イカをさばいた
「東芝さん、こんなん食べてくれやん?」
「なんですか」
「雑賀崎の漁師の舟に乗って買ってきたんやけど」
奥さんが手に持っていたスーパーの袋に入っていたのは、イカとタコとエビだった。
「イカはね」
奥さんはそう言って、イカの袋を開けて、イカを1杯取り出した。
「目を上にして、ここにハサミを入れて、こう開くでしょ」
手際がいい。
「この端にね、骨があるんでこうやって取り出して」
「皮をむかなあかんのと違いますか」
「皮はね。イカの頭から下にむくと取れるから」
「なるほど。はい、いただきます」
雑賀崎の漁師の舟に魚を買いに行き、とれたての魚介を買ってくるのだという。
「買ったときはみんな生きてるんよ」
旦那さんはそう言った。
新聞折り込みに行って、支払いを済ませたときの会話だった。演説会の折り込みチラシを、演説会の前日に入れるために持って行ったときのことだ。10年以上のお付き合いになる。行ったときにいろいろな話になる。今日も少し憲法改正の話になった。
超生ものをもらったので、自宅に戻って調理をはじめた。
イカは手のひらサイズよりも少し小さいものだった。大きいイカの方が皮がむきやすい。
イカはイカそうめんにして、エビは唐揚げにした。タコは茹でてキュウリと混ぜてタコ酢にした。
思わぬごちそうになった。
「美味しいね」
娘はうれしそうだった。