町が5000万円で用地を購入

出来事,かつらぎ町議会

通年議会の最初の会議が招集された。今日の議案は、用地の購入を軸にした補正予算についての議案だった。
日本共産党町議団は、今回のこの議案に反対した。
今日は、本会議の質疑で明らかになったことを報告する形で書いておく。本会議場の質疑は、公開されたものなので、テープの視聴も、議事録ができたときには、議事録の閲覧もすべてできることになる。
以下に書く内容のものが、議案という形で提出され、本会議場でこのような質疑を行わなければならないこと自体、異様なことだ。

今回の補正予算の中心は、町民農園を5020万円程度で購入するというものだった。この用地は、現在の町民農園の東側の用地を新に購入するというものだったが、これは、固定資産税の滞納を抱えた人物から、「購入して欲しい」という申し出があった用地を坪単価10万円で購入するというものだ。この人物の税の滞納は、延滞料も含めると4200万円を超えている。この人物の滞納の状況については、議案の審議に必要だということで、本会議で町長が答弁で明らかにしたものだ。

かつらぎ町が新に町民農園を取得する必要があったのかどうか、という点でいえば、あえて5000万円を超える用地を、財政調整基金を取り崩して購入するような必要性も緊急性もないものだった。目的は、現金を欲している人物に4600万円の現金を手渡すところにあった。
町長は、この問題については、あくまで町民農園の購入に大義名分があり、この用地は将来は、公共用に活用できるものだと述べた。町長としては、この大義名分を崩すわけにはいかないだろう。ここで踏みとどまらないと、用地購入の意味が崩壊してしまう。

今回の契約では、5020万円程度で用地を購入し、税の滞納の内400万円を納めてもらって、現金4600万円を相手方に渡すことになる。しかも、坪10万円で買ってくれるのであれば、自分が持っている用地のいくつかをかつらぎ町に寄附するというおまけがついてきた。寄附する土地には、借家が地面の上に乗っかっているものもある。
この契約の交渉を行ってきたのは、井本町長にほかならない。町長自らがトップ交渉を行って、取引したということだ。

この土地の持ち主は、かつらぎ町の公共事業に関わって、用地を買収するときにその土地に関する税の滞納を相殺する形で、本町と取引してきた。町は、税金の滞納を全部精算せずに買収のたびに現金を渡してきた。
本町の公共事業にかかる用地買収は、一昨年ぐらいに完了し、昨年からは、この方からの「用地を購入してほしい」という申し出に答えて用地を購入することとなった。用地購入の理由は町民農園を作り町民に貸し出しを行うというものだ。今回は、その延長として行われる用地購入だ。
昨年の用地購入の際に、日本共産党は賛成した。この時の判断は、誤りだったと思う。最初の町民農園の購入の際にも、党として反対すべきだった。

税金の滞納問題は、納税相談を行うが、交渉や取引を行ってはならないという鉄則がある。しかし、町長の交渉は、納税相談ではなくて、相手から求められた用地売却に応じて、町が用地を買収し、その際に滞納している税金を納めてもらい、相手に現金を渡すというものだ。税務課長は、答弁で話し合いに応じてくれている方については、地方税回収機構に事務を移管しないという答弁を行った。しかし、実行されているのは、この方からの申し出による用地の販売交渉であり、町当局による納税相談ではない。今回の用地購入の交渉をもって、納税相談を行っているとは言いがたい。結局町長は、現金を欲している人物のために用地を購入し、現金を渡すことに手を貸していると言わざるを得ない。

町長は本会議の答弁で、この方の用地の1つが第三者に譲渡されたことがあると答弁した。この第三者は指定暴力団の組員だった。今回用地の売却を申し出てきた方の過去の経歴は指定暴力団の元組長だった。現在、組は解散し、指定暴力団ではなくなっている。しかし、土地の譲渡の例でいえば、現在も指定暴力団とつながっている可能性は消えない。本町が渡そうとしている現金が、ブラックな世界に流れる可能性はあるのか、ないのか、こういう見極めもなされないまま、現金を手渡すということになる。

なぜ、現金の手渡しなのか。この方は、かなり税金の滞納を抱えている方なので、銀行の預金通帳に振り込まれたとたんに、金融資産として差し押さえられる可能性が濃い。そういう事情があるので、この方は、現金を手渡して欲しいと申し出た。井本町長は、これらの条件を全部飲んで現金を渡そうとしている。

