トンネルの向こうは大きな街だった

雑感

かつらぎ町役場の玄関ホールに森林組合が作成した木製のベンチがあり、そのベンチの後ろの壁にパンフレットを置くラックがある。そこに姉妹都市である和泉市のパンフレットもある。人と待ち合わせのときに和泉市のパンフレットを読んでみた。
「和泉市で田舎暮らしをしてみませんか」
こういうフレーズが書かれていた。和泉市は面積84.9km²、人口約18万6000人。大阪市のベッドタウンとして「平成17年から平成22年の比較で大阪府下市・増加率1位を記録するなど、今もなお宅地造成が活発に行われている。よって市では、新しい道路や施設の整備、企業誘致や観光振興など、様々なサービス改善に力を入れている」(ウキペディア)と書かれている。
「トカイナカ」という言葉は和泉市が打ち出したもの。都会なのに田舎という意味だろう。「東洋経済新報社「都市成長力ランキング」にて全国第4位となった」(ウキペディア)とも書かれている。

“大阪へのトンネルが抜けたらかつらぎ町は大阪への通勤圏となるので、かつらぎ町で住んで大阪へ通勤してほしい”
町長はこういう意味のことを繰り返し語っているが、この話は、姉妹都市である和泉市の姿をきちんと把握した上でおこなうべきだろう。トンネルが抜けたので、かつらぎ町が、和歌山県内の中で一番立地条件がいい町になったというのは間違いのないところだ。しかし、だからといってこの条件で住宅開発が進むというのは、短絡的に過ぎるだろう。
バブル経済の中心には、地価の暴騰があった。サラリーマンの多くは、マイホームを夢に見ていたが、大阪圏内では住宅に手がでないという状況が広く生まれ、橋本市や岩出市に北部地域では人口が集中した。しかし、現在は、状況が一変した。地価の暴騰は発生する余地がほとんどなく、住宅は大阪府内でも買えるようになり、橋本市からの人口流出、大阪府内への人口回帰の現象は止まらなくなった。不便な橋本市から便利な大阪へという傾向に拍車がかかる。
和泉山脈という壁で見えなかったが、トンネルの向こうには、大阪市内のベッドタウンとして人口が急増している和泉市があり、ここに住めば、大阪市内に電車で30分という条件が手に入る。和泉市にはかなりの企業立地地域があり、雇用の創出という点でも大きな力を持っている。和泉市に住めば、仕事場も大阪への移動も便利に実現でき、同時に田舎暮らしもできるということだ。

ぼくは、井本町長にかつらぎ町全体を田舎暮らし推進の町に、と提案してきたが実現していない。田舎暮らしは、天野や新城、四郷などだ。妙寺や笠田は田舎暮らしというイメージではないということだった。「井の中の蛙、大海を知らず」だ。
どんどん人口が増えている和泉市は、田舎を自覚して、和泉市全体で「トカイナカ」という取り組みを行っている。完全に発想という点で負けていますよね。ららぽーとやコストコという大きなショッピングモールがあり、かつらぎ町にとっても買い物のできる場所ができたのだけれど、和泉市は生活するにも便利で大阪の多方面に移動できる魅力を兼ね備えた街だということになる。

姉妹都市である和泉市がどのようなまちづくりをおこなってきたのか、どういう変遷をへて今の姿になったのかをきちんと把握して対応していかないと、かつらぎ町のまちづくりはおぼつかないと思われる。トンネルの向こうに橋本市よりも魅力的な地域があり、更に人口増を生み出す要因をもっているところがあるのであれば、かつらぎ町は、和泉市にはない魅力を兼ね備えたまちづくりをおこなうべきだろう。もちろん和泉市から学ぶことはたくさんあるだろう。トンネルが抜けたらかつらぎ町は便利になるので人口も増えるかも知れないというような根拠のない幻想はきっぱり棄てる必要がある。

「井の中の蛙、大海を知らず、されど青い空を知る」ぐらいの視野を持つべきだろう。井伏鱒二の『山椒魚』の視野に陥ってはならない。

雑感

Posted by 東芝 弘明