映画「日本の青空」に寄せて
かつらぎ総合文化会館大ホールで映画「日本の青空」を観た。
鈴木安蔵という憲法学者を軸にした民間の「憲法研究会」が、1945年12月27日に「憲法草案要綱」をGHQに提出し、GHQは、この要綱を最大のよりどころにして日本国憲法草案を作ったという話しだった。
政府のもとにつくられた憲法問題調査会は、最終的に委員長である松本烝治国務大臣(元東大教授)が起草した憲法改正要綱を1946年2月8日にGHQに提出した。この憲法草案は、国体護持に固執して、国民主権の立場に立つことはできないものだった。
GHQは、これと前後して、独自に憲法草案を作成する作業に入り、2月10日には、民政局(GS)が憲法草案を完成させ、12日には、マッカーサーの承認を得て、この草案は「マッカーサー草案」となった。
2月13日にGHQは、外相官邸でGHQ草案(マッカーサー草案)を日本側に手渡した。このとき松本試案をGHQは拒否している。〔「日本側は、松本委員長・吉田外相・白州次郎終戦連絡中央事務局長参与・通訳4名、GHQ側は、ホイットニー・ケ-ディス・ラウエル・通訳の4名が列席」(「日本国憲法誕生史」年表より引用)〕
1946年の2月の動きは極めて激しい。作成を急いだ理由は、極東委員会が開催されるまでに憲法草案の形を整える必要があったということらしい。
映画では、日本国民の感情にあった形の憲法草案をつくることができるかどうかが、GHQの大きな関心事であり、鈴木安蔵らが作成した「憲法草案要綱」があったので、GHQは草案をつくることができたとしていた。
日本国憲法は、GHQの中にあったGSという組織なしにはできなかっただろう。
民政局(GS=Government Section)=日本の民主化政策を担ったGHQの中に45年10月2日に設置された組織で、占領初期のGHQの中枢部局。憲法改正のほか、公職追放、公務員制度改革、選挙制度改革、地方自治等の戦後改革を担当、新しい日本の政治機構形成の上で重要な役割を果たした。とくに憲法改正では、民政局内に、立法、行政、人権等、分野ごとに条文を起草する7つの委員会と、全体の監督・調整を行う運営委員会を組織し、GHQ草案の作成にあたった。(鈴木安蔵より引用)
しかし、日本国憲法は、日本国民にまったく基礎をおかないものではなかった。
明治憲法の改正として議論された日本国憲法は、明治憲法下で国民の権利を制限し、戦争を遂行した法体系を徹底的に批判する形で生まれた。これは、日本国民のなかに脈々と流れていた、自由と民主主義を求めてきた抵抗運動や思想が、条文のなかに盛り込まれていったということだろう。基本的人権の概念は、基本的人権を否定してきた明治憲法に対する批判として読めるのは、ここに理由があるように感じる。
憲法9条に関する規定は、鈴木安蔵らが作った「憲法草案要綱」にはなかった。9条の規定は、人類の当時の理想、戦争を2度と繰り返してはならないという決意が込められたものであり、ここには、第2次世界大戦の教訓が、人類の英知として結集している。
2000万人のアジア諸国民、310万人の日本人の犠牲、広島・長崎の原爆、沖縄戦、中国や東南アジアのさまざまな戦火の上に立って、人類が選択した願いが9条には込められている。
押しつけ憲法。たしかに松本国務大臣などにとって、現憲法は押しつけられたと感じるものだったのだろう。しかし、自由と民主主義を求め、戦争の惨禍を繰り返してはならないと思ってきた日本人は、感動をもってこの憲法を歓迎したのだと思う。
鈴木安蔵は、治安維持法弾圧の第1号だった。思想信条の自由、言論の自由を求めてきた人が、国民主権の根本原則に立って「憲法草案要綱」を作ったことは感慨深い。
歴史の大転換のなかで生み出された日本国憲法の意義は大きい。この憲法を守ることは、21世紀の日本の民主的な発展を保障する最大の拠りどころとなる。
「アメリカに押しつけられた」と嘆く改憲論者の方々は、「アメリカの押しつけ」で戦争を遂行しようとしている。「押しつけ」憲法を嘆きながら、もう一度アメリカに「押しつけられて」憲法を改正しようとしている。
どうも、戦後60年が経過したら「アメリカの押しつけ」が大好きになったようだ。
「イラク戦争は、アメリカによる侵略戦争だった」
こういうと改憲論者の方々は、「違う。テロとの戦いだ」という。
しかし、アメリカ軍が、罪のないイラク人を殺害している。
戦争を遂行することによって、テロ集団がイラクに結集した。これは、まさにテロ(アメリカ)とテロとの戦いではないだろうか。この戦いのなかで、テロに関係しないイラク人がたくさん死んでいる。
アメリカの押しつけを、押しつけだと自覚しない政府は、イラク戦争が侵略戦争に見えない。アメリカ=正義という図式のなかで、イラク戦争は、自存自衛のためのテロとの戦いに見えるということだろう。
なんだか、戦前の日本の主張に酷似している。
そうそう、べらぼうに高くなった石油で思い出した。
全世界の原油の含有量は、富士山の体積の半分しかないという。アメリカは、自国に埋蔵していると思われる石油は開発しないで、イラクの石油確保に躍起になった。ここに戦争をしかけた一つの理由があるようだ。
大量破壊兵器があるといい、フセイン政権はテロ組織との関係があると言って始めた戦争は、全くのでたらめだった。
日本は、この2つの理由をでたらめだとは口が裂けても言えない。なんとも変な国だ。
日本国憲法改正反対+アメリカによる押しつけ憲法反対。
このスローガンを今こそ掲げよう。








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