「虎に翼」は楽しい

雑感

「虎に翼」を楽しんでいる。主人公の寅子は完璧な人間ではなく、いろいろ物議を醸すし、尖っている人間であり、夢中になったら状況が見えなくなる人間として描かれている。そういう性格の人だったからこそ、突き抜けて時代を切り開いたのだともいえる。しかし、それ故に失敗も多く、愛すべき人物として多面的に描かれている。

穂高先生の退官のパーティの時に、花束を渡さず、穂高先生に怒りをぶつけるシーンは物議を醸していたが、まさにそのシーンに寅子のいい面と悪い面が入り交じって描かれていて、なかなか秀逸なドラマだなと思った。この場面で描かれた悪い面は、多くの人が感じた違和感でもあったが、この違和感が膨れ上がって、今週の家族との軋轢となる。このことに直面した寅子が、どんな学び方をするのか。ぼくの楽しみはここにある。

穂高先生が、最高裁の判事を退官するときに、自分は雨だれの一つに過ぎなかったという思いを語ったことに対して、ぼくは時代を生き抜いて理想の実現をめざしていた人としては、寅子ではないが、いささか残念に感じた。残念だったのは、明治憲法から日本国憲法への転換がどうして起こったのかという歴史観に乏しかったところにある。あの当時の時代の変化を体現して生きた学者として、歴史観を少し示してほしかった。この思いは、ない物ねだりなんだろうか。

激動の時代の中、宮本百合子は、終戦の玉音放送を小説『播州平野』で描き、
「村じゅうは、物音一つしなかった。寂として声なし。八月十五日の正午から午後一時まで、日本じゅうが、森閑として声をのんでいる間に、歴史は、その巨大な頁を音なくめくったのであった」
と書いた。こういう時代認識を体現してほしかったという思いが残った。


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雑感

Posted by 東芝 弘明