前立腺癌の生検、初体験

雑感

妻にお願いして医院に付き添ってもらった。泌尿器科の医院には10時20分頃に着いた。検尿と血圧を測って待っていると点滴をするために呼び出された。肛門から針を刺して、前立腺の肉片を12個取り出すということで、感染を避けるために抗生物質の薬を昨日から飲み、今日は抗生物質の点滴を行うという手順になっている。看護師さんが何度も血圧を測りに来た。
「どこか異常はないですか」
「頭が少し痒いです」
「どこですか」
「この辺です」
「分かりにくいですね」
発疹は確認できなかった。前も点滴で抗生物質を投与すると、少し頭皮に痒みが出た。この点滴が終了すると「栄養剤です」という点滴が行われた。途中で起き上がって、トイレに行った。この間は暇なので、携帯でスレッドを見ていた。インスタグラムのスレッドでは会話を楽しんでいる。会話と言っても戦前の日本の侵略戦争に対するやり取りだ。
「アジア解放のたたかいだった」
こう信じている人はどれだけいるのだろう。武力で日本軍が侵攻して行く。この中で2000万人もの中国人や東南アジアの人が殺されたり、餓死したりした。
「それ、だいたい後からのウソだよ。よくあるのは、ゲリラ討伐なのに、ゲリラであったことが戦後隠されて、無辜の民の虐殺に変わること。 このパターンが多いね」
「日本が戦ったのは、イギリスやオランダ、フランスという植民地の宗主国であって現地の人には歓迎された」
「日本の戦争によって、宗主国の支配が弱まったので、戦後これらの国は独立した。日本の大東亜共栄圏の目的は達成された」
「戦争にはいろいろな側面がある。あなたのような一面的な見方は事実と違うのでは」
「あまりにも平面的な論理です 是非は別としてまず立体的に見ることをお勧めします」
などなど。

ぼくの方は事実を提示しながら話をする。中には「お前は中国人か。国に帰れ」「お前、いっかい死んで 脳ミソ、変えてこい」というように悪罵を投げつけてくる人もいる。

SNSは対話のためのツールだと思う。日本のした戦争は侵略戦争だったという多くの人が当たり前のように思っていることを書くと、それを全面的に否定したい人が群がってくる。その一方で日本はアジア解放のための戦争を行ったという宣伝が、盛んに振りまかれている。
その一方で事実を提示すると、その通りとか、ぼくの考え方をさらに詳しく展開してくれる人も出てきて、フォロアーも増えてくる。悪罵を投げつけてくる人とはほとんどやり取りをしない。共感が広がることがいい。しかし、歴史の本当の姿を伝えようとする投稿が少ない。これを増やさないと、排外主義的なネットの意見は少なくならない。単に共感して「いいね」しているだけでは、ネットの宣伝には勝てない。

そんなことを思いながら、生検が始まるのを待った。
診察室に点滴スタンドを持ったまま入り、先生の説明を聞いた。ベッドに横になって背中と足を丸めると、
「ズボンとパンツを膝ぐらいまで下ろしてください」
と看護師に言われた。
「えっ、ここでですか」
思わず声が出た。
仕方がないのでそうして看護師さんの顔を見た。マスクをしているので目だけが目の前にある。
「血圧を測りますね」
上が161あり下が90だった。緊張しているので血圧が上がってきた。
「ベッドを上げますね」
先生がそう言うと、かなりの高さまでベッドが電動で上がってきた。
尾てい骨のところに部分麻酔が行われる。久しぶりの麻酔はやはり、チーという感じで痛い。
「しばらく待ちますね」
先生は麻酔が効いてくるまで時間を計っているようだった。
その間に目だけ出している看護師が血圧を測ってくれる。
「気分は大丈夫ですか」
「大丈夫です」
下半身丸出しでくの字に曲がって横になってるぼくはそう答えた。

肛門にわりと太い円筒のものを差し込まれ、そこから肉片を取る針とその先にある肉をとる管が差し込まれるのだろう。
「肉を取るときにピストルのような『パン』という音がしますね。よろしいですか」
「はい」
というしかない。
パン、1つ。パン2つと重なっていき、10を数えるころになると、早く終わってほしいという気持ちになった。いくつかのパンは、少しお腹の中に響いた。
生検が終わるまでの間、ぼくの頭の上にいる看護師さんが何回も血圧を測った。
「終わりましたよ」
先生がそう言って、お尻から管を抜いて、出血しないようにお尻の穴に詰め物のようなものをくっつけた。
診察室を出て、少し奥の点滴用ベッドに移動する。あと1時間ぐらい点滴が行われるということだった。
点滴が終わる30分ほど前に妻が医院に入ってきて、ベッドの横に坐った。

点滴が終わるころ、オシッコがしたくなった。午後1時前になったので、医院のスタッフはみんないなくなり、先生だけが残って対応してくれた。点滴を外すときにオシッコがしたいですというと、
「ちょうどいいわ。オシッコの色も見たいし」
先生がそういってくれたので、検尿のコップを持って待合室のところにあるトイレに入った。
尿意があるのにオシッコがでない。
「気張ったらあかんで。無理に出さなくていいよ」
そういわれたので意識だけオシッコに集中した。尿意があるのにオシッコが出ない。
何分か経ってようやくポトリポトリオシッコが出はじめた。

トイレの外で待っている先生に紙コップを渡すと
「ピンクやね。少し血が混じっているね。いいですよ」
「ありがとうございました」
「なんかあったらすぐに電話して。ここに携帯の番号書いておくから」
先生はそう言って、診察予約の紙を手渡してくれた。
「お世話になりました」

11時から2時間、生検が終わった。

雑感

Posted by 東芝 弘明