核兵器禁止条約を批准すべき 一般質問のダイジェスト版
12月の一般質問。核兵器禁止条約の批准を国に求めるべきではないかという質問を行った。短くまとめる過程で、長めのダイジェスト版を作ったので、ここに掲載したい。東芝議員であるぼくは(変な言い方やね)、自分の迫り方は良かったのではないかとおもっている。同時に中阪雅則町長も、準備をされていい答弁ができたと思っている感じだった。
あとは第三者の人の意見に真摯に耳を傾ける必要があるだろう。
東芝 核兵器禁止条約の批准を国に求めるべきではないか。
町長 署名や加盟はお付き合い程度。それをもって、国に対して署名や批准を迫ってくようなやり方はすべきでない。
問 中阪町長は、被団協のノーベル平和賞受賞の意義をどう把握しているか。
町長 受賞は、被害者の立場から核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が二度と使用されてはならないことを、証言によって示した。これが受賞理由だと理解している。
問 被団協は核兵器禁止条約の成立にも貢献した。町長はどう思うか。
町長 核兵器廃絶は、被爆国である日本国民の願いであり、核兵器のない世界を多くの人が考えているという活動をしてきた結果だと理解している。
問 核兵器禁止条約に対してどんな認識か。
町長 核兵器禁止条約はアメリカを含む核兵器国の支持が得られていない。日本を取り巻く安全保障の環境が厳しさを増していくなか、抑止力の維持強化を含め、現実の安全保障上の脅威に対応しつつ、地道に現実的に核の軍縮を前進させていくべき。
問 町長が署名したヒバクシャ署名、かつらぎ町が加盟している平和首長会議、これらは核兵器廃絶と核兵器禁止条約の国会での批准を求めている。中阪町長は、日本政府に対して、核兵器禁止条約の批准を求めるべきだと考えているかどうか。
町長 平和首長会議の納付金2000円を納付している自治体は、1118自治体、納付率80・4%(令和4年度)。総会出席自治体は、令和4年は85都市、首長自らが出席しているのは33人。平和首長会議の存在や平和首長会議が批准を求めていることを認識している首長は極めて少ない。核兵器の禁止条約を批准することによって、アメリカの傘の中から外に放り出される可能性がある。批准することはできない。
問 今日は被団協がノーベル平和賞を受賞し、ノルウェーのオスロで授賞式が行われる日。この日に中阪町長は、ヒバクシャ署名とは違う見解を示したことは記憶する必要がある。選挙の結果、公明党はオブザーバーに参加すべきだと言い、核兵器の禁止条約についても前向き。批准すべきでないという立場を取っているのは、日本維新の会と自由民主党。それ以外の政党は全部、核兵器の禁止条約の締約国になるべきだとなってきている。国会では核兵器禁止条約への批准が成立するような情勢になってきている。その中での町長の見解だった。アメリカの傘は、アメリカの核の傘と同じですか。
町長 言葉のあやのやり取りをしても仕方ない。アメリカの傘というのは、アメリカと多くの部分で安全保障を締結しているという意味。別に核に限った話はしていない。
問 アメリカはバイデン大統領の下で、核兵器の先制不使用宣言を検討し、2022年の10月、「米国と同盟国に受け入れ難いリスクをもたらす」という理由で先制使用という従来の方針を堅持した。アメリカは、相手国が核兵器を使っていない段階で核兵器を使う可能性がある。これを軍事戦略としてもっている国。アジアから見たら、日本にいる米軍というのは極めて脅威ではないか。日本政府は、アメリカの核の傘に日本が入っているという認識を明確に持っている。この下で核兵器禁止条約が問題になっている。核抑止論の中身を考える必要があるのではないか。
町長 2024年10月15日、2か月ほど前の産経新聞のニュースで、被団協ができたのは昭和30年のアメリカの太平洋におけるビキニ岩礁で行った水爆実験、これが発端になってスタートしている。昭和36年頃、記事によると国民運動が日米安保条約改定反対を打ち出したため、自民党系が離れ、いろいろ政治的な動きが活発に行われた。昭和36年ソ連が中断していた核実験の再開を発表したとき、共産党の野坂参三議長(当時)が、「たとえ死の灰の危険があっても、核実験の再開という非常手段に訴えるのはやむを得ない」と擁護し、翌年には上田耕一郎氏が、「極度に侵略的な、戦略を完成しようとする米国の核実験に対して、ソ連が防衛のための核実験を行うことは当然であり、世界大戦の勃発を阻止するための不可欠な措置にほかならない」と核の抑止論を展開したことがあった。
これに対し、いかなる国の核実験にも反対するということで社会党は反発し、昭和40年に原水爆禁止日本協議会を脱退し、原水爆禁止日本国民会議を新たに立ち上げた。それ以降、原水協と原水禁は原水爆禁止世界大会をそれぞれ別々に実施した。その後、共産党がソ連や中国の核に批判的になったこともあって、昭和52年から昭和60年までは世界大会を共同で開いたものの、また再び対立が厳しくなって分裂大会に戻った歴史がある。
