議員定数 14人から13人に削減

雑感

議会本会議が行われ、議員定数は、14人から13人に減員された。提出者は、最初議事進行で答弁者を賛同した議員に広げるよう求め、議長が許可することになった。これは議会運営上できる話だった。
ぼくは、議会基本条例の第3条の(4)「議会が議論の場であることを十分に認識し、意思決定に当たっては、議員間の自由闊達な議論を重んじ、論点及び争点を明らかにするよう努めなければならない」と第20条の3「議員定数を議会が改正する場合は、明確な改正理由を付して委員会又は議員が提案するものとする」にもとづいて「現下の社会状況を鑑み、議員定数を削減する」というだけの提案理由だけでは、基本条例の規定を踏まえたものになっていないこと、論点、争点も明らかになっていないのでそれを明らかにするよう求めた。

答弁は、質問に答えないものだった。問う中で提案者が語ったのは議会の活性化と住民の意見を議会に反映させるというものだったし、論点と争点については、総合的に判断して答えを出したというものだった。議会を活性化すること、住民の声を議会に反映するために議員定数を削減するということだった。

提案者が先進事例として紹介し、議員全員でビデオと資料を見た山形県庄内町の議員報酬と議員定数の事案について、提案者は結果がどうなったのかを把握していなかった。ここはほぼ4年かけて審議をして、論点と争点については長い報告書を作成し、昨年12月に定数を2人削減し、今年3月に報酬を2万5000円引き上げて24万円にするという結論を出していた。ここは、町長が議員報酬を引き上げるのであれば定数を減らすべきだという論に縛られ、その線にそって議論をせざるを得ないという形になったようだ。ただし4年かけ、住民の理解を得られるよう努力し、論点や争点を明らかにして報告書を作成した取り組みからは学ぶものがあった。わざわざ、この庄内町の事例を紹介したのは、今回の提案者だった。しかし、この事例から何を学んだのか分からないような姿勢だった。

同時に本町は、今回、定数と議員報酬を切り離して考えられる条件にあった。議員定数・報酬調査特別委員会が作られる前に、複数の議員から定数を削減して報酬を引き上げる案が示されていたが、調査の過程の中で、町村議会議員の議員報酬等のあり方最終報告の概要が資料として出された。この報告書には、「議員報酬と定数は別の論理。報酬と定数は、それぞれを独自の論理で説明しなければならない」とあった。特別委員会では、この考え方が重要だとなった。にもかかわらず、この点を明確にしようと提案しても、定数と報酬を別々に考えるということに対して結論を出すという議論は行われなかった。
ぼくは質疑の中で「議員定数を削減して、議員報酬を上げるという意見や案は、意味をなさなくなったのではなかったか」と問いかけたが、これに対しても明確な答えは返ってこなかった。

議会モニターとの懇談会では議員定数の削減を求める意見はほとんどなく、定数削減を求めた区長会との懇談会でも、定数削減を強烈に求めた区長はそんなに多くなかったし、議員報酬については少なすぎるという意見が多かった。しかし議会が行った住民アンケートでは、定数14人に対して現状維持がよいが35.3%、削減すべきが40.8%だった。一方、報酬を上げてもいいというのはわずか11.7%だった。議会の活動が見えている議会モニターと区長会と住民の意識の違いが鮮明になるような結果だった。ぼくは、「この結果からすると、報酬を上げようとしているので、アンケートによって定数削減という答えを出したとは思えないので、何を根拠に定数削減を行うのかも尋ねた。これに対する答えは総合的に勘案したということだった。

提案者の答弁が的を射ないものだったので、ぼくは賛同者も答弁に立てるようにしていたので、誰か答弁してほしいということを何度も求めた。しかし、わざわざ答弁できるとしていたのに誰も答弁してくれなかった。

結局、今日の質疑では、議員定数・報酬調査特別委員会は、最初に議員定数の削減ありき、報酬の引き上げありきという姿勢を議会全体に押しつけただけで、多数の議員による共同の議員提案でもこの委員会の審議を反映して、まともな提案にはならなかったことが浮き彫りになった。

議会には、最初から意見の違いがある。争点のある会議が議会の特徴だ。この意見の違いを踏まえて、論点を整理し争点を鮮明にする努力が必要であり、議会基本条例はこのことを求めている。
論点や争点を鮮明にするための協議というのは、出された意見を提案として受け止め、一つ一つを審議の対象にして議論をするということが必要になる。それを実行して初めて論点や争点が鮮明になる。そのような議員間討議(協議)が行われて初めて論点が明らかになり、一致点も生まれ、同時に一致しない点は争点として確認されるようになる。

