日本の社会の顔
ビラは、さらに最終の直しが入って、結局お昼頃まで直しをおこなう必要があった。午後2時半過ぎからNさんと「しんぶん赤旗」の購読お願いに行き、2部購読約束をいただいた。
訪問先で、トヨタの下請けをしている中堅企業の話を聞くことができた。
「うちも派遣を切らなしゃあない」
「派遣って何人いるんですか?」
「60人ぐらいはいてるよ。うちは契約途中で切るような無茶はせえへんと思うけど。来年は16人新規が入ってくるけれど、何をしてもらうんか分からん」
「派遣の契約期間は?」
「半年、半年の更新やけどね。2年がんばったら正社員になれるってがんばってきたんやけどね。最近2人正社員になったばかりやけど。その人らはよかったということになると思う。他はかわいそうやけど、切らんとしゃあない」
「仕事は減っているんですか」
「トヨタの仕事が6割以上やからね。赤字やからね。ものすごく減っとる」
畑の中で聞いた話は、日本の現在の資本主義の最先端の厳しい現実だった。
夜、7時30分過ぎからお通夜に行った。新城の同級生のお父さんの通夜、告別式の看板を見たからだった。通夜は、6時からだったので、もう弔問客はいなかった。祭壇の前まで進むと33年ぶりに会う同級生が立っていた。彼から「久しぶりやなあ」という声がかかった。ぼくの方が、記憶の糸が重なり合うのに少し時間がかかった。
彼のお父さんの顔を見せてもらい、焼香をさせていただいた。
「久しぶりやな。まあ、少し話をしよう。2階に上がってよ」
彼にすすめられるがままに2階に上がり向かい合わせに座ることになった。
証券会社に勤めて、単身赴任している彼の証券マンの話は、ぼくのまったく知らない世界の話だった。
証券マン1人が抱えている仕事は100億円。話はここから始まった。
相手にしている顧客は、会社と富裕層の人々だという。
個人のお客さんの株の買った、売ったというような取引はもうほとんどしていないということだった。
契約には弁護士が立ち会い、契約書を交わすというような、組織の資金運用で証券会社は成り立っているのだという。
いわゆる機関投資家というものだろうか。
石油関連会社が、石油の精製で儲けている場合、石油の先物取引で価格が上下する。企業は、生業でそんをした場合、先物取引では得をするというような、そういう取引、契約をするのだという。
病院なども経営が厳しいので、資金運用を積極的におこなっているのだという。
リスクはあるが、リスクの説明については、顧客に対し透明性のある話をきちんとおこない、そんをした場合もはっきり説明することが問われているという。
別れ際、また会おうね、という話をして会場を後にした。
彼のお父さんは、優しい感じの人だった。最後にあったのは選挙の時の訪問だった。お父さんは家の前で畑仕事をしていた。同級生の彼の話を聞きながら長い時間はなしをしたことが思い出される。
「親父もその時のことを話していたよ。うん、その時の話、ぼくも聞いたよ」
彼はそう言った。
年末、忙しい中での1日だった。世間はさまざまな顔をもって動いている。そんなことを感じた。