カブのチェーンが外れた

出来事

読者の家の前に大きな白い乗用車が止まっていた。仕方がないので、道の路肩にカブを止めて、日曜版をポストに入れに行った。車の横を通りかかったときに、斜めになっていたカブがこけてしまった。ひっくり返ったカブはエンジンは止まらず、動いていた。ガソリンが漏れる心配があったのでカブに戻り、カゴから外に出た日曜版を拾い上げて、車体を起こし、エンジンを切った。
配達を終えて、カブにまたがってエンジンをかけ、ギヤを入れた。
しかし、カブは前に進まない。
「チェーンが外れてるで」
白い車から背の高い細身の男が降りてきた。
「そうみたいですね。でも何かの拍子に元に戻りませんか」
「だめやろ。カバーの中にチェーンが入っているし。ここ開けんとはめられやんで」
この一言であきらめがついた。
場所は、笠田高校の東だった。
仕方がないので、カブを押し歩いて日曜版を配ることにした。
佐野と西大谷の境にある事務所に戻るためには、まだ、かなり日曜版を配る必要がある。
シバモリまで、カブを止めながら、歩いて配ることにした。何軒か配ってカブを押しという方法で、シバモリ店の前まで来た。
中佐野は歩いて配った。10数分間歩き回ってカブを止めた場所まで戻った。
佐野までカブを押して帰ろうとすると、汗が噴き出してきた。佐野住民会館に向かう道は上り坂になっている。カブの重さが腰に負担となって跳ね返ってくる。息が荒くなってきた。
坂の途中で、20秒ぐらい休憩した。長く休むと嫌な気持ちになるので、ごく短時間、一息ついた。
事務所に着いた時には汗だくだった。事務所の鍵を開けて残っていたコーラを氷を入れたコップに入れて、一気に飲んだ。ハアッ。しんど。
暗い町並みには、ほとんど人が歩いていない。悪戦苦闘の姿を人目にさらすことがあんまりなかったのは、不幸中の幸いだった。
結局、普段よりも30分、余計に時間がかかった。
車に乗って自宅に戻ったときも、顔から汗がまだ噴き出していた。
カブのチェーンが外れたのは、はじめてだった。
ハプニングは、いつも急いでいるときに起こる。急ぐと余計に時間がかかる、ことが多い。


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出来事

Posted by 東芝 弘明