被団協は、広島県には2つある。同じ名前で2つあって、一つは共産党以外の団体が組織しておる2万人の会員を抱える広島県被団協、3000人の共産党を中心とする会員を抱える広島県被団協があって今一つにはなれていない。
これは、戦争責任をどのように取るのかという終戦直後から始まった話だ。日本の責任をあまり取りたくないというスタンスの与党・日本政府とそうではないという野党、共産党や社民党、民主党が一生懸命声高らかにやっていた。共産党が求めている戦争に対する考え、核に対する考えと被団協の考えが一致している。それに対し、与党の中心である自民党は、それに対するまた全く違った見解や考えを持っている。これが今の現状だ。
我々首長の多くは無所属で立候補する。多くの方の支援、いろいろな人の考えを持って、まちづくりを進めていく観点から、政党色は一切出さずにやるのが一般的であり、私もそのような考えを持っている。
付き合いの程度も当然ながらいろいろある。他市町村との付き合い、県との付き合い、国との付き合いをする中で、今、まちづくりを進めている。東芝議員の「今こそ」という思いは分からないことではないが、私としては、安全保障をなくして、核禁止条約への批准はあり得ないと思う。一住民であれば、核兵器の反対、核兵器廃絶・禁止は簡単に言えるが、判断を仰ぎ、判断を実行に移す立場では、簡単に言えるようなものではない。
問 問いと関係のない説明だった。日本共産党はソ連の核兵器は良いと言ったのは、決定的誤りであり清算されている。広島市の平和宣言と長崎市の平和宣言、どちらの首長も日本共産党とは関係のない人。どちらも締約国になってほしい、批准をしてほしいという立場に立っている。被爆者の一人一人の切実な願いが世界を動かし、核兵器禁止条約への参加国は70になっている。賛成国は90を超えている。近い将来、国連加盟国の半数以上がこの条約に署名をして、締約国になっていくのは間違いない。
核抑止力論、核の傘論で、もう一点大事な点を確認をしたい。ウクライナとロシアが戦争している。ウクライナは核兵器を全て廃棄した国。ロシアは現在5889発の核兵器を保有している国で、保有数はアメリカの5244よりも大きい。アメリカとロシアで全世界の90%ぐらいの核兵器を持っている。戦争が膠着状態になるに従って、ロシアが核兵器を使用する可能性が高まっている。この現実を核抑止力論は説明できない。一つ、核抑止力論は、通常兵器による戦争を排除できない、二つ、核抑止力論は、むしろ核兵器使用の危険性を高める。アメリカがベトナム戦争のときも核兵器を使おうとした。ロシアは今ウクライナとの戦争の中で核兵器を使うことをほのめかしている。これが核抑止力論の本当の姿ではないか。
町長 核抑止力論は、ここで話をしても終わらない。判断をするのが国であり、我々が知らない情報も含め、政府がそれを知った上でやっているのかどうかは、推測する以外にはない。我々は、日本国が安全に安心して暮らせる国をそのまま維持していただきたいと願う。その上で、核兵器を持っている国全てが、核兵器を廃絶していくとなる。これが一番の理想であると考える。抑止論の是非を議論するのは我々ではなくて、国会であり専決事項でもある。
署名や加盟は、お付き合い程度の中でやること。かつらぎ町も含め、原水爆の禁止和歌山県協議会に入っているのは多分ほとんど入っていた。そういう形で多くの町、多くの首長が賛同はしている。ただ、それをもって国に対して署名や批准を迫ってくようなやり方はすべきでない。
問 突き詰めたら国民主権だ。町長は、繰り返し行政の課題を自分事として捉えてほしいと語ってきた。自分事とは、一人一人の国民が主人公、政治の主人公だという考え方に行き着く。被爆者が一人一人の発言がなぜ力を持ってきたか。個人が体験した悲惨な状況を訴えることによって、政治に携わる人々を動かしてきた。一人一人が地球の中で主人公だという考え方で、被爆者運動をやってきた。それが今、条約につながっていっている。
かつらぎ町長が核兵器禁止条約の批准をすべきだという発言をするのは、非常に大きな力を持つと思う。国民主権である日本のこの政治の中で、首長がそういう発言を勇気をも持って行うことが、日本を変える大きな力になる。国会の力関係で言えば、核兵器禁止条約に対して批准すべきでないという態度を取っているのは、自由民主党と日本維新の会しかない。ここまで状況が変わってきている。それを踏まえ、今後もさらに核の傘というのは一体何なのか、この傘の中に入っていると、アメリカの核戦争に日本が巻き込まれる可能性まであることも含め考えるべき。問題には引き続き取り組んでほしい。



