財布がない

出来事

会議に出発する時間になって、財布がないことに気がついた。事務所かなと思い事務所に立ち寄って物色したが、見当たらなかった。
「どうしよう。カードが使われていたら大変だ」
そう思い始めると焦ってきた。
もう一度自宅に行き、思い当たるところを探した。
「カード会社に電話して、カードを止めないと」
妻がそう言って自分のカードをテーブルの上に置いた。
同じ会社のカードには、連絡先が書かれている。字が小さい。
一体何枚、カードが財布に入っていたのか、思いをめぐらしても気が動転して考えが明確にならない。
「会議に遅れるって電話した?」
妻がそう言ったので、何から手を付けたらいいんだろうかと考えつつ、会議に遅れると電話をかけた。

車の中に落としていないか探しつつ、カード会社に電話を入れた。男性の声がした。
「カードが使われていないかどうか、知りたい」
と言うと、
「使用されたらMailで通知が届きます。まずはそれを確かめてください」
こういう返事が返ってきた。それもそうだと思い、Mailをチェックした。使われた形跡はない。

少し安心した。
昨日は、マクドナルドで昼ご飯を食べて財布から現金を出した。もしかしたらマクドナルドに忘れたかも。こういう考えが浮かんできた。
インターネットに示されているマクドナルドに電話を入れた。長く呼び出しても誰も出ない。
「戦争状態の職場だからなあ」
と思った。仕方がないから、車を走らせてお店に行くことにした。もうすぐお店だというところで、昨日の集会の会場に財布があるかも知れないという思いが、確信のように高まってきた。

マクドナルドのお店のドアを開けて順番が来るのをまった。案の定、店の中は、ドライブスルーと店内で食べている人とで戦争状態だった。
「お待たせしました。次の方どうぞ」
そういう女の子に声を掛けた。
「昨日のちょうど今頃、財布を忘れていなかったでしょうか」
「少々お待ちください」
彼女は、年配の女性に声を掛けた。細面のチーフみたいな感じの女性だった。
その女性がカウンターに出てきて、
「忘れ物は届いていないですね。どの席に座っていましたか?」
そう聞いてくれたので、座っていた席を指さした。

マクドナルドにはなかったので、昨日の集会があった生涯学習センターに車を走らせた。
会場の駐車場に着いて車を止めていると、知人が黄色いジャケットを着て建物の中に入って行った。
その後を少し遅れて玄関に入った。ここは木製の自動ドアが2重になっている。開くのがもどかしい。左手に事務所があるので、事務所の入り口に入って男性職員に声を掛けた。
「昨日、会場に財布を忘れていなかったですか。共産党の集会です」
「ここには届いていないですね」
彼はそう言って、忘れ物コーナーにある物をさわってみせた。かなり忘れ物があった。
「今日、会場の半分は使われていないので、探してみますか」
そう言って歩いて行ったので、後について行き、テーブルの下の資料おきの所を見て回った。あるとすればこの部屋だ。昨日ぼくは一番前の席に座っていた。
半分ほど見て、「ないかな」と思い始めたときに、男性職員が、
「これですか」
と財布を発見してテーブルの下から取り出した。
「はい、それです。間違いないです」
ぱあっと明るい感じになった。
財布の中から本人であることを証明できるものを見せて、自分の物であることを示した。
「よかったですね」
彼は心底喜んでくれた。空が晴れ上がるような感じだった。
「よかったよね。ほんと」

この騒動があったので、会議に1時間ほど遅れてしまった。しかし、発見できてほんとによかった。


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出来事

Posted by 東芝 弘明