人口減少の中での水道事業
橋本市で水道についての学習会があり、専門家の方に来ていただいて話を聞かせてもらった。ぼくたちが、昨年から今年にかけて検討してきたことは、基本的に正しかったことが、あらためて明らかになった。自分たちの見解と態度に自信が持てた。
アセットマネジメントに基づく「施設再構築計画」は、市民に限界を超える負担を強いるものになってしまう。いまの水道の現状は、人口減少社会の中で、水道料金収入で水道施設の維持管理ができない時代になったというお話しだった。
水道の配管の技術について詳しい人の話には説得力があった。現在の技術の中には、100年もつような配管もあるという話や耐震がほどこされた配管の仕組みや実際の強度についても話があった。
そもそも100年近くの「施設再構築計画」というものが、精査されて作られたものなのかどうか。情報開示を求めていけば、それらの実態が明らかになってくるし、情報開示を求めながら市と住民が一緒になって考えて答えを出す問題だということが、繰り返し強調された。
5年とか10年スパンで、だましだまし水道の改修工事を行いながら住民負担が伴わないよう努力して、それでもなおかつ改修費のために料金値上げが必要であれば、市民と行政がどう負担するのかを一緒に考えるべきであって、早急に水道料金を値上げするのは、いかがなものか。まだまだやるべきことがあるのではないか。ということだった。
まさに「急いては事をし損じる」という状況にあることが明らかになった。
橋本市の水道事業における水道料金収入は12億円程度。この料金収入では年間平均で9億70000万円の再構築事業はできないので、20㎥で22%強の値上げを行って、収入を4億円ほど増やし、建築費を確保しようという計画が進められている。しかし、人口推計では40年後に橋本市の人口は55%減少して3万4000人程度になる可能性がある。市は、努力してこの人口減少を4万6000人程度にくいとめようとしているが、計画が実現しなかったら人口は減少してしまう。人口減少の中で100年近く年平均9億3000万円もの水道の建築工事を続けていくことは不可能だ。真面目に計画を実行したら何度も何度も水道料金を引き上げる必要がある。
しかし、負担には限界があるのと、水道料金を引き上げても、市は予定する収入が得られない事態に直面する。水道料金が高くなったら、節約しないと生活が成り立たないので、使用水量が減ってしまい、計画したように料金収入が増えなくなるようだ。そうなると高い水道料金に設定しても、財源が確保できなくなる。高い水道料金は、人口減少に拍車をかける要因にならざるを得ず、ますます住みにくいまちへと橋本市は変質してしまう。こんなことは誰も望んでいない。
全国的に同じような老朽化が今後明らかになってくる中で、水道の再構築の計画がすすむことになる。人口が減少する中で水道工事を担う人が、今後少なくなることが当然想定されてくる。そういう中で橋本市が掲げるような再構築計画を、全国すべての自治体が実行できるのかといえば、とてもムリではないか、ということも講師の方は指摘された。
水道の施設建設は、高度経済成長の時期から始まって拡張工事を行いながら維持・管理・更新が行われてきた。経済が成長している時代の老朽化した施設の更新は、国民の所得が向上する中で行われたので、水道料金を引き上げても所得も上がったので住民が支えることもできたし、人口が増えてきた自治体では、拡張工事と維持・管理の費用もまかなうことができた時代だった。こうやってできた水道施設を、今度は人口減少の中で維持・管理・更新していくことになる。
「もはや水道料金収入で水道を維持できる時代ではなくなってしまった」
という言葉が現実味をもって迫ってくる。
大きな視点でこういうことを考えてみると市の930億円もの建築工事が実行不可能な工事になることは明らかなのに、遮二無二この方向に進んでいくのは、大きな過ちだと言わなければならない。
とても建築工事の資金が確保できないのであれば、現在の「施設再構築計画」とは違う別の道を探る必要がある。どのような道があるのかは、じっくり腰をすえて、施設の確認を行いながら考え直す必要がある。
市は、市民を置いてきぼりにして、計画を実行するのではなくて、あせらずに100年を見据えて、地道に検討しながら水道に施設の維持管理を行いつつ、自治体と国との負担割合を変えるよう国に働きかけることが重要だ。
市民がどんな負担ができるのか。これも水道の維持管理にとっては大事な視点になる。生活する市民に心を寄せ、信頼して話し合う姿勢を示さないと水道事業はうまく行かない。
命にかかわる水だからこそ、「焦りは禁物」ということだろう。