『薔薇盗人』
浅田次郎の『薔薇盗人』という単行本を読んだ。短編集だった。
秀逸だったのは、表題の「薔薇盗人」だ。小学6年生の息子が、豪華客船のキャプテンである父に手紙を書く形式で物語が展開される。父は世界一周の航路の先々で息子の手紙を受け取るというもので、父から息子にあてた手紙というのはない。あくまでも息子からの手紙だけを書いている。
小学生の子どもが書く手紙が、少年の母や少年の「恋人」になった近所の女の子の母親の全く別の状況を浮き彫りにしていくというものだった。手紙によって浮き彫りになる物語は、一言も具体的な言葉によって書かれてはいない。読者は、少年の書く手紙によって、別の物語の顛末を頭に思い浮かべざるを得ない。
こういう小説を読むと、小説の世界の深さに驚く。









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