『As time goes by』

雑感

カサブランカ

「何か昔の曲を弾いて、サム」
「はい。わかりました」
黒人のサムがピアノを弾く。彼女の弾いてほしい曲ではない。
「リックは」
「今夜は見てません」
「いつ戻るの」
「今日はもう帰りました」
「いつも早いの」
「“ブルーパロット”に女に会いに行きました」
「嘘がへたになったわね」
彼女は優しく言う。
「会わない方がいいです」
彼女は優しく訴えかける。
「サム、あの曲を弾いて」
「何のことだか」
「お願いよ。『時の過ぎ行くままに』よ」
気持ちがこもる。
「どんな曲か忘れました」
「こうよ」
彼女はハミングをはじめる。
サムは彼女に合わせてピアノを弾き始める。 
「サム、歌って」
サムが歌い始める。
彼女の目が次第に潤んできて、目が光を受けてキラキラ見える。昔を思い出すようなうっとりした表情になる。
白い背広に蝶ネクタイをした男が部屋の中に入って来た。サムの歌を聴くなり、早足でやって来てピアノに手を置いて言う。
「その曲は禁止だぞ」
サムは目配せをする。男は彼女に気がつく。涙を溜めた彼女の目が美しい。2人は見つめ合うが言葉が出ない。

映画『カサブランカ』でリック(ハンフリー・ボガート)とイルザ(イングリット・バーグマン)がリックの経営するナイトクラブで再会するシーンだ。
サムが歌った曲は『As time goes by』。
1942年に封切られた映画。イングリット・バーグマンをすごく綺麗に撮った映画だった。
この曲を知ったのは『カサブランカ』の映画をビデオで見たときだ。
1986年だっただろうか。ある時期を境にレンタルビデオを見るようになった。昔の映画に導いてくれたのは、和田誠さんの『お楽しみはこれからだ』という本だった。和歌山市の宮井平安堂で買ったような記憶がある。この本に導かれて見た映画は多かった。
この本の第1集には『カサブランカ』の紹介がある。

「君の瞳に乾杯」

リックがグラスを持って、イルザの瞳を見つめて言うセリフ。高瀬鎮夫さんが、Here’s looking at you, kid.にこの訳を付けた。映画史に残る名セリフだと思う。


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雑感

Posted by 東芝 弘明