質疑では、以上のような事実関係が明らかになった。ぼくは、この事実関係を踏まえて反対討論を行った。
町民の中には、税金の滞納で苦しんでいる方がいる。ぼくが相談に乗った中には、自宅の電話が差し押さえられた例もある。競売にかかると電話の債権は、2万円程度で落札される。自宅の電話がなくなれば、困った状態になるケースもあるのに、役場は、こういう財産まで差し押さえ、税金の滞納を埋めるために財産を税に換価している。6万円の給料が振り込まれたとたん、差し押さえた例もあった。本町は、この時、それがなければ生活できないということを認めてお金を返している。
力の弱い町民に対しては、徹底的に納税相談を行い、差し押さえを行っているのに、多額の滞納を抱えているこの方に対しては、積極的な納税相談を行わず(抵当権が張り巡らされている土地に対し参加差し押さえはしている)、現金を持っているかどうかの捜索などは行っていない。

相手の用地を購入してあげて、現金を渡し、税の一部を相殺するというような方法を取らないと税金の滞納も解決しない、という趣旨の答弁を井本町長は行っている。相手の方は、土地を手放す代わりに現金を受け取り、その現金の一部から税の滞納の一部を納めるというものだから、自分で現金を用意して税金を納めたというものではない。今回、町が購入する用地は、放任されていたものなので、この方の生活の糧になっていた土地ではない。井本町長は、トップ交渉を行う中で、自ら特別のルールを作ってしまった。税の公平の原則から言って、このような特別扱いは許されるのだろうか。

上記のようなことを書いていると異様な感じがする。これが、地方自治体の議会に出てくる議案なのか、という感じがある。しかし、このような議案が、現実に議会に出され、議案として審議された。
採決の段階になると、保守系の議員の方々は、みんな起立して賛成した。質疑も賛成討論も一切行わなかった。
反対したのは、日本共産党の議員と女性議員の3人だけだった。
ぼくは、この議案に対し、全議員に反対することを求め、反対することが、井本町長の名誉を守ることになると訴えた。議会が否決すれば、かつらぎ町は、税の滞納に対する事務の原則を守ることができるとも訴えた。

保守系議員の方々は、黙って賛成したので真意のほどはよく分からない。町長が議案として出してきたので、賛成せざるを得ないという事なのかも知れない。

東京都議会は、猪瀬知事の5000万円の現金受渡を追及して、辞任に追い込んだ。都議会の総務委員会は4日、計20時間の審議を行って猪瀬知事のこの問題を追及している。その上に立って百条調査委員会を設置し、追及しようとしていた。議会は年越しになる見通しだった。議会がこのような腹を固めた段階で、猪瀬知事は辞任した。すると、都議会は追及の矛を収めてしまった。
これが、都議会の流れだったが、普通、地方議会の委員会というのは、最初に決めた日程以上に委員会を開くことは少ない。都議会は、集中審議を行うことを決め、他の委員会や本会議をとめて委員会審議を行った。このような議会の運営の仕方は、国会の運営に似ていた。
東京都議会の審議は、日本共産党の側からいえば、百条調査委員会も開かれない極めて不十分なものであり、事実の追及という点でも、徳州会のマネーの流れを明らかにするという点でも極めて不十分だった。この問題は、国会の自民党にも波及する内容を持っていた。事態の本質を解明できていないという点では、極めて不十分であり、課題を残したまま幕を引こうとしているのは大問題だ。しかし、それでも知事を辞任に追い込むだけの追及を行ったことは一定の成果だった。議会における追及を保障したのは、是々非々の態度だろう。東京都議会における議会改革というものの内容は、全く知らないが、猪瀬知事への追及には、生きた議会の姿があると感じた。

地方議会改革の中で、是々非々で対応する議員は増えている。隣の橋本市を見てもそう感じる。しかし、本町は、オール与党という議会状況が変わった訳ではない。本町は、通年議会に移行したが、住民の目線から見て、おかしい議案があれば、本当に徹底的な審議を行う腹づもりがあるのだろうか。今日のような、驚くべき議案が出てきても、黙って賛成するような議会のままでは、自治体は変わらないし、質の低下は止まらない。このようなことが続くと、改革は絵に描いた餅になってしまう。議会は、チェック機能を果たすために存在している。この肝心のチェック機能を自分たちの手で放棄している状態では、本当の議会改革にはならない。


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出来事,かつらぎ町議会

Posted by 東芝 弘明