学校の適正配置検討委員会開かれる
「相談したいことがある」
電話の向こうで男の人はそう言った。朝9時30分に待ち合わせの場所に行った。
男の人は、すでにテーブルに座って待っていた。
「おはようございます」
話し始めると介護の話だった。
老老介護という話が新聞にもよく書かれている。高齢化社会というのは、70歳代の人が90歳代の親を看るという世界を含む。
「もっと若い人のために予算を」
こういう意見を寄せてくれる方もいる。
しかし。現実に直面して、はたしてこう言うセリフが出てくるだろうか。
自分が介護保険の対象になり、不安を抱えているときに、自分の親がさらに年齢の高い状態で介護の必要なケースになり、悩みを抱える。不安は大きい。
人間は、どれだけ年齢を重ねても楽になれないで、年相応の悩みをかかえざるをえないようにできている。
小泉さんがおこなってきた構造改革は、年金の受取額を縮減し、税金の負担を増大させ、働き方を根本的に変更して、格差を拡大してきた。
格差が広がっても底辺が拡大しなければいい。こういう議論をおこなう人もいる。底辺が拡大しないのが事実ならそれでもいい。しかし、この5年間は、明らかに貧困層が増大し、国民の多数の生活が苦しくなる方向で格差が拡大してきた。
「1か月の入院料が7万円必要や」
コーヒーが苦く感じる。
「退職したら悠々自適にいきたかったが、世間知らずだった」
男の人は苦いコーヒー以上に苦い話を笑いながらおこなった。
今日は、3時から第5回の学校の適正配置(統廃合)の検討委員会が開催された。
はじめて大ホールで開かれる会議になった。
傍聴人が見守る中で会議が始まった。
議題の2番目と3番目は、「長期総合計画」の紹介とかつらぎ町の「行政改革大綱」の紹介だった。
「長期総合計画」にも、「行政改革大綱」にも公共施設の統廃合という言葉はあっても、小学校の統廃合という言葉はなかった。
学校の統廃合に対して、具体的に言及した計画は「財政健全化計画」しかない。しかし、町当局は「行政改革大綱」の考え方にもとづいて「財政健全化計画」があることをまったく紹介しなかった。公式な会議では紹介できないほど、事務的な計画にしかすぎないとでもいうのだろうか。
町のホームページに堂々と紹介している計画なのに、この計画を示さないのは不思議だった。
なぜ、今、学校の統廃合なのか。──この質問に対して、「長期総合計画」と「行政改革大綱」ではまったく答えられない。答えは簡単。学校の統廃合に対する具体的な認識が、この2つの文書には書かれていないからだ。
「教育関係で行政改革の数値目標は示されていないのか」
予想されたようにこういう質問が出た。しかし、この2つの文書しか示していないので、町当局はまともに答えられなかった。これは当然の帰結だった。
「財政健全化計画」の方はどうだろう。この計画では学校の統廃合は、中長期の計画ということになっている。19年以降の計画だから削減額が数値目標を持って示されていない。これは、削減効果という点で、町当局が見通しをもっていないことを意味する。学校の統廃合の検討が「財政健全化計画」よりも先に進んでいると言っていい。
教育委員会の勇み足なのかもしれない。
ところで、ぼくが今週、財政問題と統廃合の関係を確認しにいくと、財政当局は、「維持管理費は問題ではない、老朽化した学校の改築と耐震補強が問題だ」という明確な答えを返してきた。
これは、重要な認識だと思う。この認識に立てば、学校の統廃合は、学校改築に合わせておこなえばいいということになる。
ぼくの母校である新城小学校の生徒数は4人しかいない。この学校の維持管理費は、ほんとうに小さい。和歌山県は、教員を配置しなければならないので、人件費がかさんでいるが、町は、人件費で必要なのは用務員さんだけで、必要な水道光熱費やトイレのくみ取り料は、統廃合によって、そんなに大きく削減できるものではない。
ただし、老朽化した校舎関係の修繕費は、修理が必要な場合、経費がかさむ。生徒数の少ない山間部の学校のうち、天野小学校と四邑小学校については、施設が新しいので、修繕関係の経費もほとんどかからない。
適正配置の検討委員会でも、本当は、もう一度財政は厳しいという前提を疑ってみる必要がある。今日の会議のやり取りから、財政問題における不十分さには、気がついてほしいと思う。この詰めをおこなわないまま、来年の3月までに計画を打ち立てなければならないということで、突っ走ったら判断を間違うことになる。
その他の議題のところで、議会に渋田小学校改築の請願が出され、継続審議になったことが報告された。ぼくが委員の一員になっている総務文教常任委員会の報告文書も読み上げられた。
委員長の山下氏は、この報告文書に対し、かなり長い時間をさいて次のような所見を述べた。
「この検討委員会は、教育委員会から諮問を受けて答申を出そうとしている。しかし、議会がこのような形でこの委員会に影響を与えるような文言がはいると、所見を述べざるを得ない。報告書に[請願が採択されても統廃合の議論にアウトラインをあたえるだけで、『検討委員会』の自由な審議を疎外するとはいえない]とあるが、これは重大なこと。そうなったら私は、委員長を辞任しようと考えた。この意見(請願かもしくは委員会の見解だろう)には、一地域の立場からの意見しかのっていない。町全体の視野に立って意見を述べていただきたい。
地域にとっての学校という視点は大事だと思う。しかし、地域がどれだけ学校に対して関わってきたのかも問われているし、学校が地域にどのような役割を果たしていたのかも問われている。地域から学校がなくなったら、それで地域が衰退するというのもよく分かる。私は、今回の答申には、すべての学校を残すというのも一つの選択肢だという考え方を入れていいと思っている。いくつかのプランを示せばいいと思っている。すべての学校を残す場合は、住民のみなさんにも痛みをともなう覚悟が必要だ。そういうことも書かせていただきたいと思っている。
われわれは、子どもの教育を中心に統廃合を検討したい。少人数教育は、研究の対象としては重要だし、こういう学校があれば、研究者としてはありがたいと思う。しかし、子どもたちは高校に行ったとき大規模な学校に行くことになりますよということになる。それでいいんですかということも問われる。
しかし、(今回の請願のように)もし仮に同じような意見が各地域から出れば、この委員会の審議はどうなるでしょう。私には、そういう政治的な調整をおこなう力はない。そういう調整役は果たせないということだ」
この発言は、いま統廃合をめぐって焦点になっている問題への真正面からのコメントだった(記憶で発言をまとめたので記憶間違いがあるかも知れない)。
「ひと言で言って困っています」
発言はそう締めくくられた。
渋田地域の方々も数多く参加していたので、この発言にはさまざまな思いをもったと思われる。
議論の進展具合を見ていると、3月末までに統廃合の方向が出せるような感じにない。もっと時間がかかりそうな雰囲気だ。
会議では、バブリックヒアリング(タウンミーティング)を1月に河南と河北でおこなうということも表明された。アンケートを取ることも決められた。
次回の適正配置の検討委員会は、11月6日の午後5時30分ということになった。
会議が終了して、外に出ると天気が崩れており、雨が降り始めていた。
多くの傍聴者は足早に会場を後にした。








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