貧困大国 アメリカ、あとを追う日本。

未分類

アメリカという国は新自由主義のもとでどうなっているのか。
これを知ることが、日本の未来を考える上で大事な意味をもつのだと思う。
「ルポ貧困大国アメリカ」
堤 未果氏の岩波新書は、読んでおくべき本だと思う。
官から民への改革は、国民生活に何をもたらすのか。
官から民への改革は、国民の何を破壊するのか。
アメリカの現実から日本は学ぶ必要があるだろう。
小泉改革は、竹中平蔵氏をブレーンに据えて明らかにアメリカをモデルにしてきた。
モデルであるアメリカの現実を知れば、何をしてはならないかも見えてくる。
アメリカでは、災害救助の先頭に立つべき危機管理の機関が民営化されている。
学校も民営化されている。
その結果、国民には過酷な現実がもたらされている。
新自由主義的な改革が、国民の命を守らない例は、あのカトリーナと命名されたハリケーン被害に端的に表れている。
ものすごい破壊力をもったハリケーン、カトリーナは、ニューオリンズを中心に1000人以上の死者を出した。この災害に直面したとき、危機管理の機関である民営化されたFEMA(連邦緊急事態管理庁)は、次のような態度を取った。

「FEMAは、市街の保安確保まで救援活動を停止させる決定をし、州兵が到着して治安が回復するまで救急隊員を待機させました。近隣の州から応援に来たボランティア消防隊員も締め出したのです。すでに被災地では暴力、略奪、レイプなどが多発していましたが、ブラウン長官は後日それについてのCNNのインタビューで、『そんな報告は聞いていない』と発言して批判を浴びていました。FEMAが被災地脱出に必要とされるバスの台数を1335台と認定して派遣し始めたのは、ハリケーンが上陸してから5日後の9月3日午後8時でした」「私たちは故国から見捨てられたんです。FEMAがニューオリンズ市民を殺したんです」(貧困大国アメリカ P40)


FEMAがこのような態度を取ったのは、大統領の指示があったからだ。このハリケーンで最も被害の大きかったニューオリンズは、直撃を受けることが予測されていたにもかかわらず、非常時対宣言適用地域のリストから除外されていた。しかも、すべての救援活動は、FEMAに申請・承認されないかぎりおこなってはならないとされた。この決定がおこなわれた上で、FEMAは行動を起こさなかった。
連邦政府は、貧困層の多いニューオリンズを見捨てたのだ。
2001年、ブッシュ大統領が就任したときから、FEMAは、さまざまな部門を民間に委託し予算を縮小する方向で徹底的な改革の嵐にさらされた。そして2003年には、現実に予算が半減された。
民間委託と予算の縮小のもとで、FEMAは従来の機能を発揮できなくなり、災害を防止するという分野でも必要な役割を担えなくなっていった。かつてFEMAは、非常事態の時には大統領府に準じる権限を与えられていたが、省レベルに格下げされ、「あっという間にその力を失った」。
日本の医療改革が、国民の負担増に無頓着で75歳以上のお年寄りに差別的な医療制度を導入することをためらわなかった思想の源流は、アメリカの改革にある。
新自由主義の最大の攻撃対象は、労働法制と社会保障だ。この二つの分野を徹底的に破壊して換骨奪胎すれば、大企業を中心に資本の蓄積を増大させることができる。
日本で派遣労働が原則自由となり、過酷な労働が発生していること、社会保障については負担増と給付減がくり返しおこなわれていること。これはアメリカ流の新自由主義的な改革が、日本で実行されたことを意味する。
アメリカは、貧困層を力で押さえつけている。この国は、貧困に陥ったらなかなかはい上がることのできない社会になっている。
日本では、生活保護制度まで切り下げようとしている。これは貧困をさらに拡大することに熱中するということだ。自民党と公明党は、国民生活を破壊しながらそれをごまかしている。
国民生活を破壊している今の政治を変えなければ、国民の命とくらしは守れない。
政治に対する怒り。これが意識の底にある。
構造改革は、最初から国民のための改革ではなかった。小泉改革こそ諸悪の根源となる改革だった。
日本共産党は、この改革の最初から徹底的に改革に反対した。それは、巨大な小泉ブームに逆らう態度だった。しかし、このような態度を取ることのできた組織にいたことをうれしく思う。
民主党は、自民党といっしょに構造改革をとなえ、改革を競い合った。参議院選挙でとった対決路線は、選挙対策のようなものだった。それは、福田さんと小沢さんの大連立への合意で証明された。
しかし、国民が政治を動かし始めている。民主党も国民世論をないがしろにできない。
自民党と公明党は、高まる国民世論に押されて新自由主義的な改革を実行に移せなくなっている。
さらば、新自由主義。さらば構造改革。ここに日本の未来がある。
ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)/堤 未果

¥735
Amazon.co.jp


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

未分類

Posted by 東芝 弘明