卒業写真

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卒業写真にはさまざまな思い出がある。
高校の卒業式は、同級生にとっては別れのときだった。
ぼくには、好きな女性がいた。彼女とは少しだけ思い出があった。
卒業式の日、最後にどこの大学に行くのかという話だけをして、さよならを言った。
握手を求めると、彼女は手袋をはずして手を差し出した。細い指が印象的だった。
高校時代の卒業写真を見ると髪が長い。女の子のような長髪の自分がいる。
同級生の男子は、長髪の男が多かった。今から30年前の男子は、なぜかしら長い髪をたなびかせていたのだ。
髪で思い出したことがある。
笠田の街には銭湯があり、時々兄貴と2人で銭湯に行っていた。当時のリンスは、キャップに液を入れて、3分の一ぐらいまでお湯を入れた洗面器にそれを入れ溶いて使うというものだった。メリットのリンスの容器は水色だったか黄色色だったか、あんまり定かではないけれど。
卒業してからは、笠田高校に通わなくなると歌のように電車から通っていた道を見ることになった。

出会いもあれば別れもあったが、いい思い出を残したい人は、「あなたは変わらないで」などと言ったりする。
ぼくも、20歳を過ぎてからつき合った人にそう言われたことがある。しかしねえ、人間、強烈にふられたりすると、変わるなと言っても、変わらざるをえない。それほどショックは大きいのだ。
しかし、卒業写真という歌には、柔らかな風のようなものを感じる。揺れる柳がこのような感情を呼び起こすのだろうか。
季節は5月、卒業してから1年がたち、街で見かけた人があの頃と変わっていなかったことを知って、心が動かされるというようなイメージの歌。
家に帰ってから彼女は、卒業写真を開いたのかも知れない。
思い出は、さわやかな風に流れて時間の中を行ったり来たりしながら、柔らかくやさしく動いていく。
卒業写真。多くの人の心の中にある永遠のアルバム。


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Posted by 東芝 弘明