『ロードショー』、『ホームにて』

雑感

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『ロードショー』をどこで聴いたのだろう。
いつの間にか、すっかり全曲を覚えて歌えるようになっていた。情景が浮かんでくる曲が好きだという点で『ロードショー』は、まさに物語が目に見えるような曲だった。
昔の映画館は、一度入ると何度でも映画を見ることができた。指定席というものがない。映画の途中で入場するのもOKだった。そういう時代の映画館だ。赤い扉というのも一般的だった。

1976年にヒットした古時計という名のデュオは、わずか1年活動しただけで解散している。メンバーの一人西田さんは現在人材派遣会社の社長をしているが、古時計解散後28年経ってジェームス西田としてソロ活動を再開している。

「情景が浮かんでくるこの歌が好きだ」と言うと
「単に情景だけやんか」
と言われたことがある。
情景描写だけで失恋の切なさを表していいなと思うのだけれど、情景描写の深さという点でいえば、中島みゆきさんの『ホームにて』の方が深いと思われる。
一番のラストで汽車のドアが閉まることを歌った後で、2番の冒頭、ドアが閉まるところを見ているシーンが繰り返される。さらに2番の冒頭の歌詞は、一番の中頃でも歌われている。
このリフレインの仕方によって、汽車のドアが閉まるシーンがスローモーションのように浮かんでくる。この繰り返し方に多くの人が心を奪われるのだと思う。

『ホームにて』をはじめて聞いたのは19歳の秋、和歌山大学の大学祭だった。教育学部か経済学部の女性ボーカルのグループが、夕暮れの、かすかに西日が残る闇の中の、シルエットしか見えない舞台で、この歌を優しく歌っていた。『ホームにて』は、1977年、『わかれうた』のB面に収録されている。
『ホームにて』は、ぼくの嫁さんがバンドを組んでいた頃歌っていた曲でもあった。2度ほどカラオケで歌ってもらったことがある。丸い柔らかそうな手をした嫁さんは、手と同じように柔らかく歌ってくれた。
この歌詞が好きなのはどうしてだろう。なんだか川端康成の『雪国』の冒頭のシーンが重なっていく。白い煙と白い雪とは違うのに。

雑感

Posted by 東芝 弘明