の「国体」というものは、「流行」の中にあったもので明らかに「不易」ではない。江戸時代、家族という概念は明治の血縁家族のようなものではなく、もっと曖昧なものだった。戸籍がつくられ血縁関係によって家族が構成されたのは明治以降であり、明治憲法時代の「国体」というものは、1968年以降につくられたもので、明治維新から数えてもわずか77年間のみに存在した考え方だった。戦後が78年間なので、明治時代から第二次世界大戦の敗戦までの期間よりも、戦後が長くなっている。個人の尊厳の尊重をうたった日本国憲法の方が、歴史と伝統で明治時代を上回りつつある。
人為的につくられた「国体」に日本の歴史や伝統があるわけではない。ぼくは講演を聞きながらそういうことも考えていた。








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