上勝町への視察は有意義だった

雑感

徳島県の内陸にある上勝町は、山奥にある人口が1350人程度の町だった。ここは、2003年にゴミのゼロ・ウェイスト(ウェイストは無駄という意味)宣言を行って、ゴミゼロ運動を始めた日本初の町だ。
町は、野焼きの穴を掘って、何もかも燃やしていたところから、一転して2機の小さな焼却炉を作った。しかし数年後、ダイオキシン規制法ができ、その焼却炉からダイオキシンが検出され、炉の運転を停止せざるを得なかった。
焼却炉がダイオキシン検出でアウトになったのは、かつらぎ町と同じだ。上勝町は、急遽、ゴミの焼却を山口県の業者に委託した。焼却委託の年間の経費は3500万円程になった。このままでは委託料によって、町の財政が圧迫されることが明らかになり、ゴミ問題の解決が、大きな課題となって浮上した。町内では真剣な検討が行われたが、年を越しても結論が出なかった。結論がでないなか、当時の町長の決断で、分別をしようということになって、1ヶ月半で状況説明と分別の説明を行った。その結果、その年の4月1日から35分別が始まった。

かつらぎ町は、ダイオキシン問題が発生したときに、プラスチック分別を開始した。当時、南町長は6月議会のときに7月1日からその他プラの分別を開始すると宣言した。ぼくはこのとき「わずか2週間で23区の住民に対し、説明するのは不可能ではないか。もっと余裕をもって説明すべきではないか」と質疑した。
南町長は、どこまで深く考えていたかは定かではなかったが、この問いに対し「全課長が説明会に出向いて、7月1日から分別を開始する」と答弁した。驚いたのは各課長だった。突貫工事のように課長はレクチャーを受け、各地に説明に行った。説明会における質疑では、珍答弁が続出した。しかし、23区における説明をやりきって、わずか2週間で新しい分別を開始した。
「可燃のゴミ袋が1枚50円もするのに、あたらしいプラスチックゴミの袋を、住民は買わなければならないのか」
このぼくの問いに対し、南町長は「年間必要な枚数を無料で配布する」と答弁した。問われる中で答えたので、これは最初から計画されたものではなかった。現在もプラスチックの袋が無料配布されている出発はこの議会にあった。
南町長の実行力は強烈だった。自治体の歴史はこうしてつくられる。

上勝町の35分別からのスタート及びゼロ・ウェイスト宣言は、強い決意に満ちたものだった。このとき上勝町は、外国から大学教授を招聘し、学習会を行った上でゼロ・ウェイスト宣言に至っている。ゴミをゼロにするという上勝町の宣言は、深い考え方に基づくものだった。わが町と上勝町を分けたのは、ここにあったのかも知れない。

上勝町は、ゴミ分別という一つの事業を徹底的に実行し、その中で深く物事を考え、それをふまえて、関連する新たな事業を展開している。一つのことを徹底的にやり遂げると、新たな展望が開ける。ここに面白みがある。

自治体は、実に数多くの計画を立てている。長期総合計画もその一つだが、一つの考えを背骨のように貫き、計画を実行している例は少ない。自治体には、コンサルタントに作ってもらった、魂の入っていない計画も多い。自分たちのまちの計画が、どういうものか、吟味する必要があるだろう。

上勝町は、2020年までにゴミをゼロにする計画を立てて実行したが、その結果、現在の日本社会ではゴミをゼロにすることはできない、徹底的に分別しても焼却処理すべきゴミが残ってしまうという結論に達した。そのときのリサイクル率は81.8%だった。
どうしても焼却せざるを得ないゴミは、①ゴム製品、②靴、③衛生ゴミ(生理用ナプキン、紙おむつ、ティッシュなど)だという。ゴム製品は燃やすしかないらしい。靴は分別が不可能だという。この3つの中で、一番多いのは衛生ゴミだ。
この分析がすごいのは、35分別から始まった努力によって、つまりは人間と社会による実践によって得られた新しい認識だというところにある。実践によって生み出された生きた認識。これは素晴らしい。

2020年、上勝町は2030年を見据えて新しいゴミゼロ・ウェイスト宣言を行った。その精神の中心は、上勝町が日本社会や国に働きかけて、社会の在り方を変えたいというところにある。19%の燃やさなければならないゴミをなくすためには、商品の生産の仕方、社会の在り方を変えなければならない。これは、Think globally, Act locallyという精神を体現している。ここには、国と地方との役割分担などという考え方はない。主権者は、真理を得たら行動するのだ。

説明をしていただいたのは、合同会社パンゲアの野々山聡さんだった。町から委託を行って視察の受け入れと説明を行っている。この会社は修学旅行者を受け入れ、企業研修を受け入れている。それで事業を成り立たせているようだ。
議員の視察は有料だが、町内にある第三セクター管理の旅館に泊まれば500円引きという特典がある。数多くの視察や企業研修、修学旅行生の受け入れが、町の一つの活性化の事業につながっている。

かつらぎ町は、現在、収集と運搬を行い、中間管理施設をもってる。この施設を活用すれば(ことによっては別の場所に移転する必要はあるかも知れないが)、さらなる分別は実現できる。かつらぎ町は現在、橋本市と九度山町、高野町、かつらぎ町から集まってくるゴミを広域で共同処理している。この処理のことを処分と法律ではいう。広域のゴミ処理場は、ゴミの中間処分と最終処分場への持ち込みを行い、資源については基本的に販売している。住民から出た不要品(机やソファー、本箱など)は、無償で住民に引き取ってもらっている。
収集と運搬を市町村が独自で行っているので、処分の全てを広域に任せる必要はない。徹底的な分別を行い、資源として分けることができれば、販売する道を新たに構築することもできる。それができれば、広域への搬入ゴミを減らすこともできる。将来的には、広域の処理システムを変えることもできる。かつらぎ町は、現に古紙を広域には持ち込まず、独自システムで処理しており、かなりの収入も得ている。混ぜればゴミ、分ければ資源、しかも資源になれば販売できる。ここに分別の意義があるし、ゴミゼロを目指すことは、地球環境の維持に直結する。処理経費を削減しながらゴミゼロを目指す。上勝町のように、こういう方向を目指すべきだろう。

かつらぎ町議会は、委員会による視察を行えば、議員間討議を強め、新しい政策提言につなげる努力を行おうと言い始めている。上勝町から学べば、新しい施策を提案できると思っている。面白いと思う。

写真は、不要品をリサイクルして無料で持って帰ってもらえるようにした施設で説明する野々山さん(中央)、まわりの議員は説明を聞きながら並んでいる品物を見ている。

雑感

Posted by 東芝 弘明