夏期合宿、終了

出来事

高台にある宿舎からはるか下に有田川が見える。昭和28年の大水害の時に山が崩壊して川をせき止め、自然のダム湖となり、それがやがて滝となった。大水害の時にできたこの滝は金剛の滝と命名されている。国道480号を左折してかなり険しい坂道を登り左に曲がると、視界が開け一番奥に宿泊施設が見えてくる。宿泊施設の金色のプレートには「金剛の滝」という表示がある。山が滑り落ちてできた高台に宿泊施設は建てられていて、施設の北側の斜面には、ローラー滑り台が設置されている。グリーンパーク──これが施設全体の呼称だ。山が崩れ落ちてできた高台と斜面が、グリーンパークに生まれ変わって、かなりの時間が経っている。
施設の正面の駐車場に車を止め、自動ドアの玄関から施設の中に入ると、広々とした空間をもったロビーが目の前に現れる。高い天井から吊された白いシーリングファンが緩やかに回っていて、空気を対流させている。ロビーの右側にカウンターがあり、到着したときは白髪交じりの男性がカウンターの奥に立っていた。
「お世話になります」
リュックを右手に持ったぼくは、そう言ってカウンターに近づいた。時計の針は9時45分頃を差していた。昨日のことだ。
正面の左手には2階に上る階段があり、その横には向かい合って座れるソファーがある。左手の奥には食堂があって、入口の左側のコーナーには、ソファーとテーブル、テレビが置かれている。1階と2階は吹き抜けになっていて、2階には客室が真っ直ぐ見通せる廊下の片側に一列に並んでいる。客室に入ると4人部屋で2段ベッドが2つ両側に備え付けられており、奥にソファーとテーブル、テレビ、冷蔵庫が置かれている。部屋は思っていた以上に広い。

カウンターの左の奥に男女別々の浴室がある。お風呂のスペースも広い。清潔感があるので「気持ちがいい」と評判が良かった。カウンターの右側を奥に入ると、男女と障害者用のトイレがあり、さらにトイレの横に会議室がある。施設は綺麗に管理されていていた。全部屋にはエアコンが備えられており、空調も快適だった。会議室は、15人程度、詰め込んだら20人ぐらいは入れるスペースの学習室になっている。小学校の教室よりも狭い感じがする。講師の声は後までよく届いた。
今年で4回目になる夏期合宿は、この施設で2日間、参加者が交替で講師を勤めながら行われ、無事日程を全部消化して終了した。

12時30分になる少し前に施設を後にして、みんなで鞆渕に移動して、Cafe tomobuchi(カフェ・鞆渕)で昼食を食べることにした。

夜、読みかけの『中学生からの作文技術』をさらに読んだ。本多勝一さんは、語尾の変化が乏しい文章のまずさについて書き、次に紋切り型の文章について書いていた。こういうことを指摘しているのを読むと、自分の文章が無性に気になる。語尾が同じ終わり方になっていないか、紋切り型の表現に陥っていないかが気になって、いくつかの文章を読み返した。語尾については、そんなに同じ表現ばかりを繰り返していないのは確認できた。紋切り型についても、心配するようなことにはなっていなかった。
ただ、書くべき対象を凝視して、文章を書くということについては、サボっている感じがした。エッセイ風の文章が書きたくて、何日間かは、対象をリアルに見て書いたような文章はあるが、そのような書き方がなかなか続かないのが、自分でも分かった。

自分の身のまわりで起こったことと、日々思っていることを入り混じらせながら、生き生きとした文章を書く、──これができていない。身のまわりのことを書いていくと、政治的なことが書かれなくなっていき、政治的なことを書くと身のまわりのことが描写できなくなるという、二律背反的な書き方ではなく、身のまわりのこともリアルに書きながら、同じ文章の中で政治的なことも書けるようになればいいのではないか、ということに考えが到達した。
明日からは、そういう文章になるように努力してみよう。これが、実際に書けるようになれば、政治的な話題でも理屈のかたまりのような文章から、もっと潤いや変化のある文章が書けるようになるかも知れない。

気がつくことと、実際にそういうことができるかどうか、というのはまったく別物だと思う。あと数ページで本多勝一さんの本を読み終える。黄色いカバーの本には、赤い帯がついており、帯には「分かりやすい文章は、自然には身につかない」と書いている。文章修業こそが必要だという気持ちが湧いてくる。


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出来事

Posted by 東芝 弘明