国民生活を立て直せるかどうか。ここに焦点がある。
経済学者の金子勝さんのインタビューが、「赤旗日曜版」に掲載されていた。失われた30年。本当にそう思う。日本は、バブル崩壊後、経済政策的に迷走をするようになったが、一貫して大企業の利益優先、アメリカの要求に沿って経済運営をしてきた。その結果として、日本経済が発展しなくなり、国民一人当たりの所得でいえば、OECD加盟国の中で25位という状況になった。日本は最早経済的に先進国とは言えない状況になった。
「井の中の蛙大海を知らず」青い空を知るなんて呑気なことは言っていられない。国民の中に生活苦が生まれ、格差と貧困の拡大の中で将来設計を立てられない状況になった。その原因もはっきりしている。
ここからは、金子勝さんのインタビューへの感想ではない。雇用をめぐってこの30年間、何が起こってきたのかの簡単な認識をぼくなりに示したものだ。
労働者の賃金を切り下げ、非正規雇用を拡大し、正社員を減らしたことによって、雇用の不安定な状況を生み出した。善意でいえば、終身雇用ではなく雇用の自由化を図って、労働者が自分のキャリアを生かしてスキルをアップして生きるという考え方に舵を切ったということだ。これは、アメリカの雇用形態を真似して、日本の終身雇用形態を壊したというものであり、ジャパン アズ ナンバーワンと言われた雇用形態を変革することが、日本経済を発展させると信じた変革だった。
なぜこの改革がうまく行かなかったのか。それは、アメリカと日本の労働者の社会的な地位の違い、資本と労働者の関係の違いによる。アメリカは、仕事を変えても今までのキャリアが生かされ、賃金が減らないという傾向にある。それは、労働組合による闘いがあって、労働者の権利を守る仕組みがあるからだ。日本のように働く者の権利が守られておらず、終身雇用制の流れから外れると労働者にとっては不利になる仕組みや、働き方についても、残業の規制さえできておらず、労働組合が形だけの会社も多く、働きながら亡くなっていくという仕組みの中で雇用の流動化を図ったら、圧倒的に労働者の不利になるからだ。
アメリカによる従属の中で、日本の労働組合の多くは、資本との間で労使協調路線をとるようになった。その結果として、労働者側に圧倒的に不利な労働条件が広がっていった。その結果、労働基本法でさえ守られない状況が生まれた。
働く者の賃金の低下、社会保障の破壊と負担増、この2つの改革によって日本社会の内需が冷え込んでいき、経済発展しない国になって、この30年間、労働者の賃金は減少傾向になった。その結果、先進国の中では相対的に後進国になるような状況が生まれた。
自民党の30年来の一貫した経済政策を転換しないと、日本国民の生活は守れない、年金などの社会システムも守れないところまで日本経済は悪化している。自民党流の経済政策の転換は、選挙を通じて行う必要がある。野党と日本共産党の躍進で経済の行き詰まりを打開することが、国民生活のレベルで求められている。参議院選挙の最大の焦点は、国民の暮らしを立て直すかどうか。ここにあると思われる。



