田楽味噌のソース
朝、ヨーグルトにヨーグルトソースをかけて食べることにした。冷蔵庫の扉の方にソースがあったので、少し多めにかける。電気をつけていなかったので、薄暗い部屋の中でソースが黒く見えた。
あわてていたので、立ったままスプーンで食べてみた。
「うん？」
いつもと味が違う。
あわててもう一度冷蔵庫を開ける。
冷蔵庫のソースを手に取って、ひっくり返す。
目に飛び込んできたのは、田楽味噌という漢字だった。
「えーっ、田楽味噌をかけてしまった」
思わず声が出る。
味噌の入っていたパッケージは、ヨーグルトソースのそれとよく似ている。
四角いパッケージの先にネジ式のプラスチックのキャップが付いている。ウイザーインゼリーのフタと同じようなものだ。冷蔵庫の棚に背中を向けて置かれてあったので、それを手にとってかけたのだ。
紫色も暗がりでは黒く見えるとか、もう少し今日はソースを多めにかけようとか、思ったのが全部裏目に出た。
目視と指さし確認。これが労働現場での鉄則だが、家庭では、流れ作業のごとく行為を進める。
仕方がないので、田楽味噌入りブルガリアヨーグルトを食べた。
飲み込むように食べるというコツが直ぐ分かった。舌の上で味あわない方がいい。
味覚をあまり感じないようにすれば、OKだ。
新しいレシピが誕生した。
人間の発明というのはこういう偶然性が幸いすることがあるに違いない。
偶然性がなければ、人間はこうもさまざまな食材を口にすることはなかっただろう。
ただし、あんまり真似しない方がよろしい。
ヨーグルトソースとしては、田楽味噌はあんまりあわない。
でも、好きな人はいるかも知れない。地球は広いから。
ぼくにとっては、朝から1つ新たな確信が生まれた。
ヨーグルトにお味噌はかけないように。
