『檻の中のライオン』講演会

雑感

午後2時から5時まで橋本市民会館の2階で開催された「檻の中のライオン」という憲法の学習会に参加した。
現代憲法は、権力者の手を縛るもの。国民の権利をうたい、基本的人権をうたうもの。基本的人権は、天が与えたもので全ての国民が生まれながらに持っているもの。
この原則が確立するまでに、人類はものすごく長い間、虐げられてきた。日本社会でこの原則が確立してわずか70年余り。それだけにこういうことが原則になっているということさえ、あまり国民には意識されていない。
動物園に行き、ライオンを見ても見ている人は身の危険を感じない。それは襲ってこれないように檻があるからだ。しかし、動物園に行ったとき、ほとんどの人は檻には関心を示さない。動物園は安全なものとして、暗黙知のように檻は存在している。

憲法が権力者に守る義務を課して、手を縛っていることをほとんど国民は意識していない。しかし、日本国憲法は、国民にはほとんど意識されていないが、70年間ずっと国民を守ってきた。数多くの基本的人権についての規定があるのは、大日本帝国憲法が数多くの人権を 踏みにじる仕組みを持ってきたからだ。戦後、大日本帝国議会で日本国憲法は、大日本帝国憲法の一部改正として制定された。国民主権がなく、国民の権利が法律の範囲によってしか保障されていなかった戦前の日本に対する徹底的な批判、徹底的な民主的改革が日本国憲法には刻まれている。

日本社会にあった民主主義の復活。この中には、戦争反対を主張し、国民主権の実現を訴えていた運動もあった。多くの文学者は、個人の自我の確立の問題と社会の問題、突きつめていけば、天皇制と個人の自我との関係を考えざるを得なかった。日本社会の中に私小説という身辺雑記的な小説が生まれたのも、抑圧的な社会体制と無縁ではない。

2時から講演が始まり、しばらくすると羽生結弦君が2大会連続の金メダルを獲得したニュースが流れてきた。ケガと重圧を乗り越えての金メダル。わずか3分数十秒と4分数十秒の演技に4年間の努力を注ぎ込んで、やり直しのきかない本番に臨む。嬉しいニュースだった。

「檻の中のライオン」の講演には、若い子育て世代のお父さんやお母さんがたくさん参加しており、小さな子どもたちもたくさんいた。いつもの憲法学習会とは装いの違う会場だった。
講師の弁護士、楾大樹(はんどうたいき)さんは、広島で活動している弁護士で、『檻の中のライオン』という絵本の作者だ。橋本市の講演は、ちょうど100回目だった。60人ぐらいは参加していたように感じた。夜の部も行われたので、かなりの人数の人が学習会に参加したのではないだろうか。

休憩のときにはお茶とクッキーのようなお菓子が配られた。参加費は800円。憲法の条文を書いたクリアファイルが200円、お菓子には制作費用の募金が集められていた。年配の方々の学習会だと講師の費用は、団体持ちで参加者には負担をかけないということが多い。でも、自分たちで学習会を主催し、みんなで分かち合って支えるという学習会はいいと思った(会を主催してくれたみなさん、ご苦労さまでした)。

「右や左の話をしている訳ではありません。それ以前の問題です。右や左ではなく、上と下、つまり国家と国民の関係の問題です。自民党の憲法改正草案は、国家と国民の関係を、国家があって国民があるというようにひっくり返そうとしています。かなり危険だと思います。そのことを伝えたくてきました」
楾さんは、そう語った。

国家による戦争は、国の権限の中でものすごく大きなものだろう。日本国憲法は、軍隊を持つことも国が戦争することも憲法第9条で明確に禁止した。これによって、日本は戦争のできない国になった。檻の中でもこの檻は、国家の手を縛るという点で、ものすごく強固な檻になっている。憲法第9条の改正は、国家による戦争に道を拓く。安倍政権は、第9条の1項と2項を残したまま、自衛隊の存在(だけを)無限定的に書き込む可能性さえ議論している。これが実現したら海外での自衛隊の戦争参加が法律に全て委ねられ実現できるようになる。憲法は自衛隊に対して何の規制もかけないということになる。
憲法第9条によって作られた檻は、国民主権と基本的人権を保障することと連動している。戦争する国は、どうしても戦争に反対する国民の運動に対して警戒心をもち、国民の運動に制限をかけようとする。第9条による檻を壊したら国民主権と基本的人権という大原則が、憲法によって制限をかけるものに変化させられる。自民党の憲法改正草案は、戦争のできる国への転換を軸にして、天賦人権説をやめるといい、国民主権に対しても緊急事態のときには制限をかけると言っている。
「大日本帝国憲法よ、復活せよ」とでも言うのだろうか。
中野晃一さんは、安倍政権は「教育勅語」に示されている国をつくろうとしていると指摘した。「お国のために血を流せ」という時代への憧憬。私たちはこういう人々の策略と向きあわされている。

雑感

Posted by 東芝 弘明