雨ニモマケズ

雑感

ameni1

対話をしていると、さまざまな出会いがある。4年ぶりにしか会わない人がたくさんいるのに、みんな笑顔で迎えてくれることが多い。ブログを通じた出会いもある。対話していると、「ときどき見たことがある」という話が出てきたり、ものすごく遠方から連絡があったりする。
患者輸送車の件については、東京の大学の助教の方からメールをいただき、このメールがきっかけになって、今回の一般質問を組み立てることができた。
「常備消防がある自治体で、救急車が入らない地域を残しているのは、まさに命を格差を生み出すもの」、という指摘は、この方との交流から得た認識だった。一般質問を組み立てる過程でも、さまざまな人に支えられてきたと思う。質問準備そのものが人との交流になってきた。現場に行く、人に会う、という質問を作る姿勢は、生きた現場でがんばっている人に会うことであり、自分の中に感動を積みかさねることだった。

公務員への批判は強いけれど、公務員の現場で心血を注いでがんばっている人はたくさんいる。新たな道を切り拓いてきた公務員の方々は、自信に溢れ、生き生きしている。仕事に誇りをもって輝いている人との出会いは、ぼくの人生も豊かにしてくれる。地方自治体という仕事は、ものすごいマルチビジネスだと思う。人間社会のものすごく多面的な姿を反映して、仕事が成り立っている。
住民から電話を受けたら、イノシシやシカの補足に立ち会うために山に入っている職員がいる。屠殺に年間ものすごく立ち会い、アライグマを安楽死させている人もいれば、ごみの苦情を延々と聞き、現場に足を運んで頭を下げている人もいる。子どもの虐待の修羅場に入っていき、子どもの命を守るために働いている人もいる。地域住民を対象に地域の健康を守って走り回っている人もいる。保育所や幼稚園で子どもの成長に心を砕きながら子どもを見つめている人もいる。差し押さえの手続をして、滞納を処分している人、生活保護者の精神的な苦しみに延々と付き合いながら生活保護の申請に心を砕いている人もいる。道路や溝の改善要望があれば、現場を確認し話をし、要望に応えようとしている人もいる。これらの努力は、すべて事務によって支えられているので、中には、毎日電卓とコンピューターにしがみついて、計算に明け暮れている人もいれば、財源を確保するために知恵を絞り、組織を管理しようとしている人もいる。

公務員は全体の奉仕者。住民に対して献身的に働く。仕事への誇りは、この任務の中にある。地方自治体で働くことに対し、おそらく公務員になりたいと願っている若者の多くは、具体的なイメージに乏しいように思われる。公務員の中でも、教師や警察官や消防署員などになると、具体的なイメージを持つ人も多いだろうが、地方自治体職員となると、姿はぼやけてしまう。地方自治体は、子どもが生まれる前から仕事が始まり、一人の人間が死亡してもなお、その人に関わる事務を持っている。人間の一生以上の幅をもっているといっていい。市町村という地方自治体こそ、住民へのサービスが具体的な姿を持って実現する所になる。国で計画されたもののほとんどは、地方自治体で実現する。

地方自治体職員は、一生懸命働けば、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に近づく。ここに喜びも悲しみも苦労もある。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

一所懸命に働くか、それとも力を抜いて時間を過ごすか。地方公務員の分岐点はここにもある。力を抜きっぱなしの人にも「雨ニモマケズ」を贈りたい。


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雑感

Posted by 東芝 弘明