争点が最初からある議会の中で協議をどう組織するのかという点で委員会の運営は、極めてまずかった。モニターの懇談会をすれば感想をもとめ、一通り議員が感想を述べたら終わり、区長会との懇談会も同じ。アンケートについても感想を一通り述べたらおしまい。最後に態度を決めた議員が自分の意見表明をしたら採決。しかも採決の上に採決を重ねて最終的には意見がバラバラになって少数意見が何種類も出ておしまいという結果になった。
特別委員会における議員定数と報酬についての所管事務調査でこういうことが起こったので、どうしてこのような採決をしてはいけないのかを会議規則を踏まえて明らかにする努力を試みた。──議会の委員会では、論点を採決という手法で絞ることはできない。それをやってしまうと採決した議員が意見を変更することを認めていないので少数意見がたくさん生まれて審議が終了してしまう。議会の採決は議員が取った態度を訂正できないという鉄則があるので、議会の議論では議論を徹底的に尽くした上で、最終的に採決するという方法を採る必要がある。──このことをきちんと確認しておくのは意味があると思ったので、会議規則を配布してもらい、どこに誤りがあったかを確認したかったが、会議規則の配布を拒まれたので確認することは叶わなかった。
所管事務調査では、採決のやり直しが可能だという町村議会議長会からのアドバイスがあったので、ぼくは、前委員会の採決をこすべてリセットしてやり直すことを提案した。多数の議員は議員定数削減、報酬アップのことを確認した最初の採決は残したいというので意見が一致しなかった(この採決を残してもこれだけの採決になってしまう)。
このときの委員会の議論は、ぼくが発言するたびに副委員長から異論が出され審議が進まなかった。1時間ほどこういう論戦のようなやり取りが行われ、その結果、この会議では何も一致点が見いだされず、前回の委員会の結果を結論とするということになった。これが委員会での出来事だった。

ぼくはこういう委員会の中で、いくつも提案を行った。コロナ禍の中でも参考人招致はできるとも提案した。提案の多くは議題にならず、ときには委員長と副委員長が反論するという形もあった。
委員会における委員の提案は重い。1人でも議案を提案できる。この精神を生かすためには、一人一人の議員の意見や提案を大切に扱う必要がある。このことは最初に確認したが、そういうことを大事にするという運営は行われなかった。こんなことを積み重ねていくと、会議は意見の出にくい会議になった。提案すると反論に出会うのでぼくも最後の方の会議では黙っていた。黙っていると今度は、運営方法を間違って、採決を細かく行って身動きがとれない結果となった。

結局、最初に3月末までに結論を出すというアウトラインを決め、その線に沿って意見を押し通しただけ、意見表明はガス抜きのように聞き流されておしまい。こういうやり方が議員定数削減と議員報酬の議論に尾を引いている。山形県庄内町の全国的に有名になった事例は学んだが、この取り組みからは何も学ばなかったと言っていいと思われる。議会モニターと自治区長会出だされた意見の中には、今後の議会活動で具体化すべきものも数多く含まれていた。論点と争点を明らかにすることが真剣に取り組まれていたら、出された意見をもっと生かすことになったが、これが全く行われなかったのも非常に残念だった。

反対討論は以下のとおり

     議案第31号 かつらぎ町議会の議員の定数を定める条例の一部を改正する条例制定についての反対討論

現行の定数14人を13人に減員する条例の一部改正について、反対討論を行います。最も残念だった一つは、議会基本条例の第3条 (4)「議会が議論の場であることを十分に認識し、意思決定に当たっては、議員間の自由闊達な議論を重んじ、論点及び争点を明らかにするよう努めなければならない」という観点が貫かれないまま、定数削減の議案が提出されたことです。
一体議会は何を議論したのか。
論点と争点は鮮明になったのか。
ならなかったではないかということです。

多数の議員による条例案の提出に先立って、議員定数・報酬調査特別委員会では、議会モニターと自治区長会との懇談会と議会による住民アンケートが実施されました。
これらの体験を踏まえて私が感じたのは、議会活動の内容が伝わっていた議会モニターや区長会との懇談では、一方的に議員定数を削減すべきだという議論にはならず、議員報酬については、増額すべきだという意見が多かったということです。しかし、議会による町民アンケートでは、現定数14人に対し、議員定数削減が40.8%、現状維持が35.3%でした。議員報酬月額23万円に対しては、現状維持が45.5%、減額すべきが16.2%、増やしてよいが11.7%でした。寄せられた意見を読むと、いかに議員の活動や役割が住民に伝わっていないかを痛感させられました。
この体験を通じての私の結論は、さらに時間をかけて議論を続けるべきであって、答えをすぐに出すべきではなく、もっと住民に理解を求める努力をすべきというものでした。
したがって当面、定数も報酬も現状維持というものでした。これは、松岡委員長が先進事例として学ぼうと提起した山形県庄内町議会と通ずる判断だったと思います。
山形県庄内町の町議会は、住民の声を聞きながら充分時間をかけて答えを見いだそうとしました。その結果、庄内町は3年6か月かかって昨年の12月に定数を16から14に減員し、さらに3か月後、今年の3月議会で報酬を2万5000円アップして24万円としています。報告書を見ると庄内町議会は、住民参加を実現しつつ、論点と争点を繰り返し明らかにしています。我が町議会も庄内町のように時間をかけた努力が求められました。

議会は多様な住民の意見をくみ取って議会に反映させる責任があると思います。定数14人という現状は、すでに多様性を失いかねない定数であり、議員の住んでいない自治区長からは、議員の存在を求める声が強く出されていました。
議員定数は、住民の代表である議会の民主的な構成に関わる問題であり、同時に地方自治体の二元代表制をどのようにして充実させるのかという自治体の根幹に関わる問題です。それだけに、議会は、議会基本条例に基づいて、住民の前で定数をめぐる論点と争点を多面的に明らかにする責任がありました。私は、論点と争点を明確にしたいと思って働きかけたつもりですが、議員定数・報酬調査特別委員会では、議論を深めることができませんでした。
結局今回は、定数削減と報酬引き上げという最初に結論ありきの取り組みになったと言わなければなりません。
議会基本条例が泣いています。
議会自らが定めた基本条例が生かされなかったのは痛恨の極みです。
このことを最後に訴えて私の反対討論を終わります。


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雑感

Posted by 東芝 弘明