マイナンバーカードと4つの番号
昨日、デジタル化法案のことを調べ、文献を読み込み、さらに『あれからどうなった? マイナンバーとマイナンバーカード』(黑田充著)を読みはじめると、面白かった。結局7時過ぎまでこの本を読んで、原稿を書き始めたのは午後8時過ぎとなった。今から書き始めて何時に終われるのか、かなり不安だった。しかし、1つ目の質問原稿ができたとき10時だったので1時過ぎには終われるかも知れないと思った。展望が出てきた。
マイナンバーとマイナンバーカードとは違う。マイナンバーは、国民1人1人に対して国が割り振った12桁の番号で、この番号を通じて串刺しにできる情報は確実に増えている。政令が変わるだけで幅は広がっているが、今回の法案が可決されると、マイナンバーの活用範囲は、国家資格と運転免許証、健康審査まで広がり、税と社会保障、災害関係という範囲を大きく超えてしまうものになる。こんなことは国民合意になっていないのではないだろうか。
マイナンバーは、法律さえ変更になれば、どんどん対象を広げることができ、国民の知らないところで個人の情報を縦横に把握できるようになる。では、マイナンバーカードはどんな役割を担うのだろうか。一つは、国民に対してマイナンバーカードが便利だと思わせるところに一つの入り口がある。マイナンバーカードを持っていれば、カードの提示だけで申請がショートカットできたり(本当は、個人番号を国が法律の範囲で使えるようにしているので、住民が番号を提示しなくても、行政内部だけで個人情報を閲覧できる)、マイナポータルで自分の情報を串刺しにして閲覧できる。
自分の情報をいつでも閲覧できるのは便利だと思う。串刺しにできる情報が増えれば増えるほど閲覧できる情報も増える。税、社会保障関係の情報、住所歴、戸籍などが見えるようになる。今回の法改正が実現して数年経つと、健康診査の状態や運転免許証の状況、国家資格についても見えるようになる。運転免許証が見えるようになれば、交通違反の履歴も見えるようになるかも知れない。
実は、マイナンバーカードには、後2つ、番号を自分で設定することができる。それがマイナンバーカードによる電子証明機能であり、これには2つの番号がある。一つが「利用者証明用電子証明書」(4桁)、もう一つが「署名用電子証明書」(6〜16桁)。4桁の番号は、コンビニなどで住民票などを取得するときに使うものになる。もう一つの「署名用電子証明書」は、確定申告やオンラインバンキングなどの民間オンライン取引の登録などに利用できる。
「署名用電子証明書」は、民間サービスの利用に道が開かれている番号だ。15歳以上の年齢にならないとこの番号の設定はできない。めんどくさいことにこの2つの番号の有効期限は5年間だ。忘れてしまうとめんどくさいことになるし、有効期限が過ぎると使えなくなる。それでなくてもIDや暗証番号管理に頭を悩ませているのに、かなり重要なことになるマイナンバーカードの番号管理が各個人にのしかかっている。ぼくなどは膨大なIDとpasswordをパソコンやスマホ上で管理しているので、情報が盗まれたら大変なことになる。4桁の暗証番号は覚えられるかも知れないが、6桁から16桁の番号は、どこかに控えておかないと覚えるのは無理だろう。マイナンバーカードには記載されないので、国は一体どう管理せよというのだろう。
国は、マイナンバーで管理できる情報を広げながら行政や民間企業にマイナンバーカードの活用へと道を開くよう促している。利用者証明用電子証明書の活用については、規制がほとんどないといわれている。行政と民間のサービスが広がるほど、マイナンバーカードで扱えるものが増えて便利になるが、増えるたびに利用者証明用電子証明書が扱うサービスが増えることになる。
さらにもう一つ、マイキーIDという番号がある。これはマイナンバーカードを取得したら5000点のマイナポイントがもらえるというときに使わなければならない番号だ。「マイキーID」はマイナポイントを予約するときに取得する。この「マイキーID」は、各種カードの統合に使われるという構想だ。図書館カード、民間の会員カードなどを「マイキーID」に統合してもいいことになっている。
マイナンバーカードが便利な一枚になればなるほど、紛失したら大変なことになる。2つの証明書の番号は、ICチップに入っている。入り口の4桁のpasswordが把握され、6桁〜16桁の「利用者証明用電子証明書」が把握されたら、マイナポータルにアクセスできるようになり、そうなれば「マイキーID」も把握できるようになるのではないだろうか。サービスが広がれば広がるほど、被害が大きくなることが予想される。紛失が重大な損失に繋がる時代は目の前に来ているかも知れない。
民間のセキュリティの甘さから、個人の「利用者証明用電子証明書」やマイキーIDが流出する時代も来るだろう。このレベルでなりすまされただけで大変な被害が発生する。国のセキュリティが万全であっても、民間のルートから情報が大量に流出することがあるので、安心はできない。
デジタル庁の計画は、最初から民間の企業が行政がマイナンバーで串刺しにする個人のデータの集積であるビッグデータを活用することを前提に推進されている。法案が可決したら9月1日に発足する予定のデジタル庁は、500人体制の内閣府直結の「庁」だが、事務次官級のデジタル監は、民間の人間になるといわれており、500人の内100人から150人は、民間会社に身分を置き、民間会社からも給料の補填がある臨時職員になると指摘されている。
ビッグデータだけでなく、国民の個人情報が民間に手渡されたり、警察庁の手に渡って個人個人をプロファイリングすることができる。個人情報によるプロファイリングの誘惑に権力は勝てないのではないだろうか。
すでに、警察庁は、マイナンバーによって名寄せされた個人情報を捜査上の必要性があれば見ることができるようになっている。しかも、閲覧情報は、マイナポータルの履歴には残らないようになっている。国民への監視は、捜査上の必要性があればできるということだ。SFのような監視社会が、私たちの目の前に到来しつつあるのではないだろうか。
マイナポータルには、個人の状態にきめ細かく対応した情報の提供を行うことが予定されている。個人の状況にきめ細かく対応した情報の提供は親切なのか、それとも監視なのか。考える必要があるだろう。
マイナンバーカードの取得は、「5000点のマイナポイントがもらえるので、お得ですよ」という話ではない。このまま行ったらいつか、マイナンバーカードは強制付与になりかねないが、現時点でぼくは、少なくとも、免許証との統合や個人の健康診査情報との統合も行われることを明らかにして、個人が作るのか作らないのか、自由に判断できるようにすべきだと昨日の質問では求めた。マイナンバ-カードの取得を推進する立場であっても、この態度を取るのは行政として当たり前だろうと思う。
ぼくが上記に書いたことは、ぼくのうがった見方ではない。国会では600ページを超えるデジタル化の法案が6本審議されはじめている。こんな膨大な法律を短時間で通そうとしているのは尋常ではない。自治体の仕事が統一の様式でデジタル化される法案もこの中に入っている。こんな膨大な重大問題をマスメディアはほとんど報道していない。ここにも日本のメディアの異常さがある。
個人情報がこのような形になろうとしているときに、個人が自分の情報をコントロールできる権利と個人情報の削除──「忘れられる権利」を確立することが急務になっている。悲しいことにこの法案は出されていない。日本政府は、この法案は作りたくないらしい。デジタル法案の廃案と野党による政権交代。これがどうしても必要になっている。











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