石川啄木に思いを寄せて
真っ青な空が恋しくなってきた。
暖かい一日だった。冬が緩んできている。もうすぐ3月になる。
春に向かう季節は、希望を開くような感じを与えてくれる。
3月は別れと旅立ちの月、4月は始まりと出会いの月。
2月は、厳しい冬と暖かい春のせめぎ合いの月。
ぼくにとっては、自分の生まれた月であり親しい友人が生まれた月であり、妹と従兄が生まれた月だ。
また、小林多喜二が亡くなった月(2月20日)であり、志賀直哉と石川啄木が生まれた月(2月20日)であり、野呂栄太郎が亡くなった月(2月19日)だ。
好きだった啄木の歌をいくつか載せておこう。
青い空を眺めている歌がいい。
不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
ふるさとを歌った歌から
ふるさとの訛なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく
ふるさとの山に向ひて
言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな
啄木のこういう感傷的な歌が好きだった。
だが、啄木には社会的な批判を込めた歌がある。これらの歌も好きだった。
赤紙の表紙手擦れし
国禁の
書を行李の底にさがす日
地図の上朝鮮国に黒々と墨をぬりつつ秋風を聞く
今おもへばげに彼もまた秋水の一味なりしと思ふふしもあり
常日頃好みて言ひし革命の語をつゝしみて秋に入れりけり
この世よりのがれむと思ふ企てに遊蕩の名を与へられしかな
わが抱く思想はすべて金なきに因する如し秋の風吹く
秋の風われら明治の青年の危機をかなしむ顔なでゝ吹く
時代閉塞の現状をいかにせむ秋に入りてことにかく思ふかな