具体と抽象

雑感

『繕い裁つ人』の原作本(少女マンガ)を6冊読んだ。映画と同じような空気感のある作品だった。ほろりとくる場面が幾つもあって、心に沁みる作品だった。一つだけ難点があった。それは、登場人物の顔の描き分けがなかなかできていないので、場面が変わったときに登場人物が誰なのか、なかなか記憶の中の人物像とフォーカスが合わないことが何度かあった。
これは一体誰と誰なんだろうという思いがあって、会話の内容が頭に入ってこなかったりした。一番困ったのは、主人公の市江さんとお客さんの見分けがつかない人が出てきて、向きあって会話をするのだけれど、どちらが市江でどちらがお客さんなのか、どちらのセリフなのか、見分けるのに時間がかかったことだった。日本人は、平たい顔族であるのは間違いないが、登場人物を個性的に描き分ける努力をしていただけたら、読者としてはありがたいと思ってしまった。

中学生からの大学講義は3冊目の『科学は未来をひらく』を読み始めた。なかなか面白い。知らないことだらけだ。自分の知らない世界を具体的に知る中で見えてくるものがある。徹底的に具体的に事実を探究する中で物事を知るためには、どうしても抽象的な思考が武器として必要になる。抽象的思考の力を借りつつ、具体的な物事に肉薄していくということだ。物事を深く知っていくとその物事を通じて、物事の本質にかかわる抽象的なものの見方、考え方がさらに鍛えられる。具体と抽象というものは、切っても切れない関係にある。
この本は、いろいろな大学教授による共作なのだけれど、1人1人の文章の最後に本の紹介がある。これらの人の紹介している本を読めば、さらに新しい世界に出会えるだろう。そういう楽しみも増えるのが、「中学生からの大学講義」だ。

雑感

Posted by 東芝 弘明