ハンドルネーム

雑感

娘の試験形式のテキストに面白いものがあった。おそらくはアメリカ社会のメールに関する記述だったのだろう。その国の調査では、メールで相手とやり取りをする場合、面談して話をする以上に個人的な情報を伝えやすく会話が深まるという結果が出た。というものだった。この調査では、ほとんど知り合いでない場合でもそういう傾向があると書き、自分の姿を写す鏡があるだけで、相手に個人情報を伝えにくくなり、質問に対する回答も短くなるとか、普通の手紙や電話よりも親子の会話が増えるとか、さまざまな調査結果が示されていた。
娘は、「書いていることの意味が分かりにくい。日本語訳を読んでも意味がよく分からない」と相談してきた。
相手と直接会うよりも、メールの方が個人情報を伝えやすく会話が深まる。という話は、日本の場合とは真逆の関係にあるように感じた。日本人の場合でも、メールの方が本音を書きやすい。面と向かって語るよりも本音を伝えやすいという人もいるだろう。よく知り合った人出ない人に、誰にも言えない本音を書いて相談することもあるだろう。しかし、上記に書いているような調査結果が、日本では起こるのかどうか。日本人とは随分違う傾向なのではないか。娘の違和感もここにあるのではないか。そう感じた。

日本のインターネットの世界は、ハンドルネームによるやり取りがごく当たり前のように広がり、相手を徹底的に批判するような主張が横行している。すべての人がこういう傾向を持っているというのではないが、ハンドルネームによって正体を隠すことによって、普段は言わないような言説を口汚く使うような傾向もある。ネットの世界では、自分の正体を隠して他人を徹底的に攻撃する傾向があることを指摘しない訳にはいかない。
ハンドルネームを使用する理由は、「実名を秘匿することで、現実世界においての人身攻撃を防ぐ」ということらしいが、実名を秘匿しないと人身攻撃を受けると思っている人というのは、「実名を隠していれば、相手を攻撃しても自分の正体はばれない」ということと繋がっているのかも知れない。
本名を明らかにすべきだと思われるラインでも、一見して誰なのか分からない名前を書いている人がかなりいる。「電話帳により登録されました」と書いてあるのに、一体誰なのか判別できないケースがかなりある。「これ誰?」と思うと一歩も前に進まなくなる。多くの人に公開されるラインでもこういう状況なのだから、アメリカなどとはかなり傾向が違う。

そもそもハンドルネームというのは、和製英語だ。ハンドル=ニックネームという意味なので、ハンドルネームというのは、ニックネーム・ネームということになる。アメリカではニックネームかスクリーンネームが使われていて、ハンドルネームというのは、ほとんど使われていない。
「メールの方が個人情報を伝えやすく会話が深まる」という文化は、基本的にすべて本名でやり取りをしている世界の話だと思われる。アメリカの場合、すべて本名でやり取りしている人が多い。本名を明らかにしてネットを行うという基本的な文化があってこそ、こういう文化が生まれるのではないだろうか。

ぼくの場合、日本共産党の議員なので、ネット上の発言は、ハンドルネームによる書き込みを求められる場合以外は、全部本名でやり取りしている。本名を明らかにするということは、全ての言説に対して、自分で責任を負うということになる。もし事実無根のようなことを書くと、当然訂正を求められるし、発言取り消しも求められる。同時に相手のある場合は、節度のある意見を書くことが求められる。自分の名前を明らかにするというのは、書くことに制限を受けるのではなく、書くことに責任が生じるということだろう。書くことに対して責任が生じているアメリカなどでは、メールでのやり取りの方が、本音を語りやすいということなのかも知れない。

ハンドルネームを否定する気持ちはない。ただ願わくば、ハンドルネームを大切にしてほしい。大事に使うとハンドルネームもペンネームや芸名のように人格がにじみ出てくる。捨てハンドルネームのようなものを多用していると、文章も荒れてくるのではないだろうか。相手に対して文章を書く行為は、必ず自分自身に跳ね返ってくる。相手への誹謗中傷は、自分にも向かってきて自分をも傷つける。相手に投げた矢が自分をも突き刺す、それが文章というものだ。そのことを自覚していれば、ハンドルネームをペンネームや芸名のように大事にする気持ちも湧いてくるのではないだろうか。本名であろうとハンドルネームであろうと、2ちゃんねるなどで行われているような相手への人格攻撃、誹謗中傷を書くことは許されない。というような文化が育ってほしい。

他人に対して、悪罵を投げつける日本のネット文化。これと繋がっているヘイトスピーチ。自分の身は、安全な所に避難させながら、相手に対しては誹謗中傷を繰り返す。こういう言説は、物陰に隠れて、相手に対して背中から機関銃を乱射するようなものではないだろうか。


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雑感

Posted by 東芝 弘明