2つの愛国心

雑感

愛国心。
国を愛する心。多くの人が普通に持っている感情。郷土愛が愛国心の土台になっている。
ただし、中には愛国心の中に国家を愛する心を含んでいる人々がいる。
郷土は都市であっても田舎であっても、その姿を大きくは変えない。時間とともに変化することはあっても、その変化は大規模な開発がない限り緩やかだろう。しかし、国家は、政権交代によって劇的に変貌する。
日本人も、この100年の歴史だけ見ても、第二次世界大戦の終結によって天皇主権と国民主権という2つの国家体制を体験した。
天皇主権の国家と国民主権の国家はものすごく大きく違う。戦前の日本と戦後の日本の国家の性格は、月と太陽のように性格を異にしている。戦前の国家体制を愛している人もいれば、戦後の国家体制を愛している人もいる。

愛国心を深くもっている人の中には、今日の国家を愛していない人もいる。
この人に愛国心はないのか。ぼくはそうは思わない。国家の変革を必要と感じる人にも深い愛国心は存在している。そういう人々は、国を愛するがゆえに、国民の幸福を妨げている国家の変革を求めている。

国家に対する態度と愛国心の関係は、考えてみると面白い。
アメリカ独立宣言にうたわれている愛国心は、革命権を正当な権利として認めている。引用してみよう。

我らは以下の諸事実を自明なものと見なす.すべての人間は平等につくられている.創造主によって,生存,自由そして幸福の追求を含むある侵すべからざる権利を与えられている.これらの権利を確実なものとするために,人は政府という機関をもつ.その正当な権力は被統治者の同意に基づいている.いかなる形態であれ政府がこれらの目的にとって破壊的となるときには,それを改めまたは廃止し,新たな政府を設立し,人民にとってその安全と幸福をもたらすのに最もふさわしいと思える仕方でその政府の基礎を据え,その権力を組織することは,人民の権利である.確かに分別に従えば,長く根を下ろしてきた政府を一時の原因によって軽々に変えるべきでないということになるだろう.事実,あらゆる経験の示すところによれば,人類は害悪が忍びうるものである限り,慣れ親しんだ形を廃することによって非を正そうとするよりは,堪え忍ぼうとする傾向がある.しかし,常に変わらず同じ目標を追及しての権力乱用と権利侵害が度重なり,人民を絶対専制のもとに帰せしめようとする企図が明らかとなるとき,そのような政府をなげうち,自らの将来の安全を守る新たな備えをすることは,人民にとっての権利であり,義務である.

「国家が人民を絶対専制のもとに帰せしめようとする企図が明らかとなるとき、そのような政府をなげうち,自らの将来の安全を守る新たな備えをすることは,人民にとっての権利であり,義務である.」ここには、革命権を含んだ愛国心がある。

日本の中で愛国心という場合、戦前、天皇制の政府が国民に押し付けていた国家体制に対する忠誠という意味合いが強い。無条件でときの国家を愛すること=愛国心だという考え方だ。
戦前と戦中は、国家権力は国民のものの見方考え方にまで立ち入って、国民の意思を押さえ込んでいた。愛国心は、このような歴史的な経過の中で、大きく歪められて今日に至っている。

戦前戦中の日本の戦争を批判すると、愛国心がないとか、自虐史観だとかという強い批判がでてくる。あの戦争を否定する人々には愛国心がないというような見方だ。

ぼくは、こういう愛国心とは闘いたいと思っている。アメリカ独立宣言のような愛国心を持ちたいと思っている。同じ愛国心でも立っている政治的な位置は大きく異なっている。
15年戦争に至った侵略戦争の歴史に対し、ぼくは批判的でありたい。あの戦争によって、アジア諸国民は2000万人以上の人々が命を失った。この原因の大多数は日本の侵略によって引き起こされたものだ。アメリカによる広島と長崎に投下された原子爆弾。この爆弾によって20数万人の人々が一瞬にして命を失った。この犠牲の上に国民主権の憲法が誕生した。
ぼくは、この憲法の重みを噛みしめている。この憲法を守り暮らしに生かすような政治を実現したい。ぼくの愛国心は、この憲法の存在意義とともにある。

日本には、2つの傾向の愛国心があるといえるだろう。
一つは、第2次世界大戦に至る日本の戦争を肯定し、戦前の国家体制を肯定し、したがって現在の政権与党を支持している人々の中にある愛国心。
もう一つは、恒久平和、主権在民、基本的人権などを愛し、日本国憲法を守りたいといっている人々の愛国心。
先日、日本国憲法を守るためには民主主義革命が必要だと書かせていただいた。ぼくは、こういう愛国心をもっている。

2つの愛国心が、綱引きをおこなっている。


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雑感

Posted by 東芝 